雑誌詳細

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2023年11月号

2023年9月21日発売号   1,800 円(税込)

特集1

生成AIの法的ポイントと内部規約を検討する

特集2

消費者契約法改正後の実務点検

特集3

「いつか出会う」に備える
不動産事件簿

特集1
生成AIの法的ポイントと内部規約を検討する
技術の急速な発展に伴い,AIも実用に堪え得る性能を持つようになってきました。特に,プロンプトを入力することで文章や画像を生成できる「ChatGPT」「Midjourney」をはじめとする「生成AI」はさまざまな用途への活用が可能であり,今後の業務の効率化等にあたり避けて通ることができない技術といえます。
一方で,生成AIに関係する法的問題の検討はまだまだこれからであり,使用にあたっての内部規約の検討もその前例の少なさから困難であろうと思われます。
そこで,本特集では生成AIの法的問題と内部規約について事例ごとに検討します。
テクノロジー・AI

内部規約作成のためのチェックリスト
古川直裕

ChatGPTをはじめとする生成AIの適切な利活用のため社内規定を制定する動きが盛んになっている。本稿では,そのような社内規定において定めるべき事項のチェックリストを提供する。

テクノロジー・AI

ユースケースにみる
AIコンテンツ生成に対する内部規約の要点
福岡真之介

生成AIを利用してコンテンツを生成し,そのコンテンツを利用する場合の内部規約について,3つのユースケースを基に,どのように規定すべきかについて取り上げる。

テクノロジー・AI

Chat Botサービスを運営する場合の留意点
柴山吉報・伊澤貴寛

Chat Botの利用にあたっては,当該サービスに用いられる技術の内容やデータの流れなどを確認したうえで,データに含まれる個人情報等が適切に取り扱われるようにすべきである。本稿では,かかる検討に必要なChat Botの技術面およびデータの取扱い等についての解説を行う。

テクノロジー・AI

文書要約または文書作成に関する社内ルールの整備
岡田 淳・堺 有光子

事業者が,さまざまなテキストデータ(社内文書,対話テキスト,ウェブページ,ニュース記事,書籍等)の要約や,見出しやキャッチコピー等の生成,ウェブ会議の議事録作成などを行う目的で文章生成AIを利用する場合には,機密情報,個人情報,著作権といった観点から留意すべきリスクも少なくない。本稿では,これらの具体的なユースケースを念頭に置きつつ,社内ルールを構築する際に法的観点から特に留意すべき事項について検討する。

テクノロジー・AI

AIによるコード生成とシステム開発委託契約の関係性
古川直裕

コード作成やプログラミングは,ChatGPTなどのテキスト生成AIの影響を大いに受ける分野と考えられており,生成AIの利用が最も進む分野の1つと考えられる。本稿では,システム開発委託契約と生成AIを利用したコード作成の関係を議論する。

テクノロジー・AI

生成AI利用における個人情報保護
清水音輝

近時,個人情報保護委員会が生成AIサービスの利用に関する注意喚起を行った。個人情報に関する業務に関して生成AIサービスを利用する場合,個人情報保護の問題が生じるところ,本稿では,個人情報保護委員会による注意喚起と個人情報保護法の関係について検討する。

テクノロジー・AI

コラム AIによる生成表現の「著作物性」
奥邨弘司

AIが生成する表現が著作物となるか否かは,AIが自律的に生成したのか,それとも,人間がAIを道具として使用して創作したのかで判断が分かれる。両者を区別する鍵は,創作的寄与の有無となる。日米ともに基本的な考え方に大きな差はない。

地平線
いま求められる労働対価のかたち
――多様な働き方に適する非金銭的報酬とは
労働法

佐藤博樹

労働力不足への対応のために人材確保力の向上や,物価上昇に対して社員の生活水準を維持するために,初任給や在職者の賃金水準の改善に取り組む企業が増えている。こうした結果,2023年の春季賃上げでは,民間企業の賃上げ率が3.60%となり,1994年の3.13%以来,3%を超える水準となった。また,パートタイム・有期雇用労働法による無期労働契約の正社員と有期労働契約の非正社員の間の不合理な処遇格差の解消(基本賃金,手当,賞与,退職金など)の取組みや最低賃金の引上げへの対応などによって,非正規社員の賃金水準も上昇している。

Trend Eye
これから企業が生物多様性について求められること
サステナビリティ・人権

足立直樹

最近,ビジネスの現場で生物多様性という言葉をよく耳にするようになった。理由はいくつかあるが,企業が最も注目しているのはTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)だろう。TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)を通じて企業が事業活動と気候変動関連の情報開示が求められるようになったように,事業活動と生物多様性に関する情報開示が,現在策定中のTNFDを通して求められると予測されるのだ。

特集2
消費者契約法改正後の実務点検
令和4(2022)年に消費者契約法が改正され,本年6月1日に施行されました。今般の改正では,8条3項の新設により「サルベージ条項」が無効とされるなど,実務上の見直しを要する点が少なくありません。また,事業者の各種対応におけるいわゆる努力義務が拡充されましたが,そもそも努力義務はどこまで遵守すればよいか,という疑問が浮かぶのではないでしょうか。

オンラインビジネスにおける注意点も解説した本特集で,令和4年改正の点検を行いましょう!
消費者関連法

令和4年改正の概要と企業対応における要点
増田朋記

平成28(2016)年および平成30(2018)年に行われた消費者契約法の改正に引き続き,同法は令和4年通常国会においても改正が行われ,同改正は令和5年6月1日より施行されている。このような改正を契機として,勧誘のあり方や契約条項の見直しなど企業実務の点検が必要となるところ,本稿では,令和4年改正の背景や概要をまとめたうえで,とりわけ実務的な観点から求められる対応のポイントについて解説する。

消費者関連法

サルベージ条項規制をふまえた免責条項の見直し
加藤真朗・金子真大・川岡倫子

令和4年消費者契約法改正(以下「令和4年改正」という)により,いわゆる「サルベージ条項」等,事業者の損害賠償責任を一部免除する条項であって,その適用範囲が軽過失のみに適用されることを明らかにしていない免責条項を無効とする,新たな不当条項の規律が設けられた。そこで,本稿では,令和4年改正や近時の裁判例の傾向をふまえ,架空の規約例を題材として,免責条項の見直しのポイントを紹介する

消費者関連法

努力義務規定の意義と事業者に期待される役割
大澤 彩

令和4年の消費者契約法改正で,同法に複数の努力義務規定が追加された。努力義務規定には法的効果が定められていないが,努力義務規定追加に至る法改正論議をみると,事業者に対して「情報提供」以上の一定の行為が求められていることがわかる。本稿では,令和4年改正で追加された努力義務規定の意義を,特に事業者に求められる行為や,将来の立法・自主規制のあり方をふまえて論じる。

消費者関連法

改正法の理解につながるEコマース事例4選
土田泰弘

令和4年改正消費者契約法は,Eコマース事業者が検討すべき重要な事項を含んでいる。たとえば,利用規約上の損害賠償の一部免除を規定する条項はこの改正に対応しないと無効となる。本稿では,事例を用いつつ改正内容を解説するとともに対処方法を提案する。

消費者関連法

改正法に対応する利用規約整備のポイント
阿久津 透

大量の取引を迅速かつ安定的に行うため,利用規約を作成する際には自然と事業者側に有利な条件を定めることが多い。ユーザーに損害が生じた場合の免責や,「○○とみなす」等の一定の条項は,消費者契約法上無効となるリスクをはらんでいるため注意が必要である。本稿では,令和4年改正消費者契約法で追加された条項にも触れつつ,利用規約の作成担当者が注意すべきポイントを整理する。

特集3
「いつか出会う」に備える
不動産事件簿
筆者らは,依頼者が所有,管理または賃借する不動産に係る相談や裁判への対応を日々行い,これまで数多くの「事件」と出会いました。その一部を,基本的な事項の解説も加えながら「事件簿」としてご紹介します。
企業法務総合 争訟・紛争解決

契約不適合責任に基づく損害賠償請求事件
――土壌汚染が判明した場合の対応
大久保由美・石川智史

購入する土地の土壌から,または,買収する会社の所有する土地の土壌から,有害物質が検出された場合にはレピュテーション上の問題があるとして,その対応について企業から相談を受けることが以前よりも増えている。本稿では,購入した土地の土壌から有害物質が実際に検出されたという「事件」への対応を検討したい。

企業法務総合 争訟・紛争解決

相隣関係事件
――令和3年の民法等改正をふまえて
大久保由美・石川智史

令和3年の民法等改正により,相隣関係の規定が大幅に改正された。本稿では,このうち,隣地使用権の改正内容を概観したうえで,囲繞地通行権に係る「事件」への対応について,裁判例をふまえて検討したい。

企業法務総合 争訟・紛争解決

賃料減額請求事件
――借地借家法の適用有無と請求の可否
大久保由美・石川智史

建物賃貸借契約は長期にわたることから,建物を賃貸借する企業から賃料増減額請求についての相談,調停,訴訟対応の依頼を受けることが多い。賃料増減額請求については多数の判例が集積しており,それらをふまえた対応が欠かせないが,本稿では,借地借家法32条の適用の有無と適用された場合の請求の可否に絞り検討したい。

企業法務総合 争訟・紛争解決

所有権確認請求事件
――真の境界が判明した場合の対応
大久保由美・石川智史

一般に,企業は,所有している土地について,隣接地所有者との間で境界確認書を締結している。本稿では,境界確認書で確認した境界と異なる線が真の境界であることが判明したという「事件」への対応について,境界に係る基本的な概念,判例を挙げながら検討したい。

企業法務総合 争訟・紛争解決

賃料滞納事件
――建物明渡しの早期実現に向けて
大久保由美・石川智史

不動産賃貸に携わっている企業においては,賃料不払いが生じた場合に,賃貸借契約の解除,訴訟提起および強制執行を経て建物明渡しを実現すべきことは,基礎的な事項に属すると考えられる。かかる建物明渡しは,未払い賃料額が嵩むことを避けるために早期に実現すべきものであるから,本稿では,諸手続に要する期間という点に着目して,一連の実務対応を概観したい。

企業法務総合 争訟・紛争解決

建物外壁タイルの剥落事件
――不動産危機管理としての工作物責任
大久保由美・石川智史

ビル等の建物の瑕疵に起因して何らかの事故が発生した場合,建物の所有者や占有者は,民法717条1項の工作物責任を追及される訴訟の被告となる可能性がある。建物の所有等に伴うリスクをあまり意識していない建物オーナーも少なくないと思われるが,本稿は,不動産の危機管理の1つとして,建物にかかる工作物責任の理解を深化させることを目的とするものである。

企業法務総合 争訟・紛争解決

原状回復費用請求事件
――事業用建物における通常損耗を中心に
大久保由美・石川智史

同じ建物賃貸借でも,マンションやアパートのような居住用建物と,オフィスや店舗のような事業用建物とでは,問題となる事情が異なることから,民事紛争では事業用建物の特殊性が主張されることがある。その一例として,本稿では,原状回復義務をテーマとして,事業用建物の賃貸借契約の留意点について検討したい。

企業法務総合 争訟・紛争解決

孤独死問題
――心理的瑕疵に関する近時の動向を含めて
大久保由美・石川智史

不動産における人の死は,不動産を所有・管理する企業にとって避けられない事態の1つといえる。また,不動産業界では,心理的瑕疵の問題が長年の懸案事項であり,この点に関して国土交通省は2021年10月に「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を公表した。本稿では,当該ガイドラインをふまえ,高齢化に伴い社会問題となっている「孤独死」を念頭に置いて,法的問題を検討したい。

実務解説
2023年6月総会レビュー
――総会資料電子提供制度の初年度を迎えて
企業法務総合

飯塚 元・西口阿里沙

本稿では,各種公開資料のほか,みずほフィナンシャルグループにおける証券代行業務の受託会社を対象とする調査結果に基づき,2023年6月に開催された株主総会(以下「本年6月総会」という)の概況を説明するとともに,今後の株主総会の方向性・展望等について検討したい。

企業法務総合

企業法務につながる「相続登記の申請義務化」
藤田正人

所有者不明土地対策の一連の民事法改正は企業法務にさまざまな影響を及ぼすが,その中でも,2024年4月1日から始まる相続登記の申請義務化は,相続という家族間の問題であるものの,これを契機に,遺産分割・登記申請の促進やそれに伴う全国の不動産取引・流通の効果が期待されている。企業法務関係者が「知っているが,詳しくない」となりがちな新制度のポイントを,企業法務の観点から解説する。

コンプライアンス

企業が贈賄を要求された際にとるべき対応とその準備
安田博延・三村まり子・木曽 裕・河江健史

本稿は,2023 年4月17 日,日本CSR普及協会が開催したウェビナー「企業犯罪の有事対応と平時の体制構築~国内外贈賄事件を中心として~」に基づき,パネリストらが,公務員から賄賂を要求された企業の法務部における現実的対処を論じるものである。

競争法・独禁法

令和4年度主要企業結合事例にみる公取委の審査基準の動向
石垣浩晶・金子直也・矢野智彦・益田 拓

令和4年度の主要な企業結合事例をみると,独禁法上の企業結合規制の傾向には大きな変化はないが,独占や複占となる市場でも問題がないという判断が示されている事案があり注目に値する。垂直型企業結合における市場閉鎖の懸念については,水平型企業結合と同様に定量的な分析に基づく判断が行われる実務がさらに浸透しており,間接ネットワーク効果による競争制限の懸念についても,市場閉鎖や潜在的競争の喪失といったさまざまな観点からの検討が行われるようになっており,エコノミストによる関与の必要性が高まっている。

企業法務総合 消費者関連法

ガチャの誤表示,サービス終了が争点に
スマホゲームの運営に関する近時の重要裁判例
前野孝太朗

スマホゲームの運営においては多様な法律上の留意事項が存在する。本稿では,既存の留意事項は他の論稿に譲り,解説等が少ないであろう近時の注目すべき裁判例2つ(ガチャの誤表示に関する返金請求・サービス終了に伴う返金請求)を紹介し,各裁判例をふまえた留意事項を検討したい。

労働法 情報法

サイバーセキュリティ対策を目的としたログ管理の法的留意点
――労働法を中心として
山岡裕明・町田 力・星野悠樹

企業の内部関係者がかかわるサイバー攻撃が増加傾向にあるなか,サイバー攻撃対策として従業員貸与のPC(社用PC)の詳細なログを収集・監視することの重要性が高まっている。もっとも,従業員のモニタリングに関する労働法上の従来の議論をふまえると,社用PC のログ監視にあたり従業員のプライバシーへの配慮が必要となる。実務上の対応としては,ログ監視に関する社内規程の策定および従業員への周知,管理責任者の任命,運用の定期的な確認等が重要である。

連載
【新連載】
その広告大丈夫?
法務部が知っておくべき景表法の最新論点
第1回 No.1表示
競争法・独禁法

渡辺大祐

不当景品類及び不当表示防止法(以下「景品表示法」という)は不当な景品類および不当な表示について規制する法律であるところ,その適用範囲は広く,広告・宣伝業務に携わる実務家は,その規制内容を正確に把握する必要がある。また,景品表示法違反による措置命令・課徴金納付命令はたびたび報道されており,世間の注目度も高い。本連載では,近時特に注意すべき論点について,設問を用いながら解説をしていく。

国際 争訟・紛争解決

【新連載】
海外契約条項の「知らない世界」
第1回 多段階紛争解決条項(MTDR条項)
辰野嘉則

海外企業との英文契約をドラフトまたはレビューしていると,日本国内の契約では見かけない条項を目にすることがあるのではないか。そういった海外契約条項の中には,わが国の法制度のもとでは使いにくいものがある一方,わが国でも十分に実用に足り利活用の可能性を秘めているものがある。本連載では,紛争解決からESG,AI,人権等の最新のトピックまで分野横断的に,海外における興味深い契約条項を紹介する。初回となる本稿では,いわゆる多段階紛争解決条項(MTDR条項)を取り上げる。

企業法務総合

LEGAL HEADLINES
森・濱田松本法律事務所編

企業法務総合

最新判例アンテナ
第64回 差押命令の送達前に第三債務者が債務者との間で被差押債権の支払いのために電子記録債権を発生させた場合,送達後にその電子記録債権が支払われたときは,第三債務者は債務の消滅を差押債権者に対抗できるとした事例(最決令5.3.29裁判所ウェブサイト等)
三笘 裕・杉本直之

X(債権者) は,2021年11月, Y(債務者)に対してXへの金員の支払いを命ずる旨の仮執行の宣言を付した判決(以下「本件判決」という)を債務名義として,YのZ(第三債務者)に対する売掛債権について差押命令および転付命令(以下あわせて「前件転付命令等」という)を得た。前件転付命令等はYおよびZに送達され,その後確定した。

企業法務総合

怒れる弁護士「アンガーマネジメント」を学ぶ。
最終回 怒りの連鎖を断ち切ろう
宮山春城

駅で電車を待っていたら,向かいのホームで若い女性が何やらニヤニヤしていることに気づきました。少し気味が悪いなと思い視線をそらした先でスマートフォンを操作している男性が不機嫌そうに「ちっ!ふざけんなよ!」と悪態をついているのを目にして,なぜかこちらまでイライラしてしまいました。

企業法務総合

いまでも覚えています あの人の「法務格言」
第2回 「ダイソンよりもルンバを目指せ」
斎藤輝夫

この言葉をGEのインハウス・カウンセル時代に某組織のヘッドから聞いた時,??のマークが頭上に点滅しました。家事もろくにしない昭和のおじさんにはぴんとこなかったからです。しかし,その意(ココロ)を聞いて納得しました。これは,法務部門がハイレベルな法務機能を発揮するための部員の心構えについて,ユーモアを交えながらも核心をついた名言ではないかと。

企業法務総合

キャリアアップのための法務リスキリング!
第3回 資格取得と社会人の勉強法
緒方文彦

忙しい社会人が勉強をすることはとても大変なことだと思います。学生のように自由な時間は簡単に確保できません。他方,リスキリングの一環で難関資格の取得を目指す場合には,一定のまとまった時間が必要です。では,何をどのように工夫すれば,社会人が難関資格を取得することができるのでしょうか。

会社法

IPO準備における会社法の基礎
最終回 監査役会の適切な運営
青野雅朗

本連載では,上場準備において比較的論点になりやすいトピックという切り口から,会社法の基礎を振り返ってきた。本連載の最後は,取締役会に劣らず会社運営上重要な機関である監査役会に関する論点について取り上げる。

テクノロジー・AI

Web3とコンテンツ産業の最新法務
第4回 ゲーム産業とWeb3
平尾 覚・稲垣弘則・松本祐輝・ 田村海人

暗号資産やNFTのようなデジタル空間の通貨や資産を取り扱うために用いられているブロックチェーン技術は,Web3を支える重要なテクノロジーであり,デジタルアイテムやゲーム内コイン等を活用するオンラインゲームと非常に親和性が高いとされている。実際に,ゲーム内のデジタルアイテム等にブロックチェーン技術を用いたブロックチェーンゲームは国内外で広がりをみせている。Play to Earnタイトル,すなわちゲームプレイによって利益を得られることで人気を博したAxie InfinityやSTEPNといったBCGはその好例であろう。

国際 争訟・紛争解決

アメリカ民事訴訟実務の基礎と留意点
第5回 情報を守るカギは秘匿特権(privilege)
奈良房永・笠継正勲

アメリカ法には秘匿特権という概念があり,訴訟において弁護士と依頼者間のやり取りについては開示の対象から除外する権利が認められている。米国民事訴訟ではディスカバリーで広範な証拠資料の提出が義務づけられているため,一定の情報をディスカバリーの対象から除外することを認める秘匿特権は訴訟戦略上極めて重要となる。本稿では,秘匿特権の内容を正しく理解し適切に利用するための留意点について解説する。

企業法務総合 金商法・資金決済法

PICK UP 法律実務書
『金融法務の理論と実践――伝統的理解と先駆的視点』
吉川 純

今日,金融関係の刊行物は,巷間にあふれている。最先端の金融工学の知見を駆使した専門書,業法の逐条解説,消費者救済の手引書等々,テーマ,想定読者等もさまざまである。その中で本書は,テーマの網羅性・横断性と,想定読者層の広汎性において,際立った特色を示している。

企業法務総合 サステナビリティ・人権

マンガで学ぼう!! 法務のきほん
第21話 ビジネスと人権
淵邊善彦・木村容子

近年,企業活動における人権の尊重に関する社会的な関心が高まり,法務部門にとっても重要なテーマになっています。

企業法務総合 民法・PL法等

基礎からわかる海事・物流の法務
第2回 海上運送契約の基礎知識
大口裕司

現代社会において,物流はなくてはならないインフラであり,そのなかでも船舶による運送の役割は大きい。船舶の輸送は,他の輸送手段に比べ,1度に大量の物品を遠くまで運べるからである。連載第1回では運送契約を学ぶ重要性を強調したが,連載第2回ではそのなかでも海上運送契約の個品運送に焦点を当てて解説する。以下の解説からもわかるように,商法には海上運送特有の規定が多くあることに注意してほしい。

知財

ファッションローへの誘い
第3回 ファッションの機能面の保護
西村雅子

先のコロナ禍においてユニクロの「エアリズム」(AIRism)ブランドのマスクが品薄になるほどの人気だったが,この製品は,「究極の心地よさを実現するジャパンテクノロジー」として「滑らかな着心地を実現する『繊維技術』」と「衣服内環境を整える『高い機能性』」により「まるで着ていないかのような着心地を実現」と説明されている(同社ウェブサイト参照)。今回は,ファッション製品の素材,製法,そこから生じる技術的効果などの機能面を,需要者が記憶しやすいように商標化し,機能的なデザイン(装飾美ではなく機能美)について意匠登録をするなど,特許も取得できる技術面をブランド化して,ファッションの機能面を保護することについて検討したい。

労働法 争訟・紛争解決

ストーリーでわかる 労働審判の基本
第6回 第1回期日②,第1回期日終了後の進行
福谷賢典・山下 諒

乙社の福岡事業所に3年間勤務し(1年の有期労働契約を2回更新),2022年12月末をもって雇止めとなった甲が,2023年4月,雇止めの無効を主張し,乙社を相手方として福岡地方裁判所に労働審判の申立てを行った。同年6月15日,第1回期日が開かれ,乙社からは,東京本社の人事部担当者,福岡事業所で甲の上司であったA1課長,および同事業所総務グループのBマネージャーが,代理人のY弁護士とともに裁判所に出頭した。期日当日は,労働審判委員会と,甲本人や乙社関係者との間で,質疑応答が繰り広げられた。

企業法務総合 国際

Introduction 宇宙ビジネス
第3回 月開発ビジネスとルール
――人類は再び月を目指す(後編)
大島日向・本間由美子・山崎臨在

本稿では,前回に引き続き,以下の月探査の仮想事例を用いて,各事例において問題となる法的論点を概説する。

特別収録
ビジネス実務法務検定試験 2級演習問題
企業法務総合