雑誌詳細

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2022年5月号

2022年3月19日発売号   1,700 円(税込)

特集1

4月から中小企業のパワハラ防止措置義務化!
総まとめ ハラスメントの調査・対応実務

特集2

知財・無形資産の投資・活用における
「開示」と「ガバナンス構築」のすすめ方

特集3

「詐害行為取消権」改正の意義と実務留意点

特集1
4月から中小企業のパワハラ防止措置義務化!
総まとめ ハラスメントの調査・対応実務
2022年4月より,改正労働施策総合推進法(通称「パワハラ防止法」)が中小企業においても適用となります。罰則規定が無いとはいえハラスメントは訴訟リスクに発展することもあり,対策が急務となっています。事業者は「表沙汰にならなければいい」といった姿勢ではなく,研修による予防措置,通報対応,再発防止策など,あらゆる角度から対策を講じる必要があり,一方でそのような職場環境の改善は業績向上のカギも握っています。改正法施行を契機とし,本特集でハラスメント対策の歴史的経緯や実務対応を完全フォローしておきましょう!
企業法務総合 労働法

なぜハラスメントはなくならないのか?
ハラスメントの要因と企業対応の心構え
峰 隆之

ここ数年,ハラスメントに関連する公的機関への相談件数,労災申請件数に顕著な減少傾向はみられない。かかる状況のなか,2022年4月1日から,パワーハラスメント防止措置義務の適用範囲が中小企業にも拡大される。いわば"出口の見えない"状況で,企業はどのような対策をとるべきか。そのカギは,職場でハラスメントを生じさせる背景となる要因に注意を向けておくことにある。

企業法務総合 労働法

「職場のパワーハラスメントに関するヒアリング調査結果」にみる
ハラスメントの現状と対応の要点
濱口桂一郎

JILPT(労働政策研究・研修機構)では厚生労働省の要請を受け,パワハラに関するヒアリング調査の結果をまとめるとともに,それに基づく労働政策フォーラムを行った。そこでは,円卓会議の6類型に沿ってさまざまな事例が示されている。また,世界的にもハラスメントに関する法制が確立されつつある。

企業法務総合 労働法

周辺事実とパワハラの関連性から考える
ハラスメント調査のポイントとチェックリスト活用法
向井 蘭

パワーハラスメント事案が発生しても,なかなか周囲が気づくことができず,会社の対応が後手に回ることがある。ハラスメント紛争の予防の観点から,パワーハラスメント特有の周辺事実をもとに早期に会社が調査に動き,予防などの措置を講じることが重要である。本稿ではパワーハラスメントの周辺事実からみるパワーハラスメント調査のポイントについて述べる。

企業法務総合 労働法

効果的にハラスメントを予防・防止するために
ハラスメント研修の実務
真下陽子

ハラスメント予防・防止のための研修の実施は,ハラスメントそのものの理解を促し,ハラスメントに関する会社のルールの確認に役立つだけでなく,ハラスメント対策として最も効果が大きいと考えられている。本稿では,ハラスメント予防・防止のための研修の計画と実施の仕方について解説する。

企業法務総合 労働法

こんなときどうする?
ハラスメント調査・対応の実務Q&A50
小鍛冶広道・西頭英明・湊 祐樹・小山博章

労務問題専門のブティック事務所である執筆者らの所属事務所においては,各弁護士が毎日のようにハラスメント問題に関する企業からの相談対応業務に従事しており,対応ノウハウが蓄積されている。本稿では,実務上「よくある相談事例」「悩ましい相談事例」を50問抽出し,相談対応の時系列順に並べたうえ,コンパクトに対応の道標を示すこととする。

特集2
知財・無形資産の投資・活用における
「開示」と「ガバナンス構築」のすすめ方
改訂コーポレートガバナンス・コード(2021年6月)において新たに「人的資本」や「知的財産への投資等」の開示を行うこと,また.取締役会においては関係する事項の実効的な監督を行うことが求められました。さらに,改訂CGコードをふまえ,2022年1月,「知財・無形資産ガバナンスガイドライン」が公表されました。本特集では,本ガイドラインの内容をいちはやく取り上げ,今後企業が行うべき知財に関わる開示とガバナンス構築のあり方について,多角的かつ具体的に解説します。
知財

2022年1月28日公表
「知財・無形資産ガバナンスガイドライン」の概説
安井桂大・水谷勇斗

本年1月28日,「知財・無形資産の投資・活用戦略の開示及びガバナンスに関するガイドライン Ver 1.0」が公表された。改訂コーポレートガバナンス・コード対応の観点からも重要となる知財・無形資産の投資・活用に向けた取組みに関する指針が取りまとめられた本ガイドラインについて,その概要をご紹介する。

知財

知財投資等に関する情報開示の具体的対応
----知的財産の範囲,開示の内容・方法
工藤良平・伊藤菜々子

改訂CGコード補充原則3-1③の下で求められている知財投資等に関する情報開示の水準と各社の現状の開示実務ないし意識の間は,相応のギャップが存在しているように見受けられる。本稿では,改訂CGコードの下で各社において知的財産の投資等に関していかなる情報開示が求められており,実務上いかなる対応を行う必要があるか,知財・無形資産ガバナンスガイドラインの内容もふまえ,検討する。

知財

ガイドラインに基づく
「知財・無形資産ガバナンス」の実践方法
菊地 修

2021年のコーポレートガバナンス・コード(CGC)改訂における知財投資の取締役会監督と情報開示に対して,知財・無形資産ガバナンスガイドラインの7つのアクションに基づき,企業がいかに取り組むべきかを考察するとともに,知財ガバナンス研究会の活動を紹介する。

知財

知的財産をめぐる 今後の取締役会のあり方
西村陽一郎

2021年6月,コーポレートガバナンス・コードの改訂版に,初めて知的財産に関わる項目が盛り込まれ,それにともない,知財・無形資産ガバナンスガイドラインが策定・公表された。本稿では,改訂版コーポレートガバナンス・コードや知財・無形資産ガバナンスガイドラインを前提として,知財に関して取締役会が関与すべきイシューを列挙するとともに,知財をめぐるガバナンスの観点から取締役会のあり方を提示する。

知財

SDGs,ESGをめぐる世界の情勢からみる
ESG投資を呼び込む知財活用・知財戦略
渡辺直樹・大杉 真・根本鮎子・橋爪 航

サステナビリティを重要な経営課題として認識・対応しつつ,知的財産への投資等の情報開示・提供を求める改訂CGコードに,どのように向き合うべきか。本稿では,SDGsやESG投資の概念を整理し,実際の企業の取組みを参考にして,対応の手がかりを考えてみたい。

知財

競争力を高める「人的資本」の開示とは
――知的資本との関係を中心に
梅原潤一・トラン・チー

ヒトが生み出した「知財・無形資産」はその内容により知的資本等の経営資本に区分される。このヒトとは,「経済的アウトカムの達成に関連する個々人のKSAs(知識,スキル,能力,その他特性)」,すなわち「人的資本」である。経営資本の源泉である「人的資本」の認識・評価・開示の戦略ストーリーは,まさに企業戦略そのものである。よって,人的資本開示に向けた投資は,経営資本強化・事業を通じたSDGs達成であり,新たな資金調達に資する。

地平線
「環境法弁護士」の可能性と活躍に期待
企業法務総合

北村喜宣

環境との関係における法律家の古典的イメージは,公害患者または開発反対住民のために手弁当で闘う社会派弁護士であろう。ところが,今世紀になって,こうしたイメージは随分と変容している。「環境法弁護士(Environmental Lawyer)」といった場合,その活動内容は,実に多彩になってきている。どのような展開がみられるのだろうか。

Trend Eye
拡大集中許諾制度による著作物利用円滑化のゆくえ
企業法務総合 知財

福市航介

2021年12月,文化審議会著作権分科会は,『DX時代に対応した「簡素で一元的な権利処理方策と対価還元」及び「著作権制度・政策の普及啓発・教育」について』と題する中間まとめを公表した。ここでは,「拡大集中許諾制度」が議論され,注目を集めていたことから,本稿では,同制度の特徴,同分科会基本政策小委員会の議論,中間まとめでの同制度の位置づけを概観したい。

特集3
「詐害行為取消権」改正の意義と実務留意点
詐害行為取消権は,2020年4月に施行された改正民法で大幅に条文が追加されました。そもそも,なぜ改正民法において要件や効果の明確化が図られたのか? 破産法上の否認権制度とはどう異なるのか?等の疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。そこで,「詐害行為取消権」改正の意義と実務的な留意点をご解説いただきました。
民法・PL法等

改正民法において大幅に条文が追加
「詐害行為取消権」の主な改正点とその目的
松井裕介

詐害行為取消権については,2020年4月に施行された改正民法において大幅に条文が追加され,要件や効果の明確化が図られた。本稿においては,詐害行為取消権の制度趣旨を説明するとともに,民法改正による主な改正点および改正の目的等について解説する。

民法・PL法等

破産法上の否認権制度とどう異なる?
詐害行為取消権の要件・効果
大川 治

本稿では,詐害行為取消権の要件,行使方法および効果を概説する。改正民法は,詐害行為取消権の基本的な要件のほか,破産法上の否認権制度(160~162条など)との整合性を図るべく,行為類型ごとの要件の特例を定めているため(その背景については松井稿(102頁)参照),否認権との異同を念頭に,債権者,債務者等の視点で,実務的に検討したい。

民法・PL法等

詐害行為取消権の対象とならないために
事例解説 実務上の留意点
片桐 大・宮本雄太

2020年4月に施行された改正民法においては,詐害行為取消権の規定が,行為態様ごとに類型化される形で拡充された。本稿は,今般の改正民法において明文化された詐害行為の類型に着目しつつ,簡単な事例を通じて,詐害行為取消権および破産法上の否認権の対象とならないための実務上の留意点について解説する。

実務解説
NFTアートをめぐる
取引の仕組み,法律関係,活用可能性(上)
企業法務総合 民法・PL法等

野瀬健悟

近年急速に注目が集まっているNFTアートについて,「実物」が存在しないデジタルアートを,ブロックチェーン技術の活用によってアナログなアート作品と同様に譲渡できる仕組みが提示されたことの法律関係や社会に与える影響について解説する。その前提として,これまでファインアート(純粋芸術)の世界で通用してきた取引の実務についても紹介し,NFTアートの世界との接続を試みる。また,さらなるNFTの活用方法や,ブロックチェーン技術を利用したNFTアートの契約設計の可能性についても検討する。

企業法務総合 税務

強制適用開始1年でみえた
新収益認識基準による契約書見直しのポイント
横張清威

収益認識に関する会計基準(新収益認識基準)が2021年4月1日に強制適用されて約1年が経過した。実際に新収益認識基準が適用されたことにより,多くの会社で収益認識に関する経理プロセスが刷新された。このことにより,今までの収益認識と異なるタイミングで収益認識されたり,経理プロセスが煩雑化したという意見も聞かれる。そこで,契約書のひな型を修正することでこれらの問題に対応する方法を解説する。

企業法務総合 テクノロジー・AI

アプリ開発におけるリーガルチェックポイント
影島広泰

アプリ開発を行ってサービスを提供する場合,検討しなければならない法令は多岐にわたり,かつこの分野の法令は改正の動きが速い。どのような法令が問題になるかに気づけなければ重大なコンプライアンス・リスクにさらされることになりかねない。本稿では,アプリ開発において典型的に検討しなければならない法令とそのポイントを概説する。

会社法

親会社株式の取得禁止と親子逆転の株式交換・株式交付
金子登志雄・有田賢臣

新しい再編手法の「株式交付」を利用し,親子会社を逆転させることができるであろうか。できるとすれば,親子逆転の株式交換よりも多くのニーズがあるはずだが,きっと,結果は似ていても,株式交換と相違して,子会社が自ら親会社株式を譲り受ける株式交付では無理だと思われたに違いない。昨年7月に中央経済社から『「株式交付」活用の手引き』を出版し,そこで非公開会社での使い方を提案したが,その補充として本稿を追加する。

企業法務総合 会社法

指名ガバナンス改革の方向性──2021年サーベイ結果をもとに(下)
望ましい取締役会を実現するための 理想の指名ガバナンスとは
久保克行・内ヶ﨑 茂・飯干 悟・橋本謙太郎

指名ガバナンスとは望ましい取締役会を実現するための仕組みである。前回の「上」に引き続き,本稿「下」では,2021年指名・報酬ガバナンスサーベイの結果をもとに,指名ガバナンスとスキルマトリックス,後継者計画策定などの関係に注目する。取締役会のあり方について多くの議論があることを考えると,多くの企業にとって指名ガバナンスの整備は急務であると考えられる。

企業法務総合 テクノロジー・AI

法人顧客情報の取引における法的ポイント
「事業者における顧客情報の利用を巡る法律問題研究会」報告書からの検討
梅澤 拓

デジタル社会の本格化に伴い,DXやIoTの進展による各種データの利活用の重要性が高まるなか,契約実務において,狭義のIT分野の枠を超えてモビリティ分野,金融分野その他さまざまな分野におけるデジタル技術の進展に伴う,個人情報以外の法人顧客のデータについての法律関係の検討が必要となる局面が増加している。本稿では,法人顧客情報についての日本銀行金融研究所の報告書(2021年12月公表)の概要を紹介し,法人顧客情報の取引における契約実務上のポイントを解説する。

連載
最新判例アンテナ
第46回 担保不動産競売の債務者が免責許可の決定を受け,同競売の基礎となった担保権の被担保債権が当該決定の効力を受ける場合には,当該債務者の相続人は,「債務者」(民事執行法188条,68条)に該当しないとされた事例
企業法務総合

三笘 裕・楠木崇久

Aが所有する土地建物につき,Aを債務者とする根抵当権の実行としての競売の開始決定がされた後,Aについて破産手続が開始され,Aは免責許可の決定を受けた。上記根抵当権の被担保債権は当該決定の効力を受けるものであった。その後,Aは死亡してその子であるX(抗告人)等がAを相続した。

企業法務総合

LEGAL HEADLINES
森・濱田松本法律事務所編

企業法務総合

Level up!法務部門――組織・人材の活性化に向けて
最終回 法務部員の契約交渉のスキルアップについて
石川文夫

法務部門は,目先で動いている契約交渉のみならず,企業の未来を左右する将来に向けたビジネス着手に向けた契約締結に関わる部門である。それでは,交渉を行う法務部員の交渉力はどのようにアップできるだろうか?

企業法務総合 競争法・独禁法 国際

企業法務のための経済安全保障
第4回 経済安全保障を読み解く主要11分野――経済制裁編
大川信太郎

本連載では,先日まで行政官として経済安全保障分野の第一線で政策立案・審査に従事していた弁護士が経済安全保障分野の法令について体系的に解説する。連載の第4回目では,経済安全保障を読み解く主要11分野のうち経済制裁について解説する。

企業法務総合 テクノロジー・AI

マンガで学ぼう!!法務のきほん
第3話 個人情報保護法の改正
淵邊善彦・木村容子

令和2年改正個人情報保護法(以下「改正法」といいます)は,個人の権利保護と利活用のバランス,越境データの流通増大に伴うリスクへの対応等の観点から2020年6月に改正され,2022年4月1日に全面施行される予定です。主な改正点は以下の通りです。

企業法務総合 テクノロジー・AI

ケース別で実務に切り込む!クロスボーダーDX法務の勘所
最終回 データ利活用を推進する社内体制づくり
久保光太郎・渡邉満久・田中陽介

最終回である第6回では,第5回に引き続きデータ利活用を推進する社内体制づくり(社内関心フェーズ)について説明する。組織としてデータ利活用を推進していくために,どのような対策を打てるのかをケーススタディとともに検討していきたい。

企業法務総合

続・業種別 M&Aにおける法務デュー・ディリジェンスの手引き
第4回 建設業①
宮下 央・田中健太郎・岡部洸志

本号から2回にわたって建設業を取り上げる。建設業においては,国,地方公共団体等の発注案件が多い,下請取引が当然に予定されているといった特殊性があり,法務デュー・ディリジェンス(以下「法務DD」という)の内容もこれらの事業上の特殊性をふまえたものになる。なお,建設業許可の根拠法である建設業法に関しては,直近でM&Aに関係する重要な改正が行われているため,必要な範囲で改正事項にもふれる。

企業法務総合

解説動画でらくらくマスター!新入法務部員が覚えたい契約英単語・表現
第9回 販売店契約で頻出する英単語と株式譲渡契約で頻出する英単語その①
本郷貴裕

今回は,販売店契約(248まで)と株式譲渡契約(いわゆるM&A契約)(249以降)で頻出する英単語について紹介いたします。

労働法 国際

変革のアジア諸国労務――最新事情と対応策
第6回 中国
若林 耕・木本真理子

東南アジアおよびインドに続き,今回は,中国の労務を取り上げる。中国では,2013年に労働契約法が改正施行されて以降,中央の法律レベルでは目立った法改正は認められないが,会社の所在する各地方レベルの規則や実務の運用動向(傾向)を確認する必要がある。

税務

要件事実・事実認定論の根本的課題 ── その原点から将来まで
譲渡所得①──要件事実論の視点からみた所得税法
伊藤滋夫

企業法務総合 競争法・独禁法 国際

法務部員が知っておくべき
米中貿易摩擦に関する法令・規制の最新状況
第9回 最新状況/EUの対中国規制・制裁/中国の対抗立法
井口直樹・松本 渉・大塚理央

米上院による「米国イノベーション・競争力法」案の可決を紹介したが(第2回),2022年2月4日,米下院が,「米国競争力」法(America COMPETES Act of 2022)」案を可決した。今後の両院再可決により立法される可能性が高い。しかし,両法案の差異を調整する必要があるため,今少し時間が掛かる見込みである。

特別収録
ビジネス実務法務検定試験
3級 演習問題
企業法務総合