雑誌詳細

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2026年2月号

2025年12月19日発売号   1,850 円(税込)

特集1

株式会社の「機関設計・運営」実務トレンド

特集2

法務とプレスリリース

座談会

法務パーソンの読書術
──AI時代の「選ぶ」「読む」「活かす」

特集1
株式会社の「機関設計・運営」実務トレンド
企業経営の根幹をなす会社法上の機関設計や運営。その論点は,今般の改正議論や投資環境の変化等で浮上してきたテーマや,あるいは,従前から引き続き重要であり続けるテーマなどさまざま挙げられます。 そこで,本特集では,株式会社の「機関設計・運営」に関する論点のうち,特に近日に話題となっている実務のトレンドを中心に取り上げ,解説します。
会社法

機関設計をめぐる近時の議論と選択の視点
三笘 裕・壱岐祐哉

2015年の平成26年会社法改正施行およびコーポレートガバナンス・コード(以下「CGコード」という)施行から約10年が経過し,日本の上場会社におけるコーポレート・ガバナンス向上の取組みも一定の成果を上げつつある。本稿では,コーポレート・ガバナンスの要となる機関設計に関して,近時のトレンドおよびこれに関する議論を紹介し,機関設計を選択する際における重要な視点を示す。

会社法

社外取締役増加をふまえた取締役会の運営
奥山健志

社外取締役の選任を通じたガバナンスの強化は「量から質」の段階に移行しつつある。たとえば,2025年4月に経済産業省が公表した「『稼ぐ力』の強化に向けたコーポレートガバナンスガイダンス」(以下「『稼ぐ力』のCGガイダンス」という)や2025年6月に金融庁が公表した「コーポレートガバナンス改革の実質化に向けたアクション・プログラム2025」(以下「アクション・プログラム2025」という)においても,取締役会の機能強化に向けてさまざまな方策が指摘,提言されている。本稿では,上場会社を念頭に社外取締役増加をふまえた取締役会の運営に関する近時のトピックについて解説する。

会社法

社外取締役のサクセッションプランと取締役会の実効性向上
本村 健・坂東大聖

社外取締役のサクセッションプランについて,「選任」,「評価」,「退任」を一体的に運用するための体制・枠組みを可能な限り踏み込んで提示し,取締役会の実効性向上のための制度設計を提言する。

会社法

利益相反・関連当事者取引に関する実務上の留意点
松本真輔

利益相反・関連当事者取引については,会社法上の手続・開示のほか,金商法や証券取引所規則上の手続・開示も求められ,近時は,経済産業省の指針や証券取引所の要請もふまえた対応が求められる。また,利益相反取引については会社法上取締役の責任が厳格化されており,裁判所も厳格な審査を行う傾向にある。

会社法

海外グループ会社管理における留意点
吉田武史・富本聖仁

近年,企業は国内外に多数のグループ会社を抱え,その管理は経営の重要課題となっている。迅速な経営判断と法令遵守という価値を両立させるため,現地規制対応,情報共有,権限管理を体系的に整備することが不可欠である。また,コンプライアンス体制の構築はガバナンスの中核的要素であり,企業の信頼性確保に直結する。こうした要請をふまえ,本稿では特に海外グループ会社に関して,その管理の実務,地域統括会社の意義,そしてコンプライアンス体制の構築について論じる。

会社法

株主総会実務に関する最新動向
生方紀裕・野村賢太郎

近年,株主総会に関する制度改正が相次ぎ,現在議論が進められている会社法改正でも,「株主総会の在り方」が主要テーマとされている。このようななかで,バーチャル株主総会の活用や総会開催時期の後倒しなど,株主総会運営のあり方はいっそう多様化している。本稿では,株主総会にかかる最新の実務動向と関連する論点を取り上げる。

会社法

IR/SRに関連する機関運営上の論点
小川周哉

資本市場でフェアな評価を受けることなどを目的に行うIR(Investor Relations)や,議決権行使等を通じた株主の意見を収集し経営に反映させるSR(Shareholder Relations)においてしばしば議論になる,機関運営に関するコーポレート・ガバナンス上の典型論点とはどのようなものだろうか。

地平線
記者が見たM&A仲介ビジネスの死角
M&A

藤田知也

中小企業のM&Aを仲介するビジネスの現場で,「悪質な買い手」による理不尽なトラブルがわき起こっている。その1つの典型が,株式譲渡契約時に約束した経営者保証の解除が実行されない,というものだ。買い手によって会社の現預金を引き抜かれ,資金繰りが行き詰まったときには,保証を背負ったままの売り手の人生は暗転する――。

Trend Eye
「科学とビジネスの近接化」時代の研究開発税制
税務

堀田善之

わが国のイノベーションモデルは,戦後の国家的ニーズに応じて政府が科学に投資・統括する「リニアモデル」の時代から,民間によるスタートアップ等への投資を通じてイノベーションが創出される「イノベーション・エコシステム」の時代を経て,現在は「科学とビジネスの近接化」の時代へと移行したとされる。この「科学とビジネスの近接化」の時代は,科学分野への官民による巨額資本の投下と,科学からビジネスに至るスピードの加速が特徴であり,各国は戦略的な科学技術領域への重点投資や研究開発拠点の誘致競争をいっそう激化させている。

企業法務総合 情報法

子どものSNS規制
──世界の潮流からみるわが国の方向性
八代英輝

SNSは,子どもたちにとって日常的なコミュニケーションの手段であると同時に,深刻なリスクの温床にもなりうる。依存症,誹謗中傷,性的搾取,フェイクニュースへの接触,アルゴリズムによる過剰な刺激――こうした懸念が顕在化するなか,各国は子どものオンライン環境を守るための制度設計を急いでいる。
とりわけ,欧州連合(EU)やオーストラリアの動向は,規制の新たな基準を提示するものとして注目される。

特集2
法務とプレスリリース
新商品開発やM&A の際など企業がプレスリリースを行う機会は多岐にわたり,その際,景品表示法やインサイダー取引規制など各種法規制への対応が求められます。さらにはプレスリリースにおいては表現の仕方が企業価値に直結することもあるところ,開示のタイミングや伝え方への配慮も不可欠です。そこで本企画では,プレスリリースの類型別に法務部門が押さえるべき実務対応を,主に表現の問題を主題としつつ解説します。
企業法務総合 コンプライアンス

プレスリリースと企業価値
──株主対話・人権問題への対応
浅見隆行

危機管理広報は,単なるリスク対応の一手段ではなく,企業価値を左右する経営戦略そのものである。機関投資家(アクティビスト)からの「株主との対話」の要請や,サプライチェーン(取引先)における「人権侵害」リスクの顕在化といった,一見するとネガティブな事態を,むしろ自社への信頼を向上させるための好機と捉える視点が必要である。こうした事態を「危機」と捉え,積極的かつ効果的な情報を継続して発信する「広報」ができる企業は,企業価値が向上する。

企業法務総合 コンプライアンス

プレスリリースと危機管理
──不祥事の際の開示判断と伝え方
原 正雄

危機管理広報の目的は,「被害の発生と拡大の防止」「社会からの信頼の回復と維持」である。それらの目的を達成するには「伝える決意」と「伝える技術」が必要である。「伝える決意」とは,開示をする決断,それも早期に行うという決断である。「伝える技術」とは,開示の内容と方法についての技術である。これらは取締役の善管注意義務の問題であり,法的観点からのチェックが必要である。

企業法務総合 コンプライアンス

プレスリリースと広告規制
──景表法・薬機法を中心に
渡辺大祐

新商品やサービスに関する情報を発信するプレスリリースにおいては,景品表示法をはじめとする広告規制への対応が必須である。たとえば,新商品について性能・効果をアピールする際には合理的な根拠の事前準備が求められるし,競争事業者の商品と比較する際にも適正に行う必要がある。また,薬機法では医薬品等に関する広告規制がなされている。その他,SNS時代特有の炎上リスク等も考えられるところであるが,本稿ではこれらの論点を中心に取り扱う。

企業法務総合 コンプライアンス

プレスリリースと訴訟リスク
──裁判例に学ぶ法的責任と判断基準
佐藤安紘

訴訟提起に伴うプレスリリースでは,経営判断と法的責任のバランスが問われる。実務では,ちょっとした内容や表現の違いで法的責任の有無が分かれることもあり,どのような場合に責任を問われるのかについて,考え方のフレームワークを持っておくことが重要である。本稿では,複数の裁判例をふまえ,この問題を考える際の基本的な視座を具体的に検討する。

企業法務総合 コンプライアンス

プレスリリースとM&A開示
──外部要因への対応
早川明伸・石崎仁紘

M&Aは,どの段階で開示をすべきか,インサイダー情報の管理の観点で各社さまざまな対応が考えられる。M&Aの成否は,外部的要因により左右されることもある。その際,M&Aを進行させていく過程においていかなる開示をすべきか,自社のレピュテーションコントロールの観点から外部状勢を考慮しながら広報を考える必要がある。
今回,米国政府という外部的要因に多大なる影響を受けた日本製鉄株式会社によるUSスチールの買収案件と正式なリリース前に報道機関により公表がなされ,会社による公表後,ディールが不成立に至った本田技研工業株式会社と日産自動車株式会社の統合案件について,企業のM&Aにおける開示と外部的要因の影響について,両案件の開示上の特徴的な点を解説する。

座談会
法務パーソンの読書術
──AI時代の「選ぶ」「読む」「活かす」
今回の座談会企画は,AIを利用した新しいリーガル・リサーチ手法が発展しつつあり,動画講座等の新しい学習ツールも出てきているなか,昔ながらの「書籍」というものの法律実務・法務実務への活用について,再度考えなおす時期にあるのではないか,という思いから出発しました。もちろん,読者の皆さまの多くは,書籍を何らかの形で実務に活用されていることでしょう。とはいえ,今の時代における最適な書籍の選択や使い分け,そしてそれをどのように血肉にして各案件のよりよい対応につなげていくかについては,悩みや疑問を持たれている方も少なくないように思われます。たとえば,書籍を読むよう若い後輩に勧めたら,「今は誰も本なんて読みませんよ,何で今更本なんですか?」と言われてしまうかもしれません。その場合,何と答えますか?このような問題意識から,選書能力や書籍活用能力に定評のある4名の方にお集まりいただきました。

石井隼平(YKK AP株式会社専門役員 弁護士)/上野陽子(東京海上日動保険株式会社所属 弁護士)/松尾剛行(桃尾・松尾・難波法律事務所 パートナー弁護士)/幅野直人(かなめ総合法律事務所 パートナー弁護士)/はるか(国内IT企業のプライバシー部門・事業法務部門)
実務解説
改正下請法(取適法)関連規則・運用基準の要点
競争法・独禁法

柿元將希

いよいよ改正下請法(いわゆる取適法)の施行が2026年1月1日に迫るなか,改正法の関連規則および運用基準についても成案が2025年10月1日に公表された。これらは,改正法施行後の実務の方向性を指し示すものとして重要と考えられる。本稿では,改正法ならびに関連規則および運用基準の要点について,関係するパブコメ回答にも触れつつ解説する。

ファイナンス

スタートアップへの成長資金の供給促進に向けた政策的な取組み
有吉尚哉

日本の経済成長のためには,スタートアップの成長やスタートアップに対する成長資金の供給を促進することが不可欠である。近年,スタートアップに対する成長資金の供給に関するさまざまな政策的な取組みが進められているが,「スタートアップ企業等への成長資金供給等に関する懇談会」が2025年9月5日に取りまとめた報告書では,さらなる促進策が提言されている。本稿では,この報告書の内容のうち,実務に携わる者が理解しておくべきポイントを解説する。

民法・PL法等

公正証書作成手続のデジタル化
吉賀朝哉・三浦 武

2025年10月1日に改正公証人法が施行され,これまで,書面,押印,対面(公証人役場への出頭)を特色としていた公正証書の作成に係る一連の手続が全面的にデジタル化された。公正証書は,事業用定期借地権の設定契約において利用が必要的とされているほか,賃貸借,金銭消費貸借等の契約でも利用されており,本改正は,ビジネス分野にも広く影響を及ぼしうるため,その内容を紹介する。

連載
LEGAL HEADLINES
企業法務総合

森・濱田松本法律事務所外国法共同事業編

2025年10月,11月の法務ニュースを掲載。

■国交省,区分所有法等の改正の施行に向け,マンション標準管理規約を改正
■会計検査院,ストック・オプションに係る課税の状況等についての指摘を公表
■金融庁,「コーポレートガバナンス・コードの改訂に関する有識者会議(令和7年度)」の第1回会議を開催
■環境省,「生物多様性及び生態系サービスに関する総合評価2028 (JB04:Japan Biodiversity Outlook 4)に向けた中間提言」の公表
■厚労省,「美容医療に関する取扱いについて」を公表
■米中が首脳会談を実施
■最高裁,死亡保険金の相続財産該当性に関する判断
■内閣府,「気候変動に関する世論調査」(速報)を発表
■環境省,「生物多様性国家戦略2023-2030の実施状況の中間評価(案)」などに関する意見募集を実施
■消費者庁,「公益通報者保護法第11条第1項及び第2項の規定に基づき事業者がとるべき措置に関して,その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針の一部を改正する告示(案)」の公表・意見募集
■日本監査役協会,「グループ・ガバナンスと監査役等の監査について」を公表

テクノロジー・AI

事例でわかる「AI活用」ことはじめ
第2回 プレゼン資料・スライド作成
坂 昌樹・山田健介

「明日の役員会議の資料,まだできてない......」「デザインセンスがないから,いつも地味な資料になってしまう......」読者の皆さまは,プレゼン資料作りで夜遅くまで残業していないだろうか? 本稿では,Genspark,Manus,Gemini,Claudeといった生成AIツールが,どのように「資料作成地獄」から皆さまを救い出してくれるのか,そして法務実務における活用時の留意点について解説する。

競争法・独禁法 AI・個人情報

最新判例アンテナ
第91回 クラウドサービスで取り扱う従業員個人データを雇用主であるユーザー企業へ提供することに関して,第三者提供についての本人の黙示的な同意を認め,個人情報保護法27条1項違反を否定した事例
(東京地決令7.3.27公正取引委員会審決等データベース)
三笘 裕・高村真悠子

X社は,建設現場の元請会社および協力会社(以下「ユーザー」という)間の労務安全書類のやり取りを効率的に行うためのクラウドサービス(以下「本サービス」という)を提供している。X社は,競合の他社サービスへの乗換えを抑止すべく,ユーザーが登録した作業員情報をユーザーが求める形式でユーザーに提供することに応じていなかったが,公正取引委員会(Y)は,このことが私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律19条に違反していると認定し,X社に対して,かかる提供を拒んではならない旨の排除措置命令(以下「本命令」という)を行った。X社は,本命令により,本人の事前の同意を得ずに第三者に作業員情報を提供することとなり,個人情報の保護に関する法律(以下「個情法」という)27条1項等に違反する行為を強制させられるとして,本命令の取消訴訟を本案とし,行政事件訴訟法(以下「行訴法」という)25条2項に基づき,本命令の効力の停止を求めた。

企業法務総合

統合報告書の実例から見解く コーポレート・ガバナンス
最終回 日本ペイントホールディングス株式会社(日本ペイント)・株式会社レゾナック・ホールディングス(レゾナック)・株式会社キーエンス(キーエンス)
天野正人

最終回は,企業の成長戦略のおもしろさや統合報告書の完成度からこれまで掲載した各社なみに注目すべき日本ペイントとレゾナックの2社と,あえて統合報告書に背を向け定性的開示に注力しない超優良企業キーエンスを取り上げ,結語で締めくくる。なお,2社とも統合報告書の2025年版(最新版)がすでに公表されているが,前回と同様に2024年版の検討となる点を,あらかじめお断りさせていただく。また,日本ペイント・レゾナックは,筆者が両社を取り上げることを決め,本連載の初稿を中央経済社に入稿した後,2025年の3月中旬に第4回日経統合報告書アワードで,日本ペイントが総合グランプリ賞,レゾナックが優秀賞を受賞していることを付記させていただく。

国際

企業法務のための外為法入門
第3回 資本取引等
大川信太郎

本連載の第3回では,法第4章(資本取引等)に関する規制のうち,資本取引・特定資本取引に関する事後報告制及び対外直接投資に関する事前届出制・事後報告制を解説する。

会社法

商業登記実務基本マスター
第2回 商業登記の効力と効果
鈴木龍介・真下幸宏・小木曽優子

商業登記は会社等の情報を登記簿に記録し,これを公に示す制度である。制度の趣旨としては,会社に関する重要な情報を広くオープンにすることで取引の安全を確保し,経済活動等を円滑に進める基盤を提供することにある。しかし,商業登記の意義は単に事実を公示することにとどまらず,法律上の効力を伴うところに大きな特徴がある。
連載第2回は,商業登記が持つ「公示力」「公信力」「形成力」という3つの効力と,登記による実務上の効果について取り上げることとする。

会社法 テクノロジー・AI

株主総会のDX化――壁を乗り越えるために
第5回 バーチャル株主総会当日の運営――主要諸外国の取組み
長澤 渉

株主総会のDX化の最たる一例は,実際の開催場所を要しないバーチャルオンリー型株主総会(以下「オンリー型」という)であるといいうる。

消費者関連法

差止請求事例から考える 利用規約のチェックポイント
第6回 事業者による契約内容の一方的変更を認める条項
小林直弥・土田悠太

消費者契約では,事業者が一方的に契約内容を変更できる旨の条項が定められることがある。第6回では,近時の差止請求事例を紹介しながら,このような変更条項を定める際の留意点を解説する。

企業法務総合

分野別 規制改革制度のトレンドと活用法
第5回 サーキュラーエコノミー・GX
荏畑龍太郎

第5回では,まずわが国のサーキュラーエコノミー・GX分野に関する政策・官公庁等の動きを紹介したうえでサーキュラーエコノミー・GXにおける規制改革制度の活用実績を紹介しつつ特に規制改革推進会議の活用に焦点を当てて解説する。

企業法務総合

企業法務担当者のための「法的思考」入門
第11回 意思決定理論と経営判断の原則
野村修也

コインを表が出るまで投げ続け,表が初めて出たのがk回目なら2K×100円の賞金がもらえるゲームがあったとしよう。このゲームの参加権は,いくらの価値があるか。

企業法務総合 民法・PL法等

基礎の基礎から始める要件事実・事実認定の徹底的入門
第5回 第5章 裁判規範としての民法説による立証責任対象事実(要件事実)の決定基準について(第3節)
伊藤滋夫

第1 法解釈学の本質とはどういうものか
まず,法律の解釈というものは,法律の意味を明らかにすることである以上,本質的に,法律というものの存在を前提とします。次に,法律とは規範(人がそれに従うことを期待されているルール〔ビジネス法務2025年10月号146頁〕で,人間の行動に関する一種の価値命題――価値判断は,「......するべきである」というような価値命題の形で現れる)の体系であると考えられ,法律の解釈とは,そうした法律を,具体的事案の妥当な解決のために,具体的事案に適用することですから,法律の解釈というものは,本質的に人間の行動に関する価値判断を含むものです。

企業法務総合

法と人類学―法がつくられるとき―
第7回 「法」が登記簿の外にあるとき
――ラオス・カンボジアの実務現場から
藪本雄登

第6回では,東南アジアの企業社会において,グローバルスタンダードな法制度が導入される一方で,人々がその制度の「内側で呼吸する術」として,法令と実務の間に存在する「余白」を活用していることを述べました。原口さんが述べているとおり,「法とは固定化された起点ではなく,常に『折衝』と『調整』のプロセスの中で生成されるもの」です。

企業法務総合

法務担当者のための独占禁止法"有事対応"ガイド
第4回 談合・カルテル事件の行政調査対応
神村泰輝

本連載第4回は,第3回(立入検査対応)に続き,公取委による立入検査後の行政調査等に関する企業対応を取り扱う。

書評
PICK UP 法律実務書
『社外取締役の教科書〔第2版〕』
企業法務総合

大串淳子

「木を見て森を語れ」これは,私が社外取締役を務めるにあたって意識している自家製標語である。社外取締役が木を見て森を見ないのは(いわゆるマイクロマネジメント)論外だが,他方,会社の事業全体を俯瞰して執行サイドを監督すべき立場にある社外取締役が,森だけ見てそこに茂っている木を知らず大所高所だけからものを言っているのでは,的を射た意見は期待できず的確かつ実効的な監督はおぼつかない。もとより会社全体を俯瞰する際,木をすべて知る必要はないし,また社外の立場からそれは不可能である。会社の事業を俯瞰的に理解するにあたり必要となる部分を抽出して深掘りすればよいのである。

企業法務総合

PICK UP 法律実務書
『カンパニー・ロイヤーへの道程――その意義・価値,ジレンマ
小幡 忍

本書は,高度な法務人材(それを本書ではカンパニー・ロイヤーと呼んでいる)にスポットを当て,米国,イングランド,フランスやドイツにおけるカンパニー・ロイヤーの発展の経緯や実態を紹介しつつ,日本企業におけるカンパニー・ロイヤーの本質に切り込んだものである。今までにも,インハウス・ロイヤー論や企業法務の組織論に関する書籍はいくつもあったが,ここまで法務人材について掘り下げた書籍は,評者の知る限りない。