法務の人材育成・指導への向き合い方と心構え
石川文夫
現在,国内外における企業内の事務部門(法務,経営戦略,経理,財務,総務,人事部門等)の業務遂行にAIの活用が拡大しており,今後は企業の業務遂行にはAIの活用が欠かせない時代に突入しその活用がますます加速化して行くと考える。しかしながらこのような環境においても,社員の人材育成は,企業経営において最も重要なファクターである。そこで本稿では,筆者が企業時代に法務部の組織内で実行した経験をベースに主たる人材育成活動について論じてみる。
「契約実務」の研修
――事業と意思決定を支えるマインド・スキル・知識の醸成
高柳真由子
契約実務の研修では,条項や法令の知識の習得にとどまらず,契約を「事業目的を実現するための手段」と捉え,関係部門と連携しながらリスクを整理し,経営や事業部門の意思決定を支援する視点を育成することが重要である。本稿では,経験の浅い担当者を対象に,事業構想・相談受付から契約終了までの意思決定プロセスを通じて身につけるべきマインド・スキル・知識と,その研修方法について整理する。
「契約書レビュー」の研修
――AI 時代の基礎形成から実践までの指導法
石井隼平・石川琴子
生成AIにより契約審査の定型化が進む今,法務パーソンにはAI出力を自らの知性で吟味・補正し,自社文脈を織り込める判断力と対話力が求められる。本稿では,若手に条文や基本書に基づく「思考の幹」を構築させ,不確実性下でビジネスを牽引する人的資本へと高めるための段階的な研修項目と実践的指導法を具体的に解説する。
「コンプライアンス・不祥事対応」の研修
――押さえておきたい知識の土台・守るべき価値の自覚
金子順事
本稿は,コンプライアンス研修を行ううえで,法務部員が押さえておくべき予防・有事の知識を整理したうえで,知識を土台とし,分水嶺での行動と組織づくりへつなげる研修の内容と方法を,2026年12月施行の改正公益通報者保護法もふまえて検討し,末尾にチェックリストとして示す。
「法律相談対応」の研修
――事実確認,相談の記録法,利害関係等調整ほか
古賀祐二郎・中村哲也
本稿では,社内の法務相談への対応のために必要な知識およびスキルと,それを身につけるために有効なトレーニングについて概説する。ヒアリング方法・事実確認,相談内容の記録方法およびメールの作法,利害関係等の調整や解決策の提示に向けた考え方,ならびに経営目線に立った助言方法について,そもそもどのような知識やスキルが必要か。また,それらのノウハウをどのようなトレーニングによって法務部員に身につけてもらうか。さらには,業務経験のない新入社員向けと中途入社者向けとで意識するポイントの違いにもアプローチしたい。
「紛争・トラブル対応」の研修
――会社を不利にしないための基礎的知識と心構え
大竹将之
企業法務の紛争対応では,法務担当者は,紛争の端緒を見逃さず,初動で事案を損なわず,必要な事実と証拠を整えて,外部弁護士から具体的な助言を引き出し,経営陣が善管注意義務をふまえて判断できるよう材料を揃えて整理し,その判断のもとで紛争解決への道筋をつけることが重要である。本稿では,そのための基礎知識と実践的な研修方法を解説する。
「法務組織マネジメント」の研修
――部門計画・ミッションの策定,外部アドバイザーの体制構築,人事評価,ナレッジマネジメント
今仲 翔
法務部門では,個々の担当者の専門性や案件遂行能力に注目が集まりやすく,組織マネジメントのスキルは体系的に継承されにくい。本稿では,総論として,組織マネジメントを新たに担う方々には,プレーヤーからマネージャーへの発想の転換が求められることを述べたうえで,各論として,組織マネジメントとして実施すべき事項として,人員計画・予算・外部アドバイザー体制・ミッション・目標設定と評価・ナレッジマネジメントの各項目を説明し,最後に,部門責任者に対する研修の内容と方法を提案する。
「経営層への法務アドバイス」の研修
――取締役・国内外グループ管理・リスクマネジメントの対応
中村 豊
本稿では,法務部員として経営層に助言する際に必要となる知識を法分野ごとに整理したうえで,その知識と能力を法務部門として計画的に身につけるための「法務部員研修」の項目をチェックリストの形で提示し,これを法務部門の人材育成の継続的な取組みへと結びつけるための視点を提供する。
「M&A等の重要取引・契約」の研修
――「普通に」対応するための組織知化
本間隆浩
M&A等の重要な取引は専門チームが担うが,ガバナンス,契約,知的財産,コンプライアンス等の広範な分野が関係するため,法務部門全体での対応力が問われる。本稿では,要求される知識をコア領域・関連領域・共通基礎の三層に整理したうえで,個人や案件ごとの知識・経験をプレイブックの形で組織知に再構成し,研修と振り返りを通じて部門全体に定着させていく,M&A等に「普通に」対応できる法務部門のあり方を展望する。
唐木明子
私の社会人としての最初の仕事は,投資銀行の社内法務であった。折しも日本版金融ビッグバンの真っただ中である。規制緩和が進み,昨日まで存在しなかったビジネスが次々と生まれていた。
皿谷 将
中小企業庁は,2025年8月に「中小M&A市場改革プラン」を策定し,中小M&A市場改革に向けた今後の施策の方向性を示すなかで,M&A支援機関登録制度等による「組織レベルでの規律浸透と両輪でアドバイザー個人レベルでの質の担保・向上を図っていく必要がある」(同43頁)という観点から,中小M&A市場に係る施策の1つとして「M&Aアドバイザー個人の知識・スキルに係る資格制度の創設」(同制度を以下「資格制度」という)を挙げている。
川井信之
企業のトップや役員(執行役員を含む)が,ハラスメントやその他の個人的な不適切行為を理由として,取締役会で解職されたり,辞任勧告を受けて辞任したり,あるいは自ら辞任したりする事例がここ数年相次いでいる。こうした事例はそれ以前から一定数あったが,ここ数年は件数が以前より増えている印象を受ける。
企業法務の見取り図
――キャリアステップ,分野選び,転職時期,報酬
岩崎祥大
キャリアにおいては,「正解を選ぶ」より「選んだ道を正解にする」ことのほうがはるかに重要である。とはいえ,キャリア選択も今や情報戦であり,事前に知れば対処できることも多い。本記事では,企業法務弁護士のよくある悩みをQ&A形式で概観する。
街弁の見取り図
――入り方,独立と合流,経済構造,専門化
北 周士
街弁のキャリアには,勤務,独立,共同経営,他事務所への合流など,いくつもの分岐がある。最初の環境で培う基礎は重要だが,その後の取扱業務や働き方は自分の意思で変えていくことができる。本稿では,筆者の経験と収集した事例,公表資料を手がかりに,街弁の経済構造,専門化,経営との距離の取り方を整理し,自分に合うキャリアを考えるための見取り図を示す。
自社ビジネスを学び尽くす
――法律だけでは信頼されないと気づいて
望月 健
法律事務所からインハウスロイヤーへ転身した私のキャリアの転機は,法律知識にとどまらず自社のビジネスや製品への理解を深めるため,自発的に学び続けた経験にある。業務外におけるプラスアルファの努力の結果,社内の信頼を獲得し,「信頼される法務」としてのスタイルを確立できたことが,その後のキャリアの広がりや,法務・非法務の両分野で活躍する現在の礎となった。
Space Is the Place
――「自分で決める」働き方
石井宏之
20代の大半を全力(?)で音楽活動に費やした私は,その後,転身して司法試験に合格したものの,キャリアなど考える余裕もなく,必死のパッチで案件と向き合う日々を過ごしていた。そんなとき,ある公開セッションを聴きに行った。内容はほとんど忘れてしまった。ただ,自由に働く弁護士の姿を目の当たりにして帰った。以下は,あまり他人の参考になるとは思えない,早期独立した私の転機の話である。
契約書に夢を書く
――恣意性を排除する契約から託し合う契約へ
玄 唯真
透明性の高い関係性を築き上げることで,人の恣意的な判断を徹底的に排除して,信用構造を設計する金融法務。それが弁護士としての私の原点だった。しかし,人と人との関係性に基づいて,価値を共創していく営みは,契約の本質が,互いに夢を託し合うことにあることを教えてくれた。外部アドバイザーからビジネスの当事者へ,そして契約のあり方を問い直す現在に至るまでのキャリアの軌跡と,新たな法務の可能性を提示する。
AIとつかず離れずの30年
――回り道と思えたものが可能性を広げる
岩原将文
AI研究から広告会社へ,そして弁護士,さらに法律業務のAI化に取り組む起業家へ。私のキャリアは,大きな方向転換の連続であった。当初から描いた道ではないが,それぞれの分野で得た知識や経験,人とのつながりは,現在の仕事に結びついている。本稿では,4つのターニングポイントを振り返り,何に心を動かされ,どのように情報を集め,進路を選んだのかをたどる。個別の経験を通じて,キャリアの分岐点における選択と行動を考えたい。
「まだ弁護士やっているんですか?」
――2つの質問から考える,弁護士という仕事
宮谷 隆
企業法務弁護士35年目。偶然だが目指すともなく50代から小劇場に立ち,今はインディーズ映画を中心に俳優として出演し,自ら監督も始めた。弁護士とアート,どちらも好きだ。2つの世界を少し行き来するうちに,「自分はどうしたいのか」を考え,「ご縁に身を任せてみること」に行き着いた。あくまでも1人の弁護士の個人的な省察である。
AI時代の弁護士のキャリアを考える
――磨くべき能力と決断の軸
野口祐子
生成AIとAIエージェントの急速な普及により,弁護士業務におけるAI活用の議論は「使うか否か」から「どう使うか」へと移りつつある。本稿では,AIツールの選び方と使う際の注意点,AI時代に人間の弁護士が磨くべき能力,そしてキャリア上の大きな決断をする際に大切にしたい視点について,筆者自身の経験を交えて論じる。
「企業買収における行動指針」Q&Aの読み方
――当局の意図・制定経緯・実務との整合性の考察
柴田堅太郎
経済産業省は,2026年7月30日,①「『企業買収における行動指針』の解釈について」(以下「趣旨紙」という),②「『企業買収における行動指針』のポイント」(以下「ポイント」という)および③「『企業買収における行動指針』Q&A」(以下「Q&A」という)の3点(これらを合わせて以下「三文書」という)を策定,公表した。三文書は,経済産業省が2023年8月31日付で「企業買収における行動指針」(以下「行動指針」という)かを策定して以降M&Aが増加したものの,行動指針の趣旨が「十分に理解されていない可能性」が指摘されていることを受け,「公正な買収の在り方に関する研究会」(以下「公正買収研究会」という)を再開,第9回から第11回までの合計3回の審議およびパブリックコメント(以下「パブコメ」という)を経て確定,公表されたものである。
買収防衛策に関するトレンド分析
――有事導入型買収防衛策が実務の主流に
三谷革司
買収防衛策は,アクティビスト等への対応を契機とする有事導入型が実務の中心となっている。2026年6月総会でも,対抗措置の発動の是非を株主に問う議案が相次いだ。本稿では,直近の導入事例を比較しながら,買収防衛策をめぐる最新の実務動向を概観する。
三谷英弘
生成AIの急速な発展は,企業法務や司法を取り巻く環境にも大きな変化をもたらしている。2026年8月,法務省は企業法務分野におけるAIリーガルテックに関する新たなガイドラインおよびロードマップを公表した。本稿では,その策定経緯と概要を紹介するとともに,その背景にある「法の支配」と「イノベーション」の両立という課題およびAI時代における法務・司法の将来像について論じる。
環境ラベルの景品表示法違反リスク
――報告書の解説と実務上の留意点
渡辺大祐
2026年8月20日,消費者庁は「環境ラベルに関する実態調査報告書」(以下「本報告書」という)を公表した。本稿においては,消費者庁が環境ラベルについて調査を行った経緯や本報告書の内容を見ていくとともに,本報告書の内容をふまえた実務上の留意点等について解説する。
不祥事対応における役員の経営責任
──類型・処分内容の整理・分析
伊丹郁人
企業不祥事の発生後,役員の経営責任をどこまで,どのような形で問うべきか。辞任や報酬の自主返上といった対応が公表されることは多いが,その判断基準は必ずしも明確ではない。本稿では,東証上場会社の適時開示情報をもとに,近年の企業不祥事の調査結果と役員等の処分が公表された事案を抽出・分析し,不祥事類型と処分の重さを整理し,経営責任の量定を検討する際の考慮要素を概説する。
職場に進出するニューロテクノロジーと「メンタル・プライバシー」
――「尋ねる」労務管理から「測る」労務管理へ
小久保智淳
イヤホン型脳波計の登場により,職場の安全や生産性の向上を掲げ,労働者のストレスや集中力を神経データから推定する労務管理が現実味を帯びてきた。憲法学が不可侵と説いてきた内心領域の境界線が崩れ始めるなか,神経法学は「メンタル・プライバシー」という新たな人為的な境界線の構築を目指している。本稿はこの新たなプライバシー概念を手がかりに,職場へのニューロテクノロジー導入を前に法が向き合うべき論点を提示する。
森・濱田松本法律事務所外国法共同事業編
8月、9月の法務ニュースを掲載。
■GPIF,今年の「重大なESG課題」を公表
■東証,資本コストや株価を意識した経営に関する機関投資家アンケートの結果を公表
■厚労省,時間外労働等に係る相談・支援および監督指導を見直し
■消費者庁,「環境ラベルに関する実態調査報告書」を公表
■資本市場東証,「グロース市場の発展に向けた検討会」第1回会合を開催
■不動産特定共同事業法施行規則の改正
■法務省,「ビジネス分野におけるAI等法務業務支援サービス提供と弁護士法第72条の関係について」を公表
■内閣官房(知的財産戦略本部),「生成AIの適切な利活用等に向けた知的財産の保護及び透明性に関するプリンシプル・コード」を公表
■一般民事建物共有持分の買取請求権を否定した最高裁判決
■公取委・中企庁,「約束手形の利用廃止を踏まえたサプライチェーン全体での支払の適正化について」を発出
■公取委,「物価高の局面におけるカルテルに対する公正取引委員会の取組」を公表
■厚労省,「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル(令和8年度改訂版)」を公表
■消費者庁,「デジタル取引・特定商取引法等検討会 中間取りまとめ」を公表
■消費者庁,「現代社会における消費者取引の在り方を踏まえた消費者契約法検討会 中間取りまとめ」を公表
■飲食料品に係る消費税率引下げ等に係る大綱を閣議決定
最新判例アンテナ
第101回 監査役を置く旨の定款の定めを廃止したことによって退任した監査役からの残任期の報酬相当額の損害賠償請求を否定した事例
(東京地判令7.9.16LEX/DB25626837)
三笘 裕・中村日哉
Xらは,株式上場を目指していた非公開会社かつ監査役設置会社であったY社の社外監査役であったところ,Y社は資金繰りに難儀するようになり,株式上場を断念し,役員を取締役1名とする,従業員に退職勧奨を行う,オフィスを縮小する,共同開発費用の支出をやめる等のコストカットを行い,その一環として監査役を置く旨の定款の定めを廃止した(以下「監査役廃止定款変更」という)。本件は,これにより監査役を退任したXらが,Y社に対し,当該定款変更による退任は事実上の解任であると主張して,会社法339条2項の類推適用に基づき,定款の変更前の残任期の報酬相当額の損害賠償を求めた事案である。
一口海外法務ニュース
石田雅彦・藤河家知美・松本郁哉
ニュージーランドのプライバシー・コミッショナーは,2025年7月21日,生体情報の取扱いを規律するBiometric Processing PrivacyCode 2025(以下「本コード」という)を制定した。本コードは,Privacy Act 2020に基づく行動規範であり,顔認証等の生体情報処理について,同法上のプライバシー原則を具体化・修正するものである。
最新事例に学ぶ EUの競争法制度と実務
最終回 支配的地位の濫用に関する規制
亀岡悦子
EU機能条約102条は,支配的企業によるEU域内の競争に影響を及ぼしうる濫用的な行為を禁止する。支配的地位の濫用規制は,米国のデジタル大手企業に対する高額制裁金が報道されていることもあり,欧州では比較的知られた概念である。一方,日本を含む欧州域外では,その考え方や適用基準などの詳細については,あまりなじみがないかもしれない。欧州委員会は,審査方法を明確化するため,排除型濫用行為に関するガイドラインを採択したところである。本稿ではこのガイドラインの紹介を含み,EUの支配的地位濫用規制を概観する。
ビジネスはワインとともに
~ソムリエ社労士の発想法~
第8回 こだわりのパートナーグッズ
石田恵三
晴れてワインエキスパート・ソムリエになった方は,自分へのご褒美として,ソムリエナイフを購入する人もいます。ソムリエにとって,ナイフは仕事を支えてくれるパートナーです。今回はそのこだわりから,「パートナーグッズ」の選び方を考えてみます。
令和8年改正個情法から俯瞰するデータ法務
第2回 顔特徴データ等の利活用と実務対応
水越政輝・尾島 灯・日置巴美
本稿では,今般の個人情報保護法の改正によって新たに定義された「特定生体個人情報」に関する改正事項を概観するとともに,顔認証関連サービスの利用が進むモビリティ分野における利活用の場面を想定しつつ,改正法への実務対応について解説する。
業種別 環境法務の最新トレンド
第8回 物流・運輸業
川端健太・本井 豊
第8回では,近時の法改正の動向もふまえつつ,「輸送」と「保管」に分けて,物流・運輸業における環境法規の概要を説明する。
AI時代のコーポレート変革
第8回 説明できないAIは,使えない
――監査・開示・説明可能性
板倉侑輝・淵邊善彦・照山浩由
前回は,固有データを資産化し,AIで増幅する原理を論じた。その最後に問いを残している――整えた無形資産が金融・M&A・与信の窓で評価されるかどうかは,最後に「説明できるか」で決まる,と。第8回は,その関門を正面から扱う。AIに委ねた判断を,株主に,監査に,取引先に,どう説明するのか。ゲストとして,AIを"提供する側"であり,かつ上場企業として説明責任を"担う側"でもある,GVA TECH株式会社取締役CFOの板倉侑輝氏を迎え,公認会計士の資格を持たないコーポレート人材が,なぜAI時代の説明責任の中心に立てるのか,監査・開示・ガバナンスの最前線を,法的な線引きとともに掘り下げる。
私の法務を支える一冊
第4回 無知のヴェールと弁護士法1条
板谷隆平
MNTSQ(モンテスキュー)という名前のLegalTech企業を創業するくらいであるから,長島・大野・常松法律事務所(NO&T)に入所する以前,学生時代の私は哲学を何よりも好んでいた。
法務担当者のための著作権入門
第8回 不法行為という受け皿
竹内 亮
不法行為は,さまざまな場面で使われる民法の一般的な規定である。著作権が認められない場合には,不法行為構成の活用が,かねて裁判例も含めて議論されてきた。2011年の最高裁判例以降,不法行為成立の否定例が多かった。しかし,ここ数年,バンドスコアと棋譜のケースにおいて不法行為の成立を認める裁判例が登場し著作権の世界では大きな注目を集めている。
「正しい」が生む組織の死角
――沈黙・緊張・不安を読み解く視座
第7回 「全員合意」に潜む課題
木曽 裕
期初の全社横断会議。営業,製造,物流,管理部門の責任者が集まり,新しい重点施策の実行計画が示される。資料には経営企画部の作成した市場環境,競合比較,収益予測が並ぶ。誰もが,データだけでうまく行くはずがないと思っているが,対案がないため,意見が出ない。社長は重い口を開き,「この方向で行くしかない」と宣言する。終了時刻も迫り,ついに誰も異論を差し挟まない。議事録には「全員合意」と残る。