雑誌詳細

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2025年8月号

2025年6月20日発売号   1,800 円(税込)

特集1

プロはこう動く
契約交渉のブレイクスルー

特集2

報告書をふまえた
会社法改正に向けた7つの視点

特別企画

JILAインハウス・リーガル・アワード
受賞者が語る法務部門の革新への挑戦

特集1
プロはこう動く
契約交渉のブレイクスルー
契約交渉においては,社内・社外の利害関係を取りまとめる法務部員が悩む場面も多いことと思います。その一方,企業の目線から「リアル」なノウハウを紹介した記事は本誌ではあまり取り上げてはきませんでした。
そんな思いから,本特集では経験豊富な「プロ」の知見を一気にまとめました。社内外の折衝の仕方や交渉力の差や時間的制約をはじめとした不利な交渉ケースの突破法,外部弁護士からみた「交渉がうまい法務部員」とはどのような人物か紹介します。「交渉」を成功に導くためのカギはどこにあるのか,本特集で見つけましょう。
企業法務総合

交渉理論に基づく戦略とテクニック
射手矢好雄

交渉には2つのスタイルがある。決まった大きさのパイを分ける分配型交渉と,パイを大きくして当事者双方が利益を得るようにする統合型交渉である。交渉理論は,ハーバード大学における研究を中心に発達してきた。その到達点は,利益やBATNAなどを要素とする「交渉の7つのカギ」である。
本稿では,交渉の理論を示し,それに基づく交渉戦略や交渉テクニックを解説する。理論をふまえたうえで,テクニックを活用すれば,交渉が成功する。

企業法務総合

契約交渉における法務の役割・スキル・キャリア
岩本竜悟

契約交渉における法務の役割は,社外交渉と社内交渉の両方を見据えて,誰と何を交渉すべきかを交渉局面ごとに見極め,事業部との適切な役割分担のもとで,契約プロジェクトのマネジメントを行うことである。そのためには種々のスキルや組織的取組みが必要である。契約交渉に熟達することは法務のキャリアを広げることにもつながる。

企業法務総合

契約交渉の思考・行動準則
幅野直人

契約交渉では,取引の内容や重要性,相手方といった事情,状況に応じて臨機応変に対応することが求められる。本稿は,契約交渉の総論的なポイントを解説することで,臨機応変に対応するうえでの行動指針・判断指標としていただくことを狙いとする。

企業法務総合

弁護士が考える契約交渉のエッセンス
辛川力太

『契約書作成の実務と書式〔第2版〕』の執筆者であり,民間企業法務部への出向により法務部員としての勤務経験もふまえ,法律事務所に所属する弁護士の立場から,企業にとって望ましい契約交渉のあり方について考える。

企業法務総合

大企業・スタートアップ間の契約交渉上の留意点
淵邊善彦

大企業がスタートアップと契約交渉する際は,立場が大きく異なるため,さまざまな問題や紛争が生じている。本稿では,両者の協業を成功させるためにどのような点に注意して交渉すべきかについて解説する。

企業法務総合

契約交渉は"設計"で決まる
――先端技術分野の現場からみる交渉に強い法務部の条件
柿沼太一

AIやバイオをはじめとする先端技術分野の契約交渉では,「技術・ビジネス・法律」の3層を見通した"設計力"が不可欠となる。契約交渉に法務部がどのように貢献するかについての視点と実践知を,成功・失敗事例から読み解く。

企業法務総合

契約交渉における2つの武器
熊木 明

契約交渉において法務部に重要なのは必ずしも法律知識に精通することだけではない。むしろ弁護士にはできない形での関与が弁護士にとっては印象に残ることが多い。具体的には,事業部門との連携からくるコメントと,当事会社としての立場からのコメントという,弁護士にはない2つの武器は非常に効果的である。

企業法務総合

困難な局面における法務担当者の役割
――交渉力の差をどのように乗り越えるか
中村 豊

法務担当者が,契約交渉において根本的な交渉力のアンバランスがあり,契約書上の論点の交渉だけでは解決できない場合に,どのように交渉の難所を乗り越えるか。そのヒントを筆者が経験したライセンス契約,撤退案件,プロジェクト案件などの実例をもとに探る。

企業法務総合

実例にみる契約交渉の成功ポイント
澁澤崇史

契約交渉においては,相手との交渉と社内の取りまとめの両方が必要になる。さまざまな場面で法務としての能力発揮が求められるが,本稿では,①大規模かつ複雑な案件における社内対応により契約交渉に貢献した事案,②社内から最後にコメントが入ってしまった事案,③M&A案件において契約の再交渉が必要となった事案の3つにつき筆者の経験とlessons learnedを紹介したい。

企業法務総合

ゴールへ導く事前準備と契約交渉の型
吉田成希

契約交渉が難航する原因の多くは,事前準備にある。契約交渉のゴールを定め,交渉相手のことを知り,目的に即した契約書のレビューを行うことで,スムーズに交渉が進む。そして,契約交渉にはいくつかの型がある。今回は,これらに触れながら,契約交渉のポイントをお伝えしたい。

企業法務総合

契約交渉の基本マインド
藤井 塁

契約交渉には,契約書チェックとは異なるスキルが要求される。契約書チェックに慣れてくると契約交渉もできるのではないかと思ってしまいがちだが,もしかしたら,単に自社に都合のよい修正案をゴリ押ししているだけかもしれない。紙幅の都合で断片的にならざるをえないが,事例とともにポイントを紹介したい。

企業法務総合

法務部の役割とサーバント型リーダーシップ
桑形直邦・塩谷尚子

社内の複数部門のコラボレーションを必要とする契約締結の過程において,法務部がサーバント型リーダーシップを発揮して各部門の専門性を最大限に生かし,全社的な視点から最善の条件を達成するジェネラリストとしての役割を果たすあり方を検討する。また,法務部がビジネスオーナーや関連部門との良好な関係を築くためのヒントとなる具体例も紹介する。

企業法務総合

国際契約交渉上の「思い込み」「こだわり」がもたらす影響
白石弘美

日常生活のなかで,「思い込み」や「こだわり」が思いがけない結果を引き起こした経験は誰にもあると思う。契約交渉,特に欧米系企業と日本企業との契約交渉や,日本人と外国人がかかわっている契約交渉(本稿では便宜上「国際契約交渉」と呼ぶ)の場において,思い込みやこだわりがどんな影響を与えるかについて,主に欧米のテクノロジー企業の代理人や社内弁護士としての経験をもとに,少しお話しできればと思う。

企業法務総合

難局を突破するポイントとは
外資系グローバル企業の実践例
野口裕理子

言語,ガバナンス,契約交渉の進め方――外資系グローバル企業が直面する日本企業とのさまざまな違いは,これら当事者間の契約交渉を時に難局に陥らせる。最前線で交渉を加速し,同時に社内手続の履践を支援する法務部門のあり方を紹介しつつ,予想外のアグレッシブなアンカリングやデッドロック等,難局の突破方法を検討する。

企業法務総合

にんげんだもの
廣瀬 修

ある時は法務部門に助けられて事業を推進する事業部門社員として,またある時は事業部門をサポートする法務部門社員として,さまざまな交渉の場に身を置いてきた。そのなかで印象的だった事例を,「学び」を得たケースとしていくつか紹介したい。

地平線
バブル世代と資本主義論
企業法務総合

井上 卓

昭和世代―さしあたり戦後昭和の時代に成人を迎えた人としておこう―は,「資本主義論」が好きである。私は,その昭和世代のなかでも,しんがりに属するバブル世代である。バブル世代が大学生であった1980年代には,まだ「ソビエト社会主義共和国連邦」という,社会主義を標榜する超大国が厳然として存在しており,大学の経済学部では,マルクス経済学(マル経)と近代経済学(近経)が,その勢力を二分していた。そんな時代だから,西側陣営に属する日本にとっては,「資本主義論」は切実な問題だった。

Trend Eye
暗号資産の法的位置づけと金商法改正の見通し
金商法・資金決済法

佐藤有紀・橋本泰樹・斎藤 創

暗号資産または仮想通貨(以下,単に「暗号資産」という)は,これまで主として資金決済に関する法律(以下「資金決済法」という)において法整備されてきたものの,暗号資産をめぐる状況は変化を続けている。国内において暗号資産交換業者による口座開設数は延べ1,200万口座を超え,利用者預託金残高は5兆円以上に上っており,暗号資産に対する国民の投資対象としての認識が広まっている。反面,詐欺的な投資勧誘も多数発生しており,現在,令和8年法改正による環境整備が議論されているところである。本稿では,暗号資産の法的位置づけについて,現在の法制度,および改正の見通しについて概説する。

実務解説
職場における熱中症対策義務化への対応
労働法

益原大亮

今般,厚生労働省において,労働安全衛生規則が改正され,職場の熱中症対策が義務化されることとなった(2025年4月15日公布,同年6月1日施行)。本稿では,職場の熱中症対策の義務化について,その内容とそれに対する事業者の対応について解説する。

企業法務総合

有価証券報告書の総会前開示をする際の留意事項
林 良樹

金融庁の要請を受け,本年6月総会における有価証券報告書の総会前開示は増加し,その多くは前日に開示される予定である。他方,望ましいとされる3週間前開示は少数派にとどまった。今後は,基準日変更等による株主総会後倒しや事業報告等との一体的開示なども視野に入れ,総会前開示をより効果的なものにしていくための体制の構築が望まれる。

会社法

外部弁護士管理ガイドラインを生かした顧問弁護士との価値共創
水戸貴之

社内外の環境変化を受け,顧問弁護士との関係性を再構築する必要性が高まっている。欧米企業で広く採用されている外部弁護士管理ガイドラインを参考に,改善に向けたアプローチを提案する。

特集2
報告書をふまえた
会社法改正に向けた7つの視点
企業の積極的な成長戦略を促すための制度環境整備を進める必要性が叫ばれている昨今の事情をふまえ,会社法についても見直しが求められています。そうしたなか,公益社団法人商事法務研究会の会社法制研究会において会社法の見直しに向けた検討が始められ,2025 年2月に会社法制研究会報告書の案,そして4月には正式に報告書の公表がなされたところです。そこで本特集は報告書の記載をふまえ,改正に向けて注目したい7つのポイントを会社法制に詳しい専門家に,実務的視点をふまえ解説いただきました。
会社法

総論――会社法改正の論点
田中 亘

公益社団法人商事法務研究会の会社法制研究会は,2025年4月に,会社法の改正のための検討事項をまとめた報告書を公表した。今後,報告書で挙げられた事項を中心に,法制審議会の会社法制(株式・株主総会等関係)部会で,会社法改正のための検討が進む見通しである。本稿は,従業員等に対する株式の無償交付,株式交付制度の見直し,現物出資規制の見直し,バーチャルオンリー株主総会の解禁,実質株主確認制度の創設など,報告書が挙げる改正検討事項を紹介し,若干の論点については私見も述べる。

会社法

従業員等に対する株式の無償交付
水越恭平

国内外の優秀な人材の獲得・維持,エンゲージメントの向上等の観点から,企業における株式報酬の付与が拡がるなかで,自社の取締役だけでなく,その従業員や子会社の役職員に対して,金銭の払込みを要しない無償での株式の交付を認めるための会社法制の見直しの議論が始まっており,既存株主の利益保護とのバランスや対象者・対象会社の範囲がどのようなものとなるかが注目される。

会社法

株式交付制度の見直し
中嶋隆則

株式交付制度については,スタートアップ等による利用の促進,株式対価M&Aの活性化といった実務上のニーズを念頭に,制度の見直しが検討されている。本稿では,株式交付の組織再編行為としての性質や現物出資との関係,令和元年会社法改正の際にも議論された制度的安定性の要請等をふまえ,株式交付の活用範囲の拡大および手続の簡素化に関する提案の概要を説明する。

会社法

現物出資規制の見直し
峯岸健太郎・大草康平

現物出資規制がスタートアップ企業に対する知的財産権等の現物出資の支障となっているとの指摘をふまえ,検査役調査制度の緩和と,引受人・取締役等・現物出資財産の価額相当性の証明者の不足額填補責任の見直しが議論されている。本稿ではその要点と規制緩和の意義について簡単に解説する。

会社法

バーチャル株主総会およびバーチャル社債権者集会
森田多恵子

会社法にバーチャルオンリー型株主総会およびハイブリッド出席型株主総会ならびにバーチャル社債権者集会に関する規律を新設することが検討されている。ハイブリッド参加型株主総会は,特別の規定を設けず,従来通りの解釈の下で実施可能と考えられる。本稿では,バーチャル株主総会実施の要件,株主の質問権,動議の提出権,および決議取消事由に関する提案を中心に概要を説明する。

会社法

実質株主確認制度
渡辺邦広

報告書は,実質株主確認制度について,会社が,名義株主→指図権者→その背後の指図権者と遡って実質株主に係る情報を確認することを基本としつつ,情報提供請求権の実効性確保の手段や会社側の調査義務の有無等において異なる3つのモデル案を掲げている。法制審議会の議論を経てどのような規律が採用されるかは,制度趣旨の整理を含む理論面のみならず,実際の情報提供請求の簡易迅速性を含む実務面にも左右されると思われる。

会社法

株主総会のあり方に関連する見直し
松山 遙

事前の議決権行使によって株主総会決議があったものとみなす制度の創設については,対象範囲を検討する必要がある。事前の議決権行使によって株主総会決議があったとみなすだけでなく,株主総会の開催を要しないとすることについては,難しい課題があると考えられる。
会社法319条1項の要件およびキャッシュ・アウトに関する制度の見直しについては,慎重な検討が必要である。

会社法

指名委員会等設置会社制度の見直し
青野雅朗

会社法制研究会報告書においては,指名委員会等設置会社制度の見直しも俎上に上がっている。取締役の過半数が社外取締役である場合における指名委員会の権限の見直しの要否の論点を中心に,見直し議論の背景や今後の展望を解説する。

特別企画
JILAインハウス・リーガル・アワード
受賞者が語る法務部門の革新への挑戦
第2回目となる2024年度JILAインハウス・リーガル・アワードでは,以下のとおり,各企業・およびインハウスロイヤーが受賞しました。本企画では,そんな受賞者の方々が自社での取組みや今後への展望について語ります。どんな課題・取組みが考えられるか,ぜひ参考にしてみましょう。
企業法務総合

JILAアワードの広がりと今後への期待
坂本英之

JILAは,組織内弁護士および企業等の法務部門を対象とした第2回アワードを2024年度に実施した。本アワードには数多くの企業および組織内弁護士から応募があり,このなかから特に優れた実績を挙げた企業等に賞を授与した。本特集により受賞者のベストプラクティスを共有したい。

企業法務総合

QVCジャパン法務部門の業務改革
西岡志貴

QVCジャパン法務部門は,抜本的な業務改革に取り組み,その成果はJILAインハウス・リーガル・アワードで高い評価を受けた。その取組みの一部を紹介するとともに,法務部門としてもっとも大切にしている価値観にも言及する。

企業法務総合

リーガル重視のカルチャーとフロントライン法務の実践
早野述久

リーガル重視のカルチャー形成,効果的なワークスタイル,社内コミュニケーションの活性化,フロントライン法務の実践が相互に作用することで,法務部が高いパフォーマンスを発揮できる環境を実現。

企業法務総合

ビジネスパートナーと生成AI
宮川昌久

2024年度JILAアワードにて特に高く評価頂いた生成AIへの取組みについて,当社法務部の目指すべき姿として掲げている「ビジネスパートナー」の観点から,当社の取組みおよび今後の展望を紹介する。

企業法務総合

選手にも,コンプライアンスの取組みを
中込玲奈

昨年に引き続き今回も地方団体賞をいただいた。今回はガーディアン機能,特にコンプライアンスの取組みを中心に応募させていただいたことから,主としてコンプライアンスについて当社の取組みを紹介したい。

企業法務総合

AI時代にいっそう輝く企業内法務の経験
今仲 翔

このたび,ありがたいことに2024年度JILAインハウス・リーガル・アワード インハウス賞総合賞を受賞した。2021年より企業内弁護士として試行錯誤を続けてきた身としては,このようなアワードをいただくことは大きな励みとなった。本稿では,これまでの経験を振り返りつつ企業内法務担当者が何によって高い評価を受けるのかを考察し,それをふまえた今後の展望について述べさせていただく。

企業法務総合

AIにも外部にもないインハウスとしての価値とは
平川真澄

正解なき現場の最前線で,一次情報と現場の声を武器に,制度と実務のギャップを越え"誰よりも泥臭く"が成果を生んだ半年間。

企業法務総合

公正取引委員会における企業コンプライアンス向上に向けた取組み
川島広己

目の前の競争に正面から向き合うことが企業の持続的な成長・発展につながっていく。公正取引委員会では,企業コンプライアンスの支援に取り組んでおり,任期付職員として同支援業務を担当した経験について述べる。

企業法務総合

全方向型の法務の実践へ
吉永公平

行政職のみならず,教員・保育士・消防職員・医療職に対しても,分野ごとの庁内報を発行し,全方向型の法務を実践する。法律相談,職員研修に加え,庁内報の発行をピラミッド型の法務能力養成方式として組み込む。

時事を斬る
消費者保護を主眼とした情報開示のあり方
──紅麹サプリメント問題・異物混入事例をふまえ
消費者関連法

八代英輝

近年,いわゆるB2C企業(消費者を対象とする事業を展開する企業)はさまざまな不祥事リスクに直面している。バイトテロや異物混入といった消費者の安全・健康を脅かしかねない事案はその最たるものといえよう。SNSが高度に発達した今日,企業は情報の拡散速度も考慮しつつ,迅速かつ適切な広報によって難局に対峙することが求められる。しかし,現実をみると,小林製薬の紅麹サプリメント問題やすき家の異物混入問題のように,情報開示の遅れや不正確な広報が消費者の不満を増大させる結果となるケースが続いている。

連載
【新連載】
法と人類学―法がつくられるとき―
第1回 法人類学とは何か?
企業法務総合

原口侑子

本コラムでは,「法人類学」という分野について,東南アジアを舞台に法律実務を行う藪本雄登,アフリカを舞台に法人類学研究を行う原口侑子の雑談的な交換コラムを通じて,現代のグローバル資本主義社会において「法とは何か」について考えてみたいと思います。第1回は,イギリス・ロンドン大学(SOAS)博士課程で法人類学研究を行う原口から導入として「法人類学とは何か?」を紹介し,第2回以降では,「法のあり方」をめぐるアジア,アフリカの実践や事例を紹介していきあます。

ファイナンス

【新連載】
投資契約における条項規定の再検討
第1回 投資の基本的条件と払込みの前提条件
石田 学・山下真幸

「スタートアップ育成5か年計画」が2022年に策定されるなど,官民含めスタートアップに対する投資の活性化に注目が集まっている。投資契約のモデル条項等を解説する書籍は,近年刊行されているが,実際にどのように契約交渉を行えばよいか,落としどころはどこかという情報は,必ずしも豊富とは言い難い状況にあると思われる。そこで,具体的な条項例を用いつつ,どのような着眼点で投資契約の交渉を行うべきかを解説したい。なお,紙幅の関係から網羅的な解説はできず,筆者が重要と考える条項に絞っている。
連載は全4回にわたり,①投資の基本的条件と払込みの前提条件,②発行会社の運営,③株式の移動等,④投資の撤退等に分けて解説する予定である。第1回は,投資の対象となる種類株式の内容や,投資時の発行会社(スタートアップ)の表明保証などに関する投資契約の交渉例を取り上げる。

企業法務総合

【新連載】
統合報告書の実例から見解くコーポレート・ガバナンス
第1回 総 論
天野正人

企業経営の目的は企業価値の向上であり,企業価値の向上は,株主価値の最大化によって実現される。株主価値の最大化は,株価の上昇により実現される。株価の上昇は成長期にある企業にとりほぼ唯一の株主価値最大化の指標と考えてよい。

企業法務総合

【新連載】
法律事務所をフル活用しよう!
専門弁護士に聞くAI時代の新常識
第1回 法務部門と法律事務所の新しい関係構築
金子晋輔

全6回連載の全体像を示す。AI時代において法務部門と法律事務所の新たな協働の形を模索するために,架空ケーススタディと読者参加型という新たな試みを行う。事業成長を求める企業が直面するM&A,広告規制,危機管理,データ管理といったテーマについて,専門弁護士がそれぞれ執筆を担当する。本連載では,生成AIの台頭で法務の役割が急速に変化している現状において,法律事務所との新たな協働のあり方を考察する。

知財

【新連載】
特許ライセンスのオーラルヒストリー
第1回 半導体ライセンスの歴史
名倉孝昭

筆者は,国内半導体メーカーの知的財産部に勤務しており,1990年ごろから現在に至るまでの約35年にわたり多くの半導体ライセンスに携わってきた。本稿では,筆者が経験し見聞きしてきたことを述べることで半導体ライセンスの風景のようなものを感じていただければ幸いである。本稿のテーマが「半導体ライセンスの歴史」なので,まずその対象となる半導体技術および特許について簡単に触れ,そのあとにライセンスについての議論を進めたいと思う。

企業法務総合

LEGAL HEADLINES
森・濱田松本法律事務所外国法共同事業編

2025年4月,5月の法務ニュースを掲載。

■最高裁,地方公共団体が経営する自動車運送事業のバス運転手に対する懲戒免職処分に伴う退職手当等の全額不支給処分を有効とする判決
■東証,「少額投資の在り方に関する勉強会報告書」を公表
■環境省,「グリーンプロジェクトに寄与する事業の考え方」を公表
■環境省,「日本企業による環境デュー・ディリジェンス対応促進に向けた懇談会議論のまとめ」を公表
■経産省,「『稼ぐ力』のCGガイダンス」を公表
■金融庁,「事業性融資の推進等に関する法律施行令(案)」等を公表
■消費者庁,「買取サービスに関する実態調査報告書」を公表
■経産省,「肖像と声のパブリシティ価値に係る現行の不正競争防止法における考え方の整理について」を公表
■米中による関税引下げの合意
■改正下請法の成立
■能動的サイバー防御関連法の成立
■対内直接投資等に関する政令等の改正施行

労働法

最新判例アンテナ
第85回 請負契約を締結している個人作業者につき,労働組合法上の「労働者」 性が認められ,かかる作業者が加盟等する労働組合からの団体交渉の申入れ拒絶が,不当労働行為と認定された事例(東京高判令6.11. 6労判1324号5頁)
三笘 裕・江坂仁志

X社と請負契約を締結し,メーター取付工事等に従事していた個人作業者Aが加盟等する労働組合(以下「補助参加人ら」という)が,X社に対し団体交渉を申し入れたところ,X社は,Aが同社と労働契約を締結している従業員ではないとしてこれを拒絶した。なお,Aは,副業等を禁止されておらず,報酬を事業所得として確定申告していたほか,コロナ禍における事業者支援対策の持続化給付金も受給していた。

テクノロジー・AI

〈業種別〉テクノロジー法務の最新トピック
第4回 ヘルスケア・ライフサイエンス
殿村桂司・小松 諒・鳥巣正憲・滝沢由佳

近年の生成AIの普及にみられるように,新たなテクノロジーの活用はあらゆる業種において急速に進んでおり,それに付随して業種ごとに異なる新規かつ複雑な法的問題が生じ,また,各国における法制度の見直しも急ピッチで進められている。本連載では,テクノロジー法務を扱う弁護士が,各業種について知見を有する弁護士とともに,業種別のテクノロジー関連の最新トピックやそれらを検討する際の実践的な視点を紹介する。
第4回は,ヘルスケア・ライフサイエンス業界について取り扱う。

企業法務総合

Airbnbで学んだ「法務の時間術」6つの金貨
第4回 「Single Source of Truth」は時間のお守り
渡部友一郎

法務部が証拠(人証・物証)に基づく事実認定を得意とすることから,同じ説明を繰り返し求められるのは「法務あるある」といえるでしょう。異なる部門から同じ件について異なる疑問が次々と寄せられ,部分的に誤った情報が広がることで誤解が拡大します。その結果,「その情報は違います」と修正を繰り返し,最終的には関係者全員を集めて「認識合わせ」を行うなど,時間の浪費が生じます。

企業法務総合 民法・PL法等

基礎の基礎から始める要件事実・事実認定の徹底的入門
第2回
第1章「 基礎の基礎」を考えるときに必要な心構え
第2章 要件というものはどういうものか
第3章 単に「要件」ではなくて,なぜ要件「事実」というのか
伊藤滋夫

本連載は,要件事実・事実認定の考え方を「基礎の基礎」から考えることを目的としています。「基礎の基礎から考える」という方法は,普通に基礎理論を学ぶというのとどこか違っているのでしょうか。

企業法務総合

悔しさを糧に――学べば開ける☆
第17話 弁護士をしながら本の執筆も始める
木山泰嗣

中学教員のアンリ・ファーブルが,休日を利用してまとめた論文を発表したのは33歳。高い評価を受け実験生理学賞を受賞します。世界的名著『昆虫記』は56歳のときに書かれました。51歳の誕生日に『大器晩成列伝』(真山知幸著, ディスカヴァー・トゥエンティワン,2025)を読み知りました。子どものころ夢中で読んだことを思い出しました。

知財

言語学の観点からみる商標実務
第2回 短縮語における商標の識別力
齊藤範香・五所万実

「朝活」「終活」「ラン活」──近年,「○○活」や「○○ペイ」といった短縮語が次々と登場し,商標としての出願や登録も相次いでいる。耳慣れない語でも意味が伝わりやすいこれらの短縮語は,伝わりやすさゆえに,なかには商標として独創性に欠ける語もあるように思われる。本稿では,こうした短縮語にみられる言語的特徴が,商標の識別力にどのように作用するのかについて,言語学の視点からひも解いていく。

企業法務総合

企業法務担当者のための「法的思考」入門
第5回 エージェンシー問題
野村修也

株主と経営者は,委託者(プリンシパル)と代理人(エージェント)の関係にある。そこには,両者の目的の不一致(エージェンシー問題)と情報の非対称性に起因してモラル・ハザードが生ずるが,会社法は,それにどのように対処しているのだろうか。

企業法務総合

「eスポーツビジネス」法的論点と対応
第5回 eスポーツにかかわるビジネス
西方夏樹・横山裕一

本稿では,これまでの連載記事で論じられた大会運営以外のビジネスモデルについて,いくつか実例を紹介し,その法的なリスク等を分析検討する

国際 税務

テーマ別「インバウンド法務」の勘どころ
第3回 契約締結の方法と源泉徴収
増山 健・金 大熾・木村浩之

本連載では,インバウンド法務を日々取り扱う弁護士らが,対談形式でテーマごとに案件の特徴や問題点等について語る。今回は,外国人や外国企業と契約を締結する場合における,国内企業同士の契約とは異なる留意点や,外国企業等との契約に特有の確認事項などを取り扱う。

特別収録
ビジネス実務法務検定試験® 2級演習問題
企業法務総合