雑誌詳細

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2022年9月号

2022年7月21日発売号   1,700 円(税込)

特集1

コンプライアンス・ナビゲート
――規制対応の見極め

特集2

経済安全保障推進法の実務対応をさぐる

特集1
コンプライアンス・ナビゲート
――規制対応の見極め
コンプライアンスに関して,その重要性は認識しているものの,各省庁からさまざまな指針やガイドラインが公表されており,対応に苦労されている企業の皆さまも多いのではないでしょうか。「コンプラ疲れ」というワードが頻出する今だからこそ,対応が必要な各コンプライアンスをコンパクトにまとめ,その要点を解説します。
コンプライアンス

企業に求められる取組みとは
コンプライアンスのあり方と変遷
中西和幸

近時,「コンプライアンス」について気を遣う場面が増え,「厳しい世の中になった」といわれている。また,コンプライアンスに対する考え方も変わってきており,たとえば「必要悪」や「会社のための不正」などといった従前の「常識」が通じなくなっているようにも見受けられる。そこで,法令の文言や不正行為に関して,企業としてどのように考え,またどのように対応するべきかの概要を紹介する。

労働法 コンプライアンス

近時の法改正にみる
労務コンプライアンス対応
西脇 巧

近年,働き方が多様化しているほか,副業・兼業やフリーランスが増加し,長期化する新型コロナウイルスへの対応に伴いテレワークが進むなど雇用をめぐる環境は著しく変化している。これにより厚生労働省が所管する法令やガイドラインの改正も多岐にわたり,複雑かつ多様化しているが,すべてを網羅して対応することは容易でない。そこで,本稿では,労働分野における最近の法令改正等を振り返り,行政当局の動向をふまえながら,労務コンプライアンス対策として優先的に実施すべき事項を説明する。

コンプライアンス

各種ガイドラインをふまえた態勢整備を
金融機関のコンプライアンス・リスク管理
高山 徹

金融機関のコンプライアンスに関しては,適用のある業法およびその解釈等を示した業種別の監督指針を遵守する必要があるだけでなく,監督当局の公表する各種ガイドラインをふまえて態勢整備等を検討することも必要である。特に検査マニュアルの廃止以降,監督当局の問題意識を正確に理解するといった観点から,各種ガイドライン等の重要性が増していると考えられ,その全体像や近時のトピックを把握しておくことが重要である。

コンプライアンス

個人情報保護法から読み解く
データコンプライアンス
小川智史

個人情報の取扱いにおけるコンプライアンスを考えるとき,プライバシーの観点や社会的受容性など,多角的な観点での検討が必要となるが,まずは個人情報の保護に関する法律を遵守する必要がある。実務ではしばしば個人情報保護法の解釈が問題となるが,一番の指針となるのが個人情報保護委員会のガイドラインである。本稿では,委員会ガイドライン等を参照する際に役立つ,その概要や押さえておくべきポイントを解説する。

コンプライアンス

改正法への速やかな対応を
内部通報体制の整備に向けた順序とポイント
池田彩穂里

改正公益通報者保護法(以下「法」という)が2022年6月1日に施行された。しかし,改正法により義務づけられた公益通報対応業務従事者の選任といった一連の対応がいまだ完了しておらず,内心焦りを感じている事業者も少なくないように思う。本稿は,改正法への対応がなぜ必要なのかを改めて説明しつつ,どのように着手すべきか,そして体制整備後の課題について,簡潔に説明する。

コンプライアンス

継続的な取組みが肝要
「ビジネスと人権」に関するコンプライアンスのあり方
龍野滋幹

企業のグローバル展開が拡大していくなか,人権への負の影響を生じる事象が多く認識され,人権を重視した経営が指向されるようになってきている。世界的な法制化の進展を受けて,日本においても人権デューデリジェンス(以下「人権DD」という)のガイドラインの検討が進むが,企業においては,特に,人権DDを適切に行うことにより発見された負の影響を是正する,というサイクルを継続していくことが重要である。

コンプライアンス

あたりまえの習慣から見直す
取締役に求められるコンプライアンスの着眼点
荒井喜美

「コンプライアンス」という言葉が広く使われるようになった後,コンプライアンスの守備範囲は法令から倫理観や価値判断に至るまで,多重的に広がり続けている。本稿では,近年の実例の特徴をふまえながら,取締役がコンプライアンスを考えるうえでの視点を検討する。

コンプライアンス

企業実例コラム
組織体制の変革によるリスクマネジメント(大和ハウス工業株式会社)
八田政敏

当社は2019年の不祥事公表以降,内部統制体制の見直しに継続して取り組んでいる。今回は当社の取組みの一部について,この場を借りて紹介したい。

コンプライアンス

企業実例コラム
事業フェーズ別 ベンチャー企業のコンプライアンス(ラクスル株式会社)
小川智史

急成長するベンチャー企業においては,限られたリソースの中でフェーズの異なる複数の事業・サービスのコンプライアンス課題に向き合う必要がある。ラクスルでの取組み,そのノウハウの一端をご紹介し,コンプライアンスの"裾野"を広げる一助となれば幸いである。

コンプライアンス

企業実例コラム
インテグリティ意識の浸透(三井物産株式会社)
白木浩子・迫田 周

当社は,ビジネスの基盤である信用を守り育てていくためにはコンプライアンスの徹底が必須と考え,CCOの指揮のもと,グローバルグループベースでコンプライアンス体制の向上を図ってきた。取締役会・経営会議報告の他,コンプライアンス委員会を年4回開催,毎回各事業部門のトップである事業本部長も4名参加し,現場マネジメントの目線も交えて活発に議論している。議論した内容の詳細を社内公開するとともに,社員の質問や意見をふまえて議論する回を設ける取組みも進めている。

地平線
司法書士制度150周年を迎えて
IT化の今こそ求められる本人訴訟のサポートの役割
争訟・紛争解決

小澤吉徳

司法書士制度は,2022年8月3日に150周年を迎える。とはいえ,司法書士制度は,けして当初から確立していたわけではなく,国民のさまざまな法的需要に応え続けることで変化を経て,現在に至る。司法代書人と呼ばれた時代は,訴状や答弁書等の作成を通じて国民の裁判を受ける権利を保障し,高度経済成長期の時代には国民の経済活動の重要なインフラである不動産登記・商業法人登記の担い手となった。その後,2000年から議論が始まった司法制度改革の時代には,少額な裁判の担い手として簡易裁判所における訴訟代理権が付与され,当時社会問題であった多重債務問題の解決に大きく資することとなった。また,高齢化社会における成年後見制度の担い手としての役割は,今後も大きくなっていくだろう。

Trend Eye
各種法令の検討が必要
「フェムテック」の概要と関連する法規制
企業法務総合

根本鮎子

FemTech(フェムテック)は,Female(女性)とTechnology(テクノロジー)をかけあわせた造語である。「フェムテック」の法律上の定義はまだ存在していないが,一般的には女性が抱える月経や不妊治療等の健康課題を,テクノロジーで解決する商品やサービスを指す。

特集2
経済安全保障推進法の実務対応をさぐる
「経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律」(経済安全保障推進法)が2022年5月18日に公布されました。コロナ禍や昨今の世界情勢をとおしてサプライチェーンの課題が明らかになり,また,社会・経済が高度に電子化したことによるリスクも大きくなっています。グローバル化を前提とした企業活動を進めていくうえで,経済安全保障の理解と新法の知識が不可欠です。本特集では,その概要に加え,実務対応まで踏み込んだ内容を解説いただきました。経済安全保障分野の第一人者である先生方に,"新時代のヒント"を学びます。
企業法務総合

経済安全保障の基本と実務対応への道標
大川信太郎

岸田内閣は経済安全保障を政策の柱と位置付けており,2022年5月18日には,経済安全保障推進法(経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律)が公布された。本稿では,経済安全保障の定義・全体像と企業において経済安全保障に対応する上で押さえておきたいポイントについて解説する。なお,経済安全保障の全体像については,筆者が本誌2022年2月号から連載している「連載 企業法務のための経済安全保障」(以下「本連載」という。今月号は休載)もあわせて参照されたい。

企業法務総合

契約実務,企業コンプライアンスへの影響と対応
井口直樹・川合正倫・近藤亮作

日本企業は,経済安全保障推進法の施行に対し,契約・コンプライアンス実務の観点から何に留意しなければならないか。そもそも本法は,どのような国際情勢のもとでの,どのような国際社会の動向と関連するものなのか。本法が今後予定する個別施策に対する具体的対応に加えて,本法の背景である各国の経済安全保障シフトのなかで日本企業が新たに必要とする対応・体制について,考察・提案を試みる。

企業法務総合

基幹インフラ役務の安定的な提供の確保に関する制度の注目点
中島和穂・平家正博・根本 拓

本稿では,経済安全保障推進法の柱の1つである基幹インフラ役務の安定的な提供の確保に関する制度を取り上げる。同制度の具体的内容は,今後,政府が定める基本指針や政省令により定められることになるが,同法の文言や国会での審議過程をふまえて,同法の適用対象となる事業者および設備,ならびに,政府による設備の導入等に関する事前審査制度に関して注目すべき点を解説する。

企業法務総合

特許非公開制度の実務対応
松本 拓・白根信人・出野智之

今般,経済安全保障推進法の制定に伴い特許非公開制度が導入され,国防上機微性の高い発明についての出願公開の留保,外国出願の禁止,実施の制限,開示禁止などの制約が生じ得ることとなった。本稿では,制度の概要と実務上の留意点について解説する。

企業法務総合

米中覇権争いによる
外的環境の変化と日本企業に求められる適応
戸田謙太郎・三代川英嗣

本稿では,経済安全保障の議論が活性化した時代背景である米中の覇権争いのなかで複雑な外的環境に直面している日本企業がこの外的環境の変化に今後どのように適応していくべきかという難しい問題を取り上げる。①経済安全保障の議論が活性化した時代背景と外的環境の変化,②日本企業を取り巻く経済安全保障推進法のリスク源となっている米中の動向,③このような外的環境の変化に直面する日本企業に求められる適応について説明する。

企業法務総合

スタートアップ・中小企業のための経済安全保障プラクティス
――経済安全保障に強い国内・外資10法律事務所相談先リスト
渡部友一郎

本稿は,「経済安保...?うちはスタートアップ・中小企業」「サプライチェーンの強靭化・基幹インフラ・官民技術協力・特許非公開,どれも今は無関係」という率直な感想を持つ法務担当者に対して,目線を変えて「法律事務所の経済安全保障プラクティス」を取り上げる。第1に,何かがあったらすぐに使える「どの法律事務所の誰に問い合わせればよいか?」をまとめたリストを示し,第2に,国内・外資10法律事務所への調査から明らかになった傾向を共有する。第3に,スタートアップ・中小企業が見落としがちな「自社事業と経済安全保障リスクの接点」に関する盲点を取り上げる。

実務解説
株主総会資料の電子提供制度の概要と企業対応
会社法

青野雅朗

株主総会資料の電子提供制度の創設に関する会社法改正法が2022年9月1日から施行される。関連する定款の変更についてはすでに対応を行った会社が多いと思われるが,そのほかに施行日に向けて対応が必要となり得る事項や,実際に電子提供措置をとることを見据えて検討しておいたほうがよいと考えられる事項について改めて整理しておくことも有用だと思われる。本稿では,そのような観点から,当該制度の概要と留意点等について解説する。

企業法務総合

改正特定商取引法・消費者契約法をめぐる
「サブスク契約」の見直しポイント
森中 剛

2021年6月9日に特定商取引に関する法律(以下「特商法」という)が改正され,2022年6月1日に施行された。また,消費者契約法も改正され,2022年6月1日に公布された(一部を除き,公布の日から1年後に施行)。昨今注目を集めている「サブスク契約」にも影響することから,改正の概要と実務における対応のポイントを説明する。

企業法務総合

「アフィリエイト広告等に関する検討会 報告書」をふまえた企業対応
森 大樹・カオ小池ミンティ・小林菜摘

消費者庁に設置されていた「アフィリエイト広告等に関する検討会」は,2022年2月15日付け報告書において,アフィリエイト広告に関する各論点について整理・提言を行った。本稿においては,報告書のポイントを整理するとともに,報告書をふまえて同年5月13日に公表された「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」等の改定案についても紹介したうえで,企業がとるべき対応について述べる。

企業法務総合 会社法

書評 会社法は誰のためにあるのか――人間復興の会社法理
浜田道代

本書は,日本の株式会社法制の現状に真正面から槍を突き刺しているかのような,熱い問題提起の書物である。 通説によれば,株式会社は株主のものである。株主総会は会社の最高の意思決定機関である。会社経営の目的は株主価値の最大化にある。上村達男氏は,このような「株主第一主義」こそが,人間疎外の元凶であるという。会社法は,株主のためではなくて,人間のためにある。会社は,人間がより良く生きるための道具立てである。

争訟・紛争解決

デジタル技術によるオンライン紛争解決
ODRの実例と活用可能性
石原遥平・宇根駿人

ODRとは,デジタル技術を活用して調停等の紛争解決手続(ADR)をオンライン上で実施する手続を指し,特にデジタル・プラットフォームでの取引における紛争解決手段として注目されている。本稿では,ODRのわが国における検討状況を概観したうえで,国内で実践されているODRの実例,今後の展望を紹介する。

連載
最新判例アンテナ
第50回 議決権行使の基準日を定めなかった場合,招集通知は発送時点の株主に発送すれば足り,その後に株式譲渡により株主となった者に対して改めて招集通知を発送する必要はない等と判断した事例
企業法務総合 会社法

三苫 裕・林 嵩之

JASDAQスタンダード市場に上場していたY社は,創業家取締役が中心となって非上場化することを目指して,少数株主をキャッシュアウトすべく株式併合を実施したが,その前に創業家とは関係のないY社株主AがY社株式を買い増したため,Aは株式併合後も引き続きY社株式を1株保有することとなった。そのため,Y社は上場廃止後に改めてY社株式2株を1株に併合する株式併合を実施することとし,基準日を設定することなく臨時株主総会(以下「本件株主総会」という)の招集通知を,発送時点の株主名簿記載の株主(Aを含む5名)に発送した。その後,Aが代表社員を務めるⅩ社(合同会社)は,AからY社株式1株を買い取り,本件株主総会前日に株主名簿の名義書換えがなされたが,Y社からX社に招集通知が送付されることはなかった。

企業法務総合

LEGAL HEADLINES
森・濱田松本法律事務所編

知財 テクノロジー・AI

ワンポイントで解説!技術と法の新世界
第3回 メタバース
井深 大

Facebookが社名をMeta Platformsに変更したのをきっかけに広く知られるようになったメタバース。その言葉自体は1992年の時点ですでに『スノウ・クラッシュ』という小説で用いられており,それ以前にも近しい発想はSFやゲームなどで登場していた。メタバースに明確な定義はなく,言葉自体に特段意味があるわけでもないため,ひとまずインターネット上に構築される3次元のバーチャル空間に多くの人が同時接続し,他者とのコミュニケーションやコンテンツの作成,売買といった経済活動が行われる様子をイメージしていただきたい。

企業法務総合

事例でわかる ヘルスケア業界への異業種参入ポイント
第3回 化粧品の輸入・販売
堀尾貴将・中野進一郎

近年,異業種からヘルスケア業界へ参入する企業が増加しており,製薬会社等においても,従来の医薬品・医療機器以外のヘルスケア商品にビジネスチャンスを見出す動きが活発化している。本連載では,具体的な事例をもとに,ヘルスケア業界の基本的な規制や参入時の留意点等を平易に解説する。連載第3回では,企業が化粧品の輸入・販売に参画するという事例をもとに解説する。

企業法務総合

Level up!法学部教育――企業で活躍する人材の育成
第3回 ビジネス事案と法の連動が理解できることの重要性
石川文夫

今回は日々発生しているビジネスと法律がいかに連動しているか,実際の報道事案を法的見地から読み解き,契約などの存在が学生にみえるようにするための具体例を紹介したい。

企業法務総合

社会人資格のつまみ食い!
第4回 ITパスポート・MOS
平木太生

第4回目は情報処理関連(パソコン関連,IT関連)の資格です。これまで紹介してきた専門性の高い資格というよりは,仕事に役立つ資格として2つ紹介させていただきます。いずれも難易度としては低めですので,仕事をしながら取得することもできるおすすめ資格になります。

労働法

日本の法務担当者が知っておくべき アメリカの労働法制
第2回 労働の対価
西出智幸・貞 嘉徳・高田翔行・Jose M. Jara・Phillip H. Wang

連載第2回となる本稿では,アメリカの労働法制における重要概念である"Non-exempt Employee"と"Exempt Employee"の違いに重点を置きながら,労働の対価に関するルールを解説する。

企業法務総合

ビジネスパーソンのためのSDGs相談室
第2回 SDGコンパスを活用しよう!
山本哲史

企業がSDGsの取組みを進めるうえで参考となるものに「SDG Compass(SDGコンパス)」があります。SDGコンパスとは,SDGsの企業行動指針として,国連グローバル・コンパクト(UNGC)など3つの国際組織によって作成された,企業がSDGsを経営戦略に組み込み,実行していくためのガイドラインです。企業がSDGsを活用するために,考え方のフレームワークや学習ツールなどを提供しています。SDGsに初めて取り組む際には,何から始めればよいのか,取組みがSDGsの活動として認知されるのか,形だけのものにはならないか,一過性のものにならないか,などさまざまな懸念があると思われます。SDGコンパスでは,そうした課題を解決する目的で,企業がどのようにSDGsを経営に取り込んでいけばよいかの手順を示しています。なお,「SDG Compass」で検索すると誰でも入手できます。

会社法 労働法

対話で学ぶ 人事労務の周辺学
第3回 人事労務と会社法
嘉納英樹

株式会社において,取締役と会社の関係が委任であるのに対して(会社法330条),従業員と会社との関係は雇用です。両者にはこのような法的性質の違いがあるため,相違点も多いのですが,共通点もあります。連載第3回では人事労務と会社法との交錯につき,株式会社の取締役に焦点をあてながら,弁護士Aと弁護士Bの対話によって解説します。

企業法務総合 争訟・紛争解決

LGBTQと企業~訴訟トラブル予防,企業価値の向上
第3回 LGBTに関する職場環境の整備
村木真紀

欧米では政府や学術機関がLGBTに関するデータを積み上げており,人口割合,学歴,収入,メンタルヘルス等で,LGBT層と一般データ(LGBTを含む全体のデータ)の差分がわかる。しかし,日本の主要統計においては,性的指向や性自認に関する項目がなく,日本政府はLGBTに関するデータをほとんど持っていない。たとえば国勢調査でも,当事者支援団体の要望にもかかわらず,同性パートナーを配偶者として回答しても,男女の事実婚の場合と異なり,配偶者として集計されない。このような背景があり,LGBTの学歴や収入が一般のデータと比較してどう違うのか,という問いに対しては,「日本にはデータがない」という回答になる。

企業法務総合

マンガで学ぼう!! 法務のきほん
第7話 M&Aにおける法務の重要性
淵邊善彦・木村容子

M&Aは重要な経営戦略であり,その多くは取締役会決議事項になります。法務担当者としては,M&Aの対象会社,スキーム,対価等に問題がないかどうかを慎重に検討し,取締役の判断が善管注意義務違反にならないよう注意しなければなりません。そのためには,M&A実行後の統合・融合のプロセス(ポストマージャー)を考慮しながら,必要十分な範囲で対象会社の資産や債務の調査(デューデリジェンス)を行い,契約交渉を行う必要があります。マンガにもあるように,近年は大企業が最先端の技術やビジネスモデルを獲得するためにベンチャー企業等を買収するケースが増えており,対象会社の特性に応じたポイントを絞った迅速な対応が求められています。

税務 コンプライアンス

税務の有事,その時どうする?
第2回 重加算税
迫野馨恵・山口亮子

本連載では,法務部において対応が求められ得る税務の有事対応について,いざ対応が求められた場合に必要となる基礎知識および対応方法を解説しています。連載の第2回では,重加算税について取り上げます。

企業法務総合

法務部がおさえておきたい 気候変動対応と脱炭素経営
第3回 カーボンプライシングとカーボン・クレジット
本田 圭

カーボンプライシングは,文字どおり,二酸化炭素(カーボン)の排出について値付け(プライシング)をすることを意味し,これによって二酸化炭素排出者の行動を変容させて脱炭素を図る政策のことを指す。カーボンプライシングの代表的な手法としては,①炭素税,②炭素国境調整措置,③カーボン・クレジット取引があげられる。

企業法務総合

続・業種別 M&Aにおける法務デュー・ディリジェンスの手引き
第6回 Fintech企業
宮下 央・田中健太郎・白澤光音

近時,Fintechと呼ばれる領域において事業を行う企業の拡大にあわせて,Fintech企業を対象とするM&A取引も増加傾向にあるように見受けられる。本稿では,多様なFintech企業の業態や金融規制との関係もふまえて,Fintech企業に対して法務デュー・デリジェンスを実施する際のポイントを,具体的な事例における対応も取り上げつつ解説する。

税務

要件事実・事実認定論の根本的課題
第38回 一時所得──要件事実論の視点からみた所得税法
伊藤滋夫

所得税法(所税)34条1項によると,一時所得は,ごく簡単にいえば,保険金,懸賞金,当たり馬券による払戻金,遺失物の拾得に対する報労金など1回限り臨時に受け取る所得(それが役務または資産の譲渡の対価の性質を有しないもの)ということではあるが,これを厳密に定義しようとするとなかなか難しい。当然のことながら,きちんとした基準が必要である。また,「役務又は資産の譲渡の対価の性質を有しないもの」については,後記に述べるような困難な問題がある。

企業法務総合 競争法・独禁法 国際

リスクマッピングでみる サプライチェーンの法務対応
第2回 事例分析 ウイグル問題/サプライチェーン上のサイバー攻撃
吉澤 尚・宮川 拓・河原彬伸

連載第1回では,バリューチェーンや,バリューチェーンリスクマッピングに関する基本的な解説を行った。第2回では,実際の事例に即して説明していきたい。

特別収録
ビジネス実務法務検定試験
2級 演習問題
企業法務総合