雑誌詳細

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2022年11月号

2022年9月21日発売号   1,700 円(税込)

特集1

業務委託契約の今日的課題

特集2

地政学リスクへの全方位対応

緊急座談会

グレーゾーン解消制度と弁護士法72条をひも解く
~直近3つの重要事例をふまえて

特集1
業務委託契約の今日的課題
業務委託契約は幅広く用いられており,企業の各部署で関わる可能性があります。また,近年の多様な働き方やコンプライアンス重視の流れから,これまでと異なるトラブルが起きることも想定されます。そこで本特集では,業務委託契約の押さえておくべき基礎から,契約書レビューのポイント,今日考えるべき各種ポイントを幅広くお届けします。
企業法務総合 労働法

契約書の見直しが必須
業務委託契約の進化と対応
長谷川俊明・前田智弥

昨今のコロナ禍は,個人の生活様式に大きな変化をもたらした。かかる変化は「デジタル化」と「リモート化」にまとめることができる。DX推進のための業務委託契約やギグワーカーとの業務委託契約など,新しいタイプの業務委託契約が普及した。他方,従来みられなかった法的トラブルも発生している。こうしたリスクを回避するために,民法改正に伴う対応を含め,業務委託契約書を今一度見直す必要があろう。

企業法務総合 労働法

円滑に取引を進めるための
業務委託契約書の実効的レビュー
藤野 忠

本稿では,業務委託契約書をレビューする際の留意点として多くのタイプの取引に共通する項目を取り上げ,契約協議等において起こりがちな問題等にも言及しつつ,契約書レビューに関わる者が重視して臨むべきポイントについて解説する。

企業法務総合 労働法 国際

受託者が留意すべき
海外取引における業務委託契約のポイント
本郷貴裕

本稿では,日系企業が受託者として海外企業との間で製作物供給契約を締結する際の,特に支払条件に関する注意事項を解説する。これは,筆者が電機メーカーに勤めていた際に実際に関わった案件から得た教訓に基づくものである。他の日系企業も同種の失敗を経験しているようなので,本稿を読まれた読者の方々が,同じ失敗に陥らないように活かしていただければ幸いである。

企業法務総合 労働法

近時の裁判例で読み解く
偽装請負に関するリスクと注意点
高橋俊昭

近時,形式上は業務委託契約が締結されていても,実態上は労働者派遣が行われているいわゆる偽装請負をめぐる裁判所の判断が相次いでおり,発注者と外注先従業員との間で雇用関係の成立を認める裁判例が登場するなど,業務委託契約を利用する企業のリスクが高まっている。本稿では,近時の裁判例を手がかりに業務委託契約と偽装請負にまつわるリスク・注意点について解説する。

企業法務総合 労働法 コンプライアンス

期限の利益喪失条項,約定解除条項に注意
業務委託先のリスク管理
大川 治

業務委託先のリスク管理というと,労働法,下請法,個人情報保護法等に関するリスクに目が向かいがちだが,これ以外にもリスクマネジメントの観点で検討しておくべきさまざまなリスクがある。本稿では,業務委託先に対する与信リスクその他のリスクを概観したうえで,これらのリスクに対する実務的な対応策と留意点を解説する。

企業法務総合 労働法 情報法

統計情報・匿名加工情報の作成制限に要注意
業務委託における個人情報の取扱い
渡邉雅之

業務委託に関する個人情報の委託の取扱いに関しては,個人情報保護委員会のQ&Aの改訂や2022年4月の個人情報保護法改正により,実務上,大きな変更点が生じ個人データを取扱うベンダーに影響を与えている。本稿では,変更点への具体的な対応も含め解説する。

企業法務総合 労働法

業務委託におけるハラスメント対応
近藤圭介・貞松典希

近年,ハラスメントの問題が頻繁に取り上げられるようになってきているが,ハラスメントは,従来,上司と部下や,男性従業員と女性従業員など,1つの会社に所属する労働者間で生じるトラブルとして認知されてきた。しかしながら,近年は,働き方の多様化によって,いわゆるフリーランスや副業者などが増加し,会社の垣根を越えてさまざまな立場の者が協働する機会が増えている。それに伴って,ハラスメントも1つの会社の内部だけにとどまらず,会社と他社の個人(フリーランスなどの個人事業主や業務委託契約に基づいて他社に常駐している受託者の従業員など,以下総称して「受託者」という)の間などでも生じるようになってきている。本稿では,会社と受託者との間で生じるパワーハラスメントの問題を中心にスポットライトを当てて取り上げる。なお,本稿では,受託者が労働基準法・労働契約法上の「労働者」,労働組合法上の「労働者」のいずれにもあたらず,受託者にはこれらの法令が適用されないことを前提としている。

企業法務総合 労働法 コンプライアンス

役員・退職後1年以内の退職者も公益通報者に
委託先役職員等からの公益通報への対応
沖田美恵子

業務委託先役職員等からの通報は,自社役職員の不正を早期に発見・防止するためにも,業務委託先での不正を早期に発見・防止するためにも,有用なものである。改正公益通報者保護法により事業者に通報対応体制整備義務等が課せられたこともふまえ,本稿では,業務委託先役職員からの通報について,同法との関係を整理したうえで,その有効活用について論じる。

企業法務総合 労働法 競争法・独禁法

フリーランスへの業務委託における
独占禁止法・下請法上の留意点
佐川聡洋・川合竜太

業務委託契約は多くの企業にとって使い慣れた契約形態であり,契約時の留意点も十分把握していると思われる。一方で,世界的に増加傾向にあるとされ,わが国においてもその労働環境等の整備に関する議論が近時盛んなフリーランスとの関係では,業務委託契約の締結・運用に際して企業側の配慮が必ずしも十分とはいえない実態もみられる。本稿では,企業がフリーランスへの業務委託を行う場面において,主として独占禁止法および下請法の観点から特に留意すべき点を概観する。

地平線
個人の思い,職場の判断
企業法務総合

内田 良

教育学の領域は未来志向的であるといわれる。そこでは,子供の成長を促すべく,どのような教育施策や実践が望ましいのかが議論されてきた。そうした潮流のなかにあって,私が専門とする教育社会学は,教育学の中では数量的なエビデンス(科学的根拠)を重視してきた。言い換えると,未来よりも,過去や現在を実証的に明らかにしようとする立場である。それゆえ私自身も,学校教育の現状にアンケート調査から迫る機会が多い。

Trend Eye
DPF取引透明化法の適用対象が拡大
デジタル広告をめぐる最新動向
競争法・独禁法

角田龍哉

2022年8月1日,一定規模の運用型デジタル広告(前年度の国内売上高が1,000億円以上の検索連動型広告や所有・運営型広告,ならびに500億円以上の広告仲介)が,「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律」(透明化法)の適用対象に追加された(ただし,あらかじめ広告出稿に係る価格や掲載期間,場所等を決めて契約する方式のような,予約型広告は対象外とされている)。2023年5月には早くもモニタリングレビューのための報告書に関する1回目の提出期限を迎えることになる。

特集2
地政学リスクへの全方位対応
昨今のウクライナ問題や米中貿易摩擦など,多国間における「地政学リスク」が再注目されています。感染症の世界的な蔓延も相まって,「激動」の時代を生き抜くために企業はどのような対応が求められるのか。カントリーリスクへの備えをはじめ,海外事業撤退やクロスボーダーM&Aなどの観点から,地政学リスクの高まりを受けた法務のあり方を検討します。
企業法務総合 国際 コンプライアンス

地政学リスクに対して法律家が果たすべき役割
梅津英明

「地政学リスク」が急に法律家の目の前に現れてきたように感じられ,法律家にとってはとまどいが大きい面もある。地政学リスクには法律知識の枠を超えた広範なリスクが含まれる一方で,法律家が対峙できる部分も相応にあり,その必要性も高いように思われる。法律家がかかるリスクに対して適切に対応することで,日本企業の「ピンチ」を「チャンス」に変えるサポートをできる可能性がある。

企業法務総合 国際 コンプライアンス

ウクライナ侵攻,両岸関係に対する警戒感
カントリーリスクをめぐる最新論点
中川裕茂・横井 傑・松嶋希会

近年,カントリーリスクが現実化しており,企業の危機管理がいっそう求められている。本稿では,ウクライナ情勢および緊張が高まる米中関係・中台関係を概説し,日本企業がこういった事態にどのように備えておくべきかについて検討する。

企業法務総合 国際 コンプライアンス

地政学リスクの高まりを受けた
海外事業撤退に伴う法務上のポイント
日比 慎・蓮輪真紀子

米中間の貿易摩擦や新型コロナウイルス感染症の流行などを背景に,海外で事業を行う拠点(オフショア拠点)の再編・移転・撤退を検討する日本企業が増えている。現在の不安定な国際情勢をふまえると,かかる傾向は今後も続くことが予想される。オフショア拠点の再編などにおいて,既存の拠点の撤退を検討する場合,進出時よりも困難な法的問題に直面することも珍しくない。本稿では,海外事業から撤退する際に,法務の面で留意すべきポイントを概説する。

企業法務総合 国際 コンプライアンス

安全保障リスクを織り込むクロスボーダーM&A戦略
荒井陽二郎・竹内悠介

米中間の貿易摩擦,ロシアによるウクライナ侵攻等を背景に世界の安全保障環境が厳しさを増すなか,クロスボーダーM&Aを検討する日本企業が,安全保障の観点からどのような点に留意するべきなのか。日本企業が外国企業・事業を買収・売却する事例を念頭に,交渉上の論点とノウハウについて解説する。

緊急座談会
グレーゾーン解消制度と弁護士法72条をひも解く
~直近3つの重要事例をふまえて
2022年6月6日,6月24日,7月8日と立て続けに公表されたグレーゾーン解消制度の回答を取り上げ,それらの基礎的な内容について解説するとともに,多角的な観点からディスカッションを行いました。

【登壇者】山本 俊(GVA TECH株式会社 代表取締役)/酒井智也(株式会社Hubble 取締役CLO)/渡邉遼太郎(東京八丁堀法律事務所 弁護士)/水井 大(弁護士法人淀屋橋・山上合同 弁護士)
実務解説
ツイート削除請求を認める最高裁判決の意義
企業法務総合

河瀬 季

インターネット上のネガティブな投稿が,売上や求人などの文脈で,企業に不利益を及ぼすケースは少なくない。Twitter上のツイートについて,その削除を認めた令和4年最高裁判決は,直接的には過去の逮捕情報に関するものではあるが,プライバシー侵害一般,場合によってはその他の権利の侵害に関しても影響を与える可能性がある。企業のレピュテーションリスクのコントロールとの関係という側面から,本判決の意義を検討する。

企業法務総合

株主総会のデジタル化と電子提供制度導入に向けて
2022年6月総会振り返り
清瀬 緑・牧村卓哉

2022年6月総会では,議決権の電子行使が広がるなど,株主総会のデジタル化の動きがいっそう加速するとともに,昨年改訂されたコーポレートガバナンス・コード(以下「CGコード」という)をふまえた招集通知での開示等,各社取組みがより充実したものとなった。また,機関投資家等による株主提案が増加するなど,これまで以上に株主との対話の重要性が感じられた点も特徴的であった。本稿では,各種公開資料のほか,三井住友トラスト・グループにおける証券代行業務の受託会社(以下「当社グループ受託会社」という)を対象とする調査結果に基づき,本年6月総会の概況を説明するとともに,今後の株主総会の方向性,運営等について検討したい。

競争法・独禁法

経済分析による審査期間の長期化等に要注意
令和3年度主要企業結合事例にみる公取委の審査基準
石垣浩晶

令和3年度の主要な企業結合事例をみると,独禁法上の企業結合規制の相場観に大きな変化はなく,市場画定や競争制限シナリオの検討内容は年々詳細なものになっており,ヒアリングやアンケートを実施するだけでなく積極的に経済分析を活かした企業結合審査を促進する傾向は維持されている。簡便的な経済分析は市場シェアが一定程度大きい事案では必ず実施されており,企業結合計画の事情によっては,審査遅延リスクや規制リスクが高まる可能性があることには注意が必要である。

企業法務総合 競争法・独禁法

「秘密情報の保護ハンドブック」が改訂
企業における営業秘密保護のベストプラクティス
島田まどか

2022年5月に改訂された「秘密情報の保護ハンドブック」の内容について解説するとともに,営業秘密に関する近時の事例や,保護の対象となる秘密情報の範囲の広がりや制度の進展,働く環境の変化をふまえて,実務への活かし方を検討する。

連載
最新判例アンテナ
第52回 インサイダー取引規制に違反する株式の買付を理由とする課徴金納付命令について,当該買付よりも前の時点で「業務上の提携」を行う決定をしたとは認められず,違法であるとされた事例
金商法・資金決済法

三笘 裕・河野ひとみ

東京証券取引所マザーズ市場に上場する甲社は,同社の技術に関心を持つ乙社との間で秘密保持契約を締結のうえ,打合せ(以下「本件打合せ」という)を行い,甲社から提供可能な技術に関する乙社からの具体的な要望を受け,後日デモンストレーションを含めた提案を行うこととなった。本件打合せにつき担当者から報告を受けた甲社代表取締役Aは「わかりました」と述べ,甲社取締役X(被控訴人)も異議を述べなかった。その後,Xを含む事業部メンバーによる定例会議(以下「本件定例会議」という)にて本件打合せの内容が報告された。本件定例会議後,甲社と乙社の業務提携の公表前に,Xが甲社株式計400株を買い付けたところ,遅くとも本件定例会議までに,Xがその職務に関し,「業務執行を決定する機関」であるAが「業務上の提携」を「行うことについての決定」をした旨の重要事実を知りながら,その公表前に甲社株式を買い付けたことが金融商品取引法166条1項1号および同条2項1号ヨ(現行法では1号タ)の内部者取引に当たるとして,金融庁長官から課徴金納付命令を受けた。Xは命令が違法である旨主張して,国(控訴人)に対してその取消しを求めた。Xの請求を認容した東京地判令3.1.26判時2511号113頁の控訴審が本件である。

企業法務総合

LEGAL HEADLINES
森・濱田松本法律事務所 編

テクノロジー・AI

ワンポイントで解説!技術と法の新世界
第5回 量子コンピュータ
井深 大

従来のコンピュータはトランジスタを用いて計算を行う。トランジスタは電気を流したり止めたりするスイッチの役割を果たし,ON/OFFの状態を0と1で表すことであらゆる情報をビットと呼ばれる「0or1」の単位で表現し,また,接続の工夫により四則演算などの計算ルールを定め,これに従った計算によりあらゆる情報処理を可能としている。従来のコンピュータはトランジスタの微細化により集積回路上に搭載できる数を増加させ,これをもって処理速度を向上させてきたが,トランジスタは原子1個の大きさに近づき,微細化による性能向上には物理的な限界が近づきつつある。このような状況のもと,従来のコンピュータと本質的に異なる量子コンピュータに注目が集まっている。

企業法務総合

ITサービスにおける「利用規約」作成のポイント
第1回 「利用規約」作成時の最初の視点
中山 茂・菅野邑斗・林 里奈

本連載では,企業の法務部員・事業担当者が,ITサービスにおける「利用規約」を作成する場面で検討すべき項目を整理し,改めて注意すべき論点を解説する。連載の前半では利用規約に通常含まれる条項を中心に解説し,後半では,関連する法令,ビジネス・産業ごとの固有条項や特殊性について解説する予定である。

コンプライアンス サステナビリティ・人権

リスクマッピングでみる サプライチェーンの法務対応
第4回 人権侵害リスクと企業対応
吉澤 尚・宮川 拓・河原彬伸

前回は,企業経営におけるESG/人権の要素を概説したうえで,環境分野(E)の枠組み(ソフトロー)について気候変動分野の枠組みを中心に説明を加えた。第4回では,人権の要素について,より具体的にその枠組みと,企業における対応の方向性について解説する。

企業法務総合

Level up!法学部教育――企業で活躍する人材の育成
第5回 これからの大学教育に求められる多様性

石川文夫

2021年4月時点のデータによれば,日本の大学の数は788あるようだ。学部の設置数をみると法学部は163であり,経済学部の275よりも少ない。あるテレビ番組では「大学は淘汰され,個性・特色を明確化して広く発信できる大学が生き残っていく」と有識者が発言していた。日本は少子化が進み学生の人数も減り,経営の面からこれからはどの大学も厳しい環境になると考えられる。このような環境下では,大学教育においては多様性と独自性が求められ,企業と同じで現状に満足することなく,絶えず「選択と集中」を行いながらさまざまな変革を行うスタンスが必要となる。

企業法務総合

社会人資格のつまみ食い!
最終回 中小企業診断士・社労士
平木太生

連載最終回では,中小企業診断士と社会保険労務士を紹介させていただきます。いずれも専門性の高い国家資格で,さまざまな分野で活躍できる資格です。

国際 争訟・紛争解決

マンガで学ぼう!! 法務のきほん
第9話 国際取引と紛争解決手法
淵邊善彦・木村容子

国際取引を行う際には,契約当事者間で法律・言語・商慣習の違いがあるため,相手方の信用調査をしっかりと行い,取引の内容を正確に把握することが重要です。そのうえで,当該契約に適用される通商規制,取引先の現地の法規制,契約締結に伴うリスク(カントリーリスクなど)を把握・評価し,リスクを回避または低減するための条項を盛り込んだ契約書を締結する必要があります。国際物品売買契約に関する国連条約(CISG,ウィーン売買条約)や,インコタームズ(Incoterms2020)などの適用にも留意すべきです。

サステナビリティ・人権

ビジネスパーソンのためのSDGs相談室
第4回 人権デューデリジェンスとは
坂 昌樹

Q:最近,「人権デューデリジェンス」という言葉を聞きますが,どういうものなのでしょうか。企業に対してどのようなことが求められ,またどのような意味があるのでしょうか。

企業法務総合

事例でわかる ヘルスケア業界への異業種参入ポイント
第5回 製薬企業の買収
堀尾貴将・川井悠暉

近年,異業種からヘルスケア業界へ参入する企業が増加しており,製薬会社等においても,従来の医薬品・医療機器以外のヘルスケア商品にビジネスチャンスを見出す動きが活発化している。本連載では,具体的な事例をもとに,ヘルスケア業界の基本的な規制や参入時の留意点等を平易に解説する。連載第5回では,一般用医薬品や医薬部外品の取扱いを開始したいという事例をもとに解説する。

企業法務総合

LGBTQと企業~訴訟トラブル予防,企業価値の向上
第5回 LGBTQに関する企業の"炎上"事例と気を付けるべきポイント
松岡宗嗣

性的マイノリティをめぐる企業の対外的な発信に対し,特にSNS上で批判の声が多く集まり,結果的に"炎上"してしまうというケースが後を絶たない。たとえば,2014年には,ソフトバンクが「ソフトバンクの新人クルー,紳子(オカマ)と美人社員のとある一日」というタイトルのWEBタイアップ広告記事を掲載し,SNS上で批判を集め削除された。2016年には日本マクドナルドのWEB動画で,嫌がる男性の頬に「罰ゲーム」として男性がキスをする様子が掲載され,こちらも多くの批判を集め削除された。いわゆる「LGBT」といった言葉が一般的によく知られるようになったのは,2010年代後半からといわれる。性の多様性に関する知識の広がりによって,前述のような明らかに悪質な表現は減ってきたようにもみえるが,依然として差別的な表現や批判を集めるケースが少なくない。

国際 税務

税務の有事,その時どうする?
第3回 東南アジア子会社の税務調査
井上諒一・渡邉雄太・樽田貫人

本連載では,法務部において対応が求められ得る税務の有事対応について,いざ対応が求められた場合に必要となる基礎知識および対応方法を解説しています。連載の第3回では,東南アジア子会社における税務調査対応について取り上げます。

労働法 情報法

対話で学ぶ 人事労務の周辺学
第5回 人事労務と情報法
嘉納英樹

今回の連載では,個人情報保護法および公益通報者保護法との交錯を,弁護士Aと弁護士Bの対話によって解説します。企業の営業秘密に関連する不正競争防止法や秘密保持義務,競業避止義務などの点に関しては,刑事法の回で扱う予定です。なお,EUのGDPRについては紙幅の関係から割愛します。

労働法 国際

日本の法務担当者が知っておくべき
アメリカの労働法制
第4回 競業避止
西出智幸・貞 嘉徳・高田翔行・Jose M. Jara・Phillip H. Wang

連載第4回となる本稿では,使用者たる企業が自らの権利・利益の保護を目的として従業員との間で取り交わす退職後の競業避止に関する合意について,アメリカ法のもとでその有効性が肯定されるためには,どのような要素に留意する必要があるかを解説する。

サステナビリティ・人権

法務部がおさえておきたい 気候変動対応と脱炭素経営
第5回 不動産分野における脱炭素化
宮城栄司

不動産分野における脱炭素が特に重要なのはなぜか?2050年のカーボンニュートラル実現のためには,日本におけるエネルギー需要の約3割を占めるといわれている不動産(建築物)分野の脱炭素化,特に省エネルギー化(省エネ)を促進することが重要となる。不動産は企業の活動に欠かすことのできない資産であり,不動産投資や不動産の所有・賃貸借等を通じてあらゆる企業が不動産の脱炭素化に何かしらの関わりを持つことになる。

税務

要件事実・事実認定論の根本的課題 ── その原点から将来まで
第39回 雑所得①
──要件事実論の視点からみた所得税法
伊藤滋夫

所得税法(所税)35条1項によると,雑所得に該当するための法律要件は,利子所得,配当所得,不動産所得,事業所得,給与所得,退職所得,山林所得,譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当しないこととなるが,これは,次の1と2とに分けて考える必要がある。1 利子所得,配当所得,不動産所得,事業所得,給与所得,退職所得,山林所得,譲渡所得に該当しないこと。2 一時所得に該当しないこと。すでに(本誌2020年11月号150頁以下)述べたように,担税力の強さの違いによって所得を区分し,それに応じた課税所得の計算と税率の適用があるのであるから,雑所得を他の所得と比べてどのような性質のものとして捉えるかを考える際にも,この基本をふまえて,検討を行うべきである。

特別収録
ビジネス実務法務検定試験
3級 演習問題
企業法務総合