最新号

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2025年10月号

発売号   1,800 円(税込)

特集1

個人情報保護法の「基礎知識と実務対応」総ざらい

特集2

確認問題でアップデート!
フリーランス法のキーポイント

特別企画

「『稼ぐ力』のCGガイダンス」重要論点

特集1
個人情報保護法の「基礎知識と実務対応」総ざらい
個人情報保護法のいわゆる3年ごと見直しが進められています。本法は複雑な規定がなされていますが,それらを正確に把握することは大変重要です。
そこで,今後の法改正も見据え,個人情報保護法について,その基本から実務対応まで幅広く解説します。知識を確認し,さらに深めましょう。
情報法

法の概要と制度改正の展望
田中浩之・佐野蒼一郎

本稿では,個情法の概要を解説するが,その特徴を明確にするために,EUのGDPRとの対比の視点で論じる。また,EUのGDPRとの対比の視点により,今後の改正に向けた展望についても論じる。

情報法

重要概念と実務上の留意点
田中浩之・相馬諒太郎

各国の個人情報保護法制において,規律の対象となる個人情報や,個人情報を取り扱う者の定義や範囲は,一見共通するようにも思えるが,実はさまざまな差異がある。個人情報を,特にグローバルに取り扱う事業者は,これらの定義や範囲の違いを十分に理解し,各国法に対応した個人情報保護措置を講じる必要がある。本稿では,個人情報保護制度のグローバルスタンダードとして認識されているEUの一般データ保護規則(GDPR)と比較しつつ,日本の個情法の重要概念と実務上の留意点について解説する。

情報法

個人情報を扱うときの基本ルール
松下 外・鈴木万純

本稿では,個人情報を取り扱う際に特に実務上重要と考えられる個情法の基本ルールを概説する。そのうえで,マーケティングおよびAI活用といった,データビジネスのなかでも特に個人情報の取扱いが重要となる場面を具体例として取り上げ,実務上の適用について解説する。

情報法

委託にかかる契約条項の再検討
松下 外・秋田慧一郞

本稿では,個情法における個人データの取扱いに関する「委託」の位置づけと規律内容を概説したうえで,同法に基づき個人データの委託契約を締結する際に,実務上特に重要と考えられる留意点について,条項例を交えながら委託元の視点から整理する。

情報法

平時の請求・苦情対応の体制整備
岡本直己

個情法においては,個人情報等から識別される本人から個人情報取扱事業者に対する保有個人データの開示や訂正等,利用停止等の請求権が認められており,また,個人情報取扱事業者には個人情報の取扱いに関する苦情の適切かつ迅速な処理やそれに必要な体制の整備の努力義務が課されている。本稿では,個人情報取扱事業者側から,これらの請求や苦情への対応にかかるルールを解説するとともに,適切な対応を可能とする仕組みについても言及する。また,「3年ごと見直し」による法改正がこれらの制度に与えると想定される事項についても,適宜説明する。

情報法

有事対応の流れと当局とのコミュニケーション
中崎 尚・西村順一郎

個人情報の漏えい等の有事が発生した場合,個情法に則って,個情委への報告および本人への通知を行う他にも,プレスリリースや既存の契約関係への影響の検討,コールセンター窓口の設置など,即座に対応すべき事項は少なくない。当局への報告も速報・確報を提出して終わりではなく,継続的なコミュニケーションを求められることもある。場合によっては海外の当局への報告の検討も必要となる。

地平線
時代の要請 重み増す法務の使命
企業法務総合

中島 茂

企業法務の使命は時代とともに重みを増している。かつては問題が起きたときの事後処理が法務の仕事であった。顧客情報が何者かによって盗み出されたときは不正競争防止法などを駆使して侵害者に対して情報拡散の差止め,賠償請求,刑事告訴を行う活動である。「臨床法務」と呼ばれる。これは,いまでも法務が担うべき最もベーシックな任務である。結局のところ,すべての法務活動は「裁判で勝てるのか?」が最終の判断基準だ。臨床法務を迅速かつ的確に行う能力は,これからも法務担当者に求められ続けていく。

Trend Eye
令和7年改正保険業法と"商慣習の終わり"
――課題克服に向けた保険業界の取組み
企業法務総合

中村 譲

旧ビッグモーター社による保険金不正請求事案と,損保大手4社による保険料調整行為事案は,保険制度に対する信頼を大きく揺るがした。

時事を斬る
賃金のデジタル払いに鑑みるわが国の実情
労働法

岡芹健夫

労働契約においては,使用者が労働者に賃金(給与)を支払うことは,使用者の根源的な義務である。労働基準法(以下「労基法」という)24条は,この使用者の賃金支払義務について,主に労働者保護の観点より,①通貨払いの原則,②直接払いの原則,③全額払いの原則,④毎月1回以上一定期日払いの原則,を定めている。本稿で取り上げる賃金のデジタル払いは,上記の①(通貨払いの原則)との関係で,論議され,その例外として認められるようになってきたものである。

特集2
確認問題でアップデート!
フリーランス法のキーポイント
2024年11月1日のフリーランス法施行後,公正取引委員会は,2025年3月28日に45社の行政指導を公表。そして,6月17日には2社への勧告の公表が行われました。企業名の公表が現実となるに至り,取引の適正化や就業環境の整備などに向けた対応がいっそう急務となっています。そこで本特集によって,鍵となる4つのポイントについて確認問題で理解度をチェックしながら,実務のアップデートを図りましょう!
労働法 競争法・独禁法

フリーランス法および関連法の現在地
松田世理奈・大西ひとみ

フリーランス法が2024年11月1日に施行された後,本年には公取委による指導や勧告がされるなど,昨今フリーランス保護に関する意識はますます高まりをみせている。他方で,企業等からは,フリーランス法対応はまだ手探りで,実務の動向もみながらさらに検討したいという声も聞かれる。そこで,本稿は,フリーランス法の現在地をふまえた実務対応について,周辺の法令・論点にも触れつつ,基礎的な内容から解説する。

労働法 競争法・独禁法

フリーランスとの取引適正化
松田世理奈

【確認問題】報酬支払期日
A社(資本金1,000万円)は,ソフトウェアの開発・販売を行う会社である。A社は,ソフトウェアの開発に当たり,コーディング作業の一部を,複数の協力会社やエンジニアB(個人事業主)に委託することがある。
2025年4月1日,A社は,Bに対し,あるコーディング作業を委託し,その委託契約において,「委託の報酬は,検収完了後60日以内に支払う」と定めていた。
A社の行為は,何らかの法令に違反するか?
また,Bが個人であるか法人であるかにより,結論が変わるか?

労働法 競争法・独禁法

ハラスメント相談対応の実務
大西ひとみ

【確認問題】ハラスメント相談対応
・フリーランスへのハラスメントを防ぐための体制整備義務として,事業者が講ずべき措置が色々あるようだが,何からどう対応すればよいのだろうか?
・フリーランスのハラスメント相談窓口を新たに設置しないといけないということ......?
・ハラスメントの相談をされると,そのフリーランスとの契約は解約できなくなる......?いつでも中途解約ができる条項が契約書にあれば,問題なくできるのか?

労働法 競争法・独禁法

解除・不更新の留意点
松田世理奈

【確認問題】契約の解除
次のような解除条項を含む基本契約をフリーランス(特定受託事業者)との間で締結する場合,どのような問題があるか?
第〇条(解除)
委託者は,受託者が次の各号の一に該当する場合には,何らの催告を要せず,直ちに本契約及び個別契約を解除できる。
⑴ 本契約又は個別契約に違反したとき
⑵ 支払不能若しくは支払停止の状態に陥ったとき,又は破産の申立てを行い若しくは破産を申し立てられたとき
⑶ 廃業したとき
⑷ 第〇条(反社会的勢力の排除)の表明保証違反が認められたとき

労働法 競争法・独禁法

偽装フリーランス問題
大西ひとみ

【確認問題】偽装フリーランス
A社は,クライアントであるC社からシステム保守業務の委託を受け,その業務の一部を,フリーランスであるエンジニアBに再委託した。
この場合,A社とBとの間では「業務委託契約」が締結されているから,フリーランス法が適用されるということで間違いないか?
BはC社のオフィスに常駐する予定だが,留意すべき点はあるか?

特別企画
「『稼ぐ力』のCGガイダンス」重要論点
2025年4月30日,経済産業省は「『稼ぐ力』を強化する取締役会5原則」「『稼ぐ力』の強化に向けたコーポレートガバナンスガイダンス」を公表しました。これらは,今後,ガバナンスについて検討を行うにあたって,その方針策定にあたり大きな影響が見込まれます。
そこで,5原則とガイダンスとはどのようなものか,実際にどのような検討が考えられるのか,解説します。
会社法

取締役会5原則・CGガイダンスの概要
善本 聡・寺井大貴・川﨑靖之・須田康裕

経済産業省は,日本の上場企業が「稼ぐ力」の強化に向けたCGの取組みを自律的に行うことを支援するため,ガイダンスと取締役会の5原則を策定した。CGは企業が自社の競争優位性を伴った中長期目線での成長戦略を構築・実行し,「攻めの経営」に取り組むための基盤であり,各社が「自社における在り方」について十分議論し,一貫した考え方のもとで,体制・仕組みを検討することが重要である。

会社法

取締役会5原則とコーポレート・ガバナンスの深化
柏櫓洋之・善本 聡

取締役会5原則には,日本企業が「稼ぐ力」を強化するための多くのエッセンスが盛り込まれている。「稼ぐ力」強化の全体メカニズムとの関係を意識しつつ,取締役会5原則のエッセンスをもとに,自社における取締役会の役割等を明確化したうえで,実践していくことが重要である。企業がCGを深化させていくうえでの一律の答えはなく,各企業が,自ら考え,不断の取組みを行っていくことが求められる。

会社法

ガバナンス実務へのガイダンスの反映
柏櫓洋之・山口敦子・善本 聡

CGガイダンスにおいては,「稼ぐ力」強化に向けた「稼ぐ力」強化の全体メカニズムと検討事項が示されている。このメカニズムをふまえながら,CGのあり方・グランドデザインを描いたうえで検討事項に取り組み,その取組みを価値創造ストーリーとつなげながらステークホルダーに発信することが必要である。また,「稼ぐ力」強化に向けた「稼ぐ力」強化の全体メカニズムを実効性のあるものにするためには,取締役会事務局の役割がより重要になってきている。

会社法

今後のコーポレート・ガバナンスの将来
宮島英昭

政策的な文脈では,2015年の東証によるコーポレートガバナンス・コードの策定に端を発するコーポレート・ガバナンス改革により,多くの企業で社外取締役の選任や監査等委員会設置会社への移行,指名委員会や報酬委員会の任意採用などが進んだ。市場においては配当性向が上がって自社株買いが増え,株主還元の割合が増えてきたし,譲渡制限株式が使いやすくなったことで報酬体系も変化し,グロ-バル企業を中心に経営者の報酬も顕著に上昇している。

実務解説
スチュワードシップ・コード第三次改訂のポイントと実務への影響
会社法

安井桂大・日野雄介

2025年6月26日にスチュワードシップ・コードの第三次改訂版が公表された。2020年以来の5年ぶりの改訂であり,実質株主の透明性向上や協働エンゲージメント等に関する改訂が行われている。本稿では,本改訂のポイントを紹介しつつ,実務への影響について解説する。

企業法務総合

第217回通常国会で成立したビジネス関連法律
星 正彦

前半は年収の壁,高額療養費問題,後半はトランプ関税対策,備蓄米が大きな話題となったが,第217回通常国会では,戦後初の衆参両院で修正の後成立した令和7年度予算のほか,新規の内閣提出法案59件が審議され58件が成立,以下のようなビジネス実務に重要な影響を及ぼす法律も成立した。

労働法

改正令和7年労働施策総合推進法等の概要
野坂真理子

本年6月に労働施策総合推進法等を改正する法律が成立し,事業主にはカスタマー・ハラスメントに対する対応が義務づけられることとなった。これまでガイドラインや条例等で努力義務として定められることがあったものの,法令上で規定されるのは初めてのことである。本改正法をふまえて,企業ではどのような対応が必要となるのか,改正法の概要とともに解説する。

金商法・資金決済法

電子決済手段の基本と令和7年資金決済法改正の概要
谷 崇彦

本稿では,今後,電子決済手段の利活用を検討する事業会社に向けた手引きとして,まず電子決済手段に関する基本的な法的制度の整理を行い,その後,電子決済手段に関する改正法の概要の説明を行う。そして最後に,改正法を受けて電子決済手段を利活用する事業会社が留意すべき点を検討する。

連載
【新連載】
株主総会のDX化――壁を乗り越えるために
第1回 株主総会DX化の現状と課題
会社法 テクノロジー・AI

須磨美月・川瀬裕司・松原嵩晃

インターネットによる株主総会の情報提供(電子提供制度)や,オンラインによる株主総会への参加(バーチャル株主総会)を鏑矢として,株主総会においてもDX化の推進が話題になりつつある。第1回目は,株主総会のDX化の主要テーマについて,現状とその課題を取り上げるものである。これらのテーマは今後も議論されていくものであり,現時点のものを紹介するにすぎないこと,文中意見にわたる箇所は筆者らの私見であることをあらかじめお断りする。

企業法務総合

【新連載】
分野別 規制改革制度のトレンドと活用法
第1回 近時の制度活用上の留意点
荏畑龍太郎

企業の事業活動を取り巻く環境は絶えず変化しており,新たな技術やビジネスモデルが次々と登場している。このような状況下で,企業が持続的な成長を遂げ,競争力を維持・向上させるためには,既存の規制が新しい事業の足かせとならないよう,規制改革の動向を常に把握し,規制改革制度等を活用のうえ,これを自社の事業に積極的に活用していくことが不可欠である。本連載では,このような規制改革をテーマに,その推進に向けた制度の解説,分野ごとのトレンドと具体的な制度の活用法について全6回にわたって紹介する。

企業法務総合

LEGAL HEADLINES
森・濱田松本法律事務所外国法共同事業編

2025年6月,7月の法務ニュースを掲載

■米国裁判所,生成AIの学習での著作物の利用についてフェアユースを認める判決
■環境省,「環境課題の統合的取組と情報開示に係る手引き」を公表
■環境省,「化学物質,廃棄物及び汚染に関する政府間科学・政策パネル(ISPCWP)」の設立を発表
■金融庁,過大支払利子税制に関する照会文書を公表
■金融担当大臣,金融審議会に対し,暗号資産を巡る制度のあり方,不公正取引規制の強化等,企業情報の開示のあり方等に関し諮問
■金融庁,「スチュワードシップ・コード(第三次改訂版)の確定について」を公表
■6月総会シーズン,集中日開催率は25.2%ファイナンス金融庁,「投資法人に関するQ&A」を改訂(データセンター投資の促進のための改訂)
■金融庁,「コーポレートガバナンス改革の実質化に向けたアクション・プログラム2025」を公表
■金融庁,「サステナブルファイナンス有識者会議第五次報告書」を公表
■事業性融資の推進等に関する法律施行令等の公布
■厚生労働省,いわゆる「スポットワーク」における留意事項等の作成および公表
■最高裁,人身傷害条項における素因減額部分の取扱いに関する判断
■総務省,「オンラインカジノに係るアクセス抑止の在り方に関する検討会 中間論点整理(案)」の公表および意見募集

企業法務総合

Airbnbで学んだ「法務の時間術」6つの金貨
最終回 「限界まで簡潔(concise)にしてほしい」と求める
渡部友一郎

「限界まで簡潔(concise)にしてほしい」CLOやジェネラルカウンセル,法務部長として,部下のリーガルメモやメールなどの文章に目を通す時間は膨大です。私自身も,文章を「提供する立場」にありますが,効率的な時間管理を実現するには,チームや部下のライティングスキルを十分に向上させることが鍵となります。「限界まで簡潔な文章」を追求することが,リーダーの時間をどのように節約し,組織全体に利益をもたらすのかについて解説します。

労働法 競争法・独禁法

マンガで事例紹介!
フリーランスにまつわる法律トラブル
最終話 今,改めて発注者とフリーランスに伝えたいこと
宇根駿人・田島佑規・ CS合同会社

2024年11月1日に施行され,本連載でも最初3回にわたって取り上げてきたフリーランス法ですが,発注者によるフリーランス法違反について,公正取引委員会による指導・勧告が行われたという事例が積み重なってきていますのでご紹介します。

テクノロジー・AI

〈業種別〉テクノロジー法務の最新トピック
最終回 対消費者ビジネス
殿村桂司・小松 諒・森 大樹・カオ 小池 ミンティ

近年の生成AIの普及にみられるように,新たなテクノロジーの活用はあらゆる業種において急速に進んでおり,それに付随して業種ごとに異なる新規かつ複雑な法的問題が生じ,また,各国における法制度の見直しも急ピッチで進められている。本連載では,テクノロジー法務を扱う弁護士が,各業種について知見を有する弁護士とともに,業種別のテクノロジー関連の最新トピックやそれらを検討する際の実践的な視点を紹介する。
最終回は,対消費者ビジネスについて取り扱う。

企業法務総合

ライアン・ゴールドスティンの"勝てる"交渉術
最終回 克己――本当の己と向き合えてこそ
ライアン・ゴールドスティン

このコラムを担当させていただいてから1年半が過ぎた。執筆しながら,弁護士としての四半世紀を振り返ることが多くあった。これまでの交渉や日常の業務においてうまくいったと思うこともあれば,まだまだ勉強が足りなかったと痛感したことを思い返し,自らの展望を検討するには本当によい機会になった。私が得た教訓はいくつかあるが,優れた交渉者になるために自らの立脚点を理解することがいかに重要で,難しいかを実感した。最終回はこのコラムを執筆するにあたり実感した「克己」についてともに考えたい。

会社法

最新判例アンテナ
第87回 簡易株式交換手続に対する株主の反対通知の期間内に個別株主通知を行わずにした反対通知の効力が否定された事例(東京高決令6.10.16資料版商事法務493号53頁)
三笘 裕・高村真悠子

東京証券取引所スタンダード市場の上場会社Y社(Y社の株式は振替法128条1項の振替株式)の筆頭株主(発行済株式総数の約28.64%を保有)であったXは,Y社の計画するA社およびB社との各簡易株式交換について,2024年10月1日に反対通知(会社法796条3項。電子公告開始が同年9月26日午前零時であったので,法定期間は10月9日まで)を行い,同月7日に証券会社に対して振替法154条3項所定の個別株主通知の申出を行った。同月11日に振替機関がY社に対して個別株主通知を行った。Xは,上記反対通知をしたことにより本件は簡易株式交換手続によることができず,株主総会決議による承認が必要になることを理由の1つとして,上記株式交換は法令または定款に違反し,Y社の株主が不利益を受けるおそれがあると主張し,株式交換の差止めの仮処分を申し立てた。

消費者関連法

差止請求事例から考える
利用規約のチェックポイント
第2回 消費者に対する損害賠償請求・違約金に関する条項
小林直弥・土田悠太

本連載では,適格消費者団体による近時の差止請求事例を素材として,BtoC事業を行う企業の法務担当者等が,利用規約の内容を検討する際のチェックポイントを解説する。第2回では,消費者に対する損害賠償請求・違約金に関する条項について差止請求が行われた事例を素材に,規約作成上の留意点を述べる。

企業法務総合

法律事務所をフル活用しよう!
専門弁護士に聞くAI時代の新常識
第2回 M&A分野
三谷革司

本稿は,AI時代において法務部門と法律事務所の新たな協働を提案する連載企画の第2回である。今回は,スタートアップ企業を買収するM&Aプロジェクトの場面を想定し,社内法務と外部弁護士が情報と目的をどのように共有し,価値を生み出すかという観点から,AI時代のM&Aの成功の鍵を提案したい。

労働法

テーマ別「インバウンド法務」の勘どころ
第5回 人事労務
増山 健・大川恒星

本連載では,インバウンド法務を日々取り扱う弁護士らが,対談形式でテーマごとに案件の特徴や問題点等について語る。今回は,人事労務の分野について取り扱う。

企業法務総合

企業法務担当者のための「法的思考」入門
第7回 株主と会社債権者の利益調整
野村修也

株主有限責任制度の下では,株主は自らの手で事前に責任額の上限とそれに応じた会社経営に対するモニタリングのレベル(コスト)を制限できるため,小口の分散投資がしやすくなる。これにより会社は,大量の遊休資本を集められるが,このままでは会社債権者は,分散した小口投資の株主に対し個別に直接責任を追及しなければならず,莫大な取引費用を要する。そこで,会社の法人格の機能を活用することで,株主に責任額に相当する財産をあらかじめ会社に全額拠出させ(資本充実の原則),それを株主に返還しないこと(資本維持の原則)にすることで,会社に対する責任追及がすべての株主に対する一括した責任追及となる制度(間接責任への一本化)が構築された。

知財

言語学の観点からみる商標実務
第4回 普通名称化しやすい語とは?
齊藤範香・五所万実

革新的な商品や技術に対して付される商標は,常に「普通名称化」のリスクと隣り合わせにある。特に,ほかに一般的な名称が存在しない場合や,存在していたとしても,当該商標のほうがより広く親しまれ使用される場合に,そのリスクはいっそう高まる。このような名称について,企業はいかにして適切に商標権を確保・維持できるのか。本稿では,普通名称とみなされやすい語の構成パターンや,普通名称化を避けるための工夫について,言語学的観点から考察する。

企業法務総合

統合報告書の実例から見解くコーポレート・ガバナンス
第3回 ソニー株式会社(ソニー)
天野正人

ソニーは日本の格好良い会社の代表格であり,その魅力はワールドクラスのものである。
エレクトロニクスの分野で世界を制した技術力とエンターテイメント性,創造力を兼ね備えており,その意味では,時価総額・企業規模は及ばないが,アップルと類似性がある。その統合報告書が魅力的でないはずがない。多様で不断の変化を遂げてゆくビジネスモデルを,華麗に,しかもわかりやすく投資家に説明している。以下,ソニーの2024年版統合報告書を中心に言及する。

企業法務総合

契約書表現「失敗ゼロ」のオキテ
第9回 別紙と金額
藤井 塁

まだ私が法律事務所で勤務していたころ,先輩弁護士から「契約書の別紙の確認は鉄則 だ」と教えてもらったことがある。そのことを実感した事例を紹介しよう。

企業法務総合

法と人類学―法がつくられるとき―
第3回 面従腹背の法人類学
─統治されないための術─
藪本雄登

筆者は東南アジアの小国ラオスで10年以上にわたり法律実務に携わってきたなかで,良くも悪くも,司法制度や投資制度が急速に整備されていく過程を目の当たりにしてきた。とりわけ,経済成長をけん引するラオス現地の外資系商業銀行のロビー活動によって,債権回収制度はこの10年で大きく前進した。法制度や運用体制の両面で整備が進み,困難はあるものの,一定の成果も得られつつある。制度的な近代化は表面的には順調にみえるかもしれない。

企業法務総合 民法・PL法等

基礎の基礎から始める要件事実・事実認定の徹底的入門
第3回 第3章 単に「要件」ではなくて,なぜ要件「事実」というのか(第1節第2,第2節)/第4章 行為規範と裁判規範について
伊藤滋夫

以上で説明してきた要件事実が訴訟において法的判断をする前提となる事実として,最終的に認定の対象となる事実です。
このように,争点となる要件事実が最終的に認定の対象となる事実であって,これを直接に立証する証拠(「直接証拠」といいます。例えば,契約書,受領書,領収書,現場にいた人の目撃証言)があれば,もちろん,その証拠の信用力(例えば,当該領収書は実際に売買代金を受け取ったときに売主が書いたものという意味で直接証拠ではあるのですが,金額を書き間違えていたというようなことがあり得ます)の検討は必要ですが,それによって要件事実を認定すればよいわけです。

デジタルマーケティングの法律相談
第5回 個人情報保護法④
――個人情報保護法上求められるガバナンス体制
寺門峻佑・林 知宏・榊原颯子・牧 昂平

本稿では,個人情報保護法(以下「法」という)で求められるデータガバナンスとして,安全管理措置・漏えい対応・委託先の監督に関する論点を中心に,デジタルマーケティングにおいて問題になりやすい事例を題材に解説する。

特別収録
ビジネス実務法務検定試験® 2級/1級演習問題
企業法務総合