雑誌詳細

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2020年1月号

2019年11月21日発売号   1,609 円(税込)

特集1

起案・審査の第一歩契約解釈の技術

特集2

五輪を契機に、今はじめる!テレワーク導入の手引き

特集1
起案・審査の第一歩契約解釈の技術
契約に不明瞭な部分がある場合、契約内容を確定するために契約解釈が必要となります。来る4月1日に施行される改正債権法では、契約解釈ルールの明記こそ見送られたものの、契約趣旨に照らした当事者の合理的意思の探求が1つのキーワードとして示されています。法務部のメイン業務である契約書の起案・審査においても、どのような契約解釈がなされ得るかについての想像力がリスク回避の鍵となりますが、契約解釈の手法を正面から学ぶ機会は多くないのではないでしょうか。本特集では、契約解釈の基本原則から実務における起案・審査の着眼点まで、丁寧に解説しました。
企業法務総合 民法・PL法等

契約解釈をめぐる基本原則の全体像
──公平で明瞭な契約のために
松尾 弘

いったん締結した契約の内容に不明瞭または不確定な部分があることが契約締結後に判明した場合、それらを明確にし、確定するために、契約の解釈が必要になる。契約解釈の方法についてはいくつかの基本原則が形成されている。日本民法はそれらの一部しか規定していないが、基本原則の全体像、各原則の内容および相互関係を理解しておくことが、契約成立後の紛争処理のみならず、契約成立前の準備交渉においても有用である。

企業法務総合 民法・PL法等

最高裁判例の示す合理的意思解釈
──契約解釈をめぐる「事実認定」と「評価」
門口正人

判例は、契約の解釈として、当事者の合意内容について契約書等に明文がある場合には、その文理に従うことを基本とし、その文理が一義的で明確でないときは、他の定めの内容や規定ぶりとの関連等から意味を探求し、さらには、契約の目的、交渉に至るまでの経緯や交渉の過程、取引の慣行や社会の状況等の事情によることとする。

企業法務総合 民法・PL法等

改正債権法下における
契約解釈と契約条項のあり方
中井康之

改正民法は、契約の解釈基準を明文化しなかったが、「契約と取引上の社会通念」とのキーワードのもとで、「契約の趣旨」に照らして契約当事者の合理的意思の探求作業が行われ、それが契約解釈の基準となる。そこで、中間試案において提示された解釈ルールを参考に、改正民法における契約解釈のあり方を検討したい。

企業法務総合 民法・PL法等

契約解釈と定型約款の「みなし不合意」規律
岡 正晶

定型約款の「みなし不合意」規律は、民法初の具体的な「明文に基づく内容規制」であり、従来、契約の規範的解釈によってなされていた規律(特定局面における拘束力否定)を受け継ぐものである。契約実務家(とりわけ定型取引該当事業者)は、想定外の契約解釈をされないための対策として、「みなし不合意」規律対策を行う必要がある。

企業法務総合 民法・PL法等

全10題でトレーニング
契約書審査で持つべき契約解釈の視点
髙木弘明・森田多恵子・上久保知優・當間崇裕

特集2
五輪を契機に、今はじめる!テレワーク導入の手引き
労働法

導入の意義から労務管理の具体的手法まで
テレワークの疑問解決Q&A
川久保皆実

いよいよ間近に迫った東京オリンピック。開催期間中の公共交通機関の混雑を避けるため、都内の企業は続々とテレワークの導入に乗り出している。また、労働力不足が深刻化するなかで、人材確保の切り札として戦略的にテレワークを導入する企業も増えている。本章では、テレワーク導入へのファーストステップとして、テレワークについてのよくある疑問をQ&A形式でまとめた。

労働法

テレワーク勤務規程策定のポイント
毎熊典子

人手不足が深刻化するなか、人材の確保や柔軟な働き方が可能な組織づくり等を目的として、テレワーク勤務制度の導入を検討する企業が増えている。導入にあたり、就業規則の作成・届出が義務づけられている事項に関して、新たなルールを設ける場合は、就業規則の変更が必要となる。

労働法

テレワークに適した環境整備
ICT活用と情報セキュリティ対策
義経百合子・小柏光毅・秋元勇研

テレワークとは、労働者が情報通信技術(ICT:Information and Communication Technology)を利用して行う事業場外勤務のことをいう。ICTを用いたツールは、その活用により効率的なテレワークを実施できる一方で、情報セキュリティ面でのリスクを伴う。本稿では、テレワークにおいて活用される各種ツールを紹介したうえで、テレワークを行ううえでの留意点等について検討する。

労働法

従業員のライフスタイルに寄り添ったテレワークを可能にする
株式会社ISパートナーズの取組み
緑川恵子・和泉久美子

当社はコスメ・美容の総合サイト「@cosme」を運営する株式会社アイスタイルの連結子会社として、2016年3月に設立した会社です。当初からフレキシブルな勤務形態を導入しており、そのなかの1つとして「テレワーク」という働き方を採用しております。

労働法

活動の幅をひろげ、知的生産性を高める
弁護士事務所におけるテレワークの導入
古家野晶子

弁護士は基本的に自由業であり、業務の裁量性が高いことから、古くから、必要に応じて時間・場所を問わず、依頼事件のために働くのが通常であった。しかし、昨今の情報通信技術を活用することで、働き方の自由度は一段と高まり、新たな選択肢が増えている。日本の弁護士事務所の90%以上は、弁護士1名から5名の小規模な事業所であるそこで、本稿では、小規模な法律事務所でのテレワークの取組みを紹介する。

地平線
AI、ビッグデータ時代における著作権法
──明確性・柔軟性を実現する日本型個別権利制限規定
知財

大渕哲也

著作権法の一部を改正する法律(平成30年法律第30号)が、2019年1月に施行された(以下「本改正」という)。著作権法では、著作権者の権利保護と著作物の公正な利用との調和を図るため、著作権法30条以下に著作権の制限規定が置かれている。

トレンド・アイ
地方の法務部員ができること
北海道における「企業法務」定着・浸透の取組み
企業法務総合

久保智人

北海道出身の筆者が、「企業法務」に憧れその職に就き、早いもので12年目を迎える。東京・海外での企業法務経験を経て、2年前に現在の会社に転職したが、北海道で企業法務に携わるうちに、「北海道には企業法務という文化が根付いていない」という危惧を強く抱くようになった。

LAWの論点
クローバック条項をめぐる法律関係と課題
会社法

髙橋陽一

業績連動型報酬の前提に誤りがあった場合などに報酬の返還を求めるクローバック条項は、欧米企業では一般的に導入されており、わが国でも導入の動きがみられる。もっとも、クローバック条項の具体的内容はさまざまであり、不当な利得の返還という性格にとどまるもののほか、制裁色を強く有するものもある。クローバック条項をめぐる法律関係については不明確な点も少なくなく、今後の議論の蓄積が期待される。望ましいクローバック条項の具体的内容は会社ごとに異なると思われ、各社が役員報酬のポリシーをふまえて自主的に決定すべきである。

契約締結時における「説明義務」の内容と責任(上)
民法・PL法等

小林和子

債権法改正の議論のなかでは、説明義務に関する規定を設けることも検討されたが最終的には、規定を設けることは見送られた。本稿の目的は、契約締結をする際、企業はいかなる場合にどのような内容・程度の説明義務を負うのか、説明義務違反があった場合には、企業はどのような責任を負うのかについて検討することにある。

実務解説

知財

インターネット上の侵害に対する保護を強化
改正EU著作権指令の概要と日本企業の対応実務
関 真也

EUデジタル単一市場における著作権指令が採択・承認され、2年以内にEU加盟国内で立法化されることになった。そこで、同指令に定められた事項のなかでも、報道出版物のオンライン利用に関する著作隣接権の付与(15条)とフィルタリング制度の導入(17条)につき、その大枠と、現状把握できる限りの適用基準および企業の対応を概観したうえで、わが国における海賊版対策に向けた示唆にも若干言及する。

労働法

「不利益取扱い」の認定を避けるには
"パタハラ"をめぐる法律問題と企業対応
山畑茂之

2019年6月にカネカの男性社員が育休明け直後に遠方への転勤を命じられたことについてSNS上で「炎上」する騒ぎとなり、同じく6月にアシックスの男性社員が育休明けに配置転換が行われたことを争う訴訟提起を行うなど、立て続けに「パタハラ」が社会を賑わし注目を集めている。男性社員に対するパタハラ問題は、法的には育児介護休業法10条等が禁止する「不利益取扱い」に該当するか否かという形で争われることになり、企業はパタハラ認定を受けないように法律の判断枠組みを十分に理解して対策を講じる必要がある。

労働法 国際

事例で考える外資系企業の労務問題
──"PIP"と解雇規制を中心に
荻原雄二

外資系企業における労務問題は、グローバル組織の構造に起因して、案件処理のプロセスが日本の組織内において完結しない場合が多く、そのために法的リスクが発生することを理解することが重要である。また、PIP(業績改善計画)は、外資系企業の雇用契約や組織構造から制度目的を正確に理解すべきであり、そのうえで、日本法の解雇の正当事由に基づき内容を策定することで、解雇の正当事由を補強する手段ともなり得る。

労働法

義務化より対話を
男性育休推進の現状・課題・あり方
池田心豪

男性の育休を増やすために取得を義務化することには慎重になったほうがよい。会社からの独善的な育休の押しつけは従業員にとってベネフィットどころかペナルティになりかねない。そうならないためには、男性育児に関する理解を社内で深める対話が重要である。

競争法・独禁法

公取委実態調査から読み解く
ノウハウ・知的財産権に係る優越的地位濫用規制への実務対応
谷 英樹

公取委は、2019年6月14日に「製造業者のノウハウ・知的財産権を対象とした優越的地位の濫用行為等に関する実態調査報告書」(以下「実態調査報告書」という)を公表した。実態調査報告書ではノウハウ・知的財産権に係る優越的地位の濫用規制上問題となり得る参考事例が公表されており、取引活動におけるコンプライアンスを構築するうえで、実際に問題となり得る事例を知り、それに応じた対策を講じていくことが有益であると思われる。本稿は、実態調査報告書の概要を解説したうえで、優越的地位の濫用とされないために講ずべき社内コンプライアンスのポイントを考察する。

連載

企業法務総合

LEGALHEADLINES
森・濱田松本法律事務所

2019年9月~10月

テクノロジー・AI

「個人情報保護法」世界の最新動向
第1回 データプライバシー・コンプライアンス体制構築のための基礎知識(前編)
石川智也

近時、各国の個人情報保護法制の厳格化・執行強化の動きが指摘され、グローバルでのデータプライバシー・コンプライアンス体制の構築を重要課題として掲げる日本企業が増えてきている。本連載では、その構築のための基礎知識と、日本企業が特に関心を有している法域における個人情報保護法制の概要について紹介する。

労働法

最新判例アンテナ
第21回 労働組合と使用者との間の合意により当該労働組合に所属する労働者の賃金債権が放棄されたということはできないとされた事例
三笘 裕・坂口将馬

書評
『図解不祥事の予防・発見・対応がわかる本』竹内 朗〔編著〕
企業法務総合

北島敬之

企業法務総合

先輩・後輩で描く企業法務のグランドデザイン
第6回 法務部長とジェネラル・カウンセル
須﨑將人・中山剛志・宮下和昌

法務部が、企業のリスク管理・競争力の向上に貢献し、経営陣に評価されるためには企業内での組織の位置づけの再定義も必要だろう。単に契約書をチェックし、法務相談を受け付ける部門ではなく、ガバナンスやコンプライアンスへの関与、さらには法律家としての論理的思考や倫理観をベースとして、経営の中長期のビジョンの策定に参画するためには、法務部員の頭の切り替えだけではなく、法務部の企業内での役割の変更も必要になる。

企業法務総合

対話で学ぶ法務対応の勘所
第3回 投資持分の売却
大串嘉誉

大学卒業後、総合商社の法務部に配属された新人Aは、法律事務所での勤務経験がある社内弁護士Bが率いるチームに所属し、さまざまな案件を担当することになった。今回は、営業部から、当社の投資先(合弁会社)の株式を第三者に売却したいという相談である。

会社法 国際

米国ジョイントベンチャーの最新実務
第3回 米国ジョイントベンチャーの組成とStructureの選択③
竹内信紀・田中健太郎・松永耕明

本連載は、米国にて、米国の州法を準拠法として組成されたジョイントベンチャーについて、公開情報をもとに、米国JVの実例や件数、その一般的なスキーム等を検討し(第1回および第2回、第3回)、英文のJV契約のサンプル条項およびその和訳を明示しながら、米国JVに係る検討事項および問題点を紐解く(第4回以降)連載である。本連載第3回目は、第2回目に引き続き、米国JVが組成される際に選択される法人の種類とその考慮要素について実例をふまえて検討する。

競争法・独禁法

証拠からみる独禁法違反認定の鍵
第1回 東芝ケミカル事件
向 宣明

本連載は、独占禁止法違反を疑われる行為が行われていた当時の、社内メール等の物的証拠が、違反の有無の判断のなかでどのように評価されることになるか、実例をふまえた検討を行うことで、同種事案への対処についての示唆を得ようとするものである。今回は、カルテル行為に関する「共同して」(意思の連絡)という要件についての基本先例とされる東芝ケミカル事件(以下「本件事案」という)を取り上げる。なお、証拠の状況を理解することは、判示の趣旨を理解するうえでも有用であり、参考になる。

企業法務総合 国際

ロイヤーの使い方を押さえる!法務のための英単語辞典
第9回 「契約」はAgreement?Contract?
豊島 真

agreementもcontractも「契約」と訳されるが、この両単語の違いは何だろうか。今回は、「契約」や「合意」などに関する表現をみていこう。

国際

世界の法律実務・遊歩録
第3回 「未来の司法制度?――中国のAI裁判官」
ヘーゼル・イン

「世界の法律実務・遊歩録」では、国際法律事務所のさまざまなオフィスで活躍するロイヤーが、世界のおもしろい・びっくり・どっきりな法律実務やエピソードを紹介していきます。第3回目は、急速に増加する訴訟に対応するために、中国が積極的に推進しているオンライン裁判所の動向について紹介します。

争訟・紛争解決

ストーリーでわかる訴訟手続の基本(民事編)
第3回 続行期日
大久保由美・福谷賢典

第1回口頭弁論期日が開かれた後、次回期日は弁論準備手続期日として指定され、大阪に本社がある乙社は、大阪の弁護士を代理人とし、電話会議によって期日に参加することとなった。

ファイナンス

トークン・ビジネス法務入門
第2回 権利を表章しないトークンの民事法上の取扱い
芝 章浩

ブロックチェーン上で発行される仮想通貨その他のトークンのなかには、ビットコインのように発行者がいないものや、発行者が存在しても何らの約束もしていないと認められるものなど、特定の者との間の法的関係が認められないものが数多く存在する。今回は、このようなトークンをひとまず「権利を表章しないトークン」と呼ぶこととし、その民事法上の取扱いについて、従前の議論を整理し、概説を行う。

民法・PL法等

要件事実・事実認定論の根本的課題──その原点から将来まで
第25回 貸借(賃貸借を中心として)②――新民法(債権関係)における要件事実の若干の問題
伊藤滋夫

民法・PL法等

債権法改正 企業対応の総点検
第8回 消費貸借契約と保証に関する債権法改正の留意点
高野哲好

現行民法587条によれば、金銭の借入れについて貸主と借主が合意をしても、実際に金銭が交付されるまで契約は成立しない。しかし、実務上、当事者間の合意のみで貸主に目的物を貸すことを義務づける契約(諾成的消費貸借契約)が運用されている。