雑誌詳細

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2019年4月号

2019年2月21日発売号   1,609 円(税込)

特集1

契約書審査効率化の要点

特集2

eコマース法務の最先端

特集1
契約書審査効率化の要点
「契約書審査」は、取引リスクをあらかじめ見通し、許容範囲におさめるといった点で法務の重要業務の1つである。一方で、多くの企業では人材が限られているため、審査に割くことができる労力や時間は限られている。本特集では、効率的に、かつ品質を落とさない契約書審査を目指した取組みを紹介する。ぜひ参考にされたい。
企業法務総合

目的・プロセスをふまえた
契約書審査効率化の検討
飯田浩隆

契約書審査の時間を大幅に短縮する魔法はない。しかし、契約書審査の目的を意識し、ポイントを押さえて審査すれば、無駄な試行錯誤を減らして効率化できる。本稿では、契約書審査の目的と審査のプロセスを説明し、そのプロセスを効率化するための方法を紹介する。文中意見にわたる部分は筆者の個人的見解である。

企業法務総合

依頼部門との情報共有・協業のコツ
打合せにおける質問・検討事項
藤井 塁

契約書審査を効率化させる方法にはさまざまなものがあり得る。しかし、機械的・形式的な対応に頼りすぎると、契約書審査の本来の目的である法的リスクの抽出とそれへの対応がおざなりとなり、ともすると契約書審査の品質が犠牲になりかねない。契約書審査の効率化を図りつつ、契約書審査の品質を確保するためには、依頼部門との適切な情報共有・協業が極めて重要である。そのような観点から、本稿では、依頼部門との間での打合せに焦点を当てて、若干の解説を試みたい。

企業法務総合

民法改正を機に進める
契約書ひな形のメンテナンス
梶谷 陽

契約書のひな形は一度作成すればよいというものではなく、継続的にメンテナンスを行っていく必要がある。営業部門からの要請や法改正がある都度メンテナンスを行うことも考えられるが、数年に一度の一斉点検も有用であり、今般の民法改正はその絶好の機会となり得る。いずれの場合も、法務部門と営業部門とで適切な情報共有を行わなければならず、メンテナンス後に社内外へのフォローアップをすることも不可欠である。

企業法務総合

「電子契約」活用も検討
AIツールによる契約書審査の効率化
佐々木隆仁

弁護士事務所から生まれた人工知能技術を使って契約書作成を支援するサービス、LegalForce、AI-CONの活用方法、ベテラン弁護士に圧勝したイスラエルで開発されたAI契約書レビューツールのLawGeex、ブロックチェーンに契約書を保存するdBengosi.comのスマート電子契約など最先端のツールをとり上げ、システムやAIを活用して契約書審査業務を効率化する方法について解説する。

企業法務総合

全体図を把握しポイントを絞る
1人法務の契約書審査
小島好己

企業にとって法務の存在は重要である。しかし、現実的に法務に経営資源を割くことが難しく、「1人法務」、もしくは総務担当者などが片手間に法務を行う「0人法務」となっている企業が実際には多いと思われる。「1人(0人)法務」が限られた時間と労力のなかで、日々迫りくる契約書の審査にどのように対応すべきか。そして外部専門家をどのように利用すべきか。弁護士の視点から解説する。

企業法務総合

つまずきやすい実務を押さえる
契約書作成段階での注意点
伊達裕成

1年間に締結される契約の数は、会社の規模によって異なる。上場企業であれば少なくとも数百ぐらいの件数はあるであろう。そのうち、取り扱う契約書の種類および内容は、会社の業界・業種によって異なってくる。民法上には13種類の典型契約が定められているが、そのうち、売買、消費貸借、賃貸借、雇用、請負および位に人は比較的使われるが、その他はあまり利用されることはない。典型契約書以で締結される契約書も、会社の業界・業種によって異なるが、秘密保持契約(NDA)書、取引基本契約書、業務委託契約書、使用許諾書、販売代理店契約書等が多く使われている。

特集2
eコマース法務の最先端
企業法務総合

ざっくり押さえる
eコマース関連法と事業者の留意点
寺門峻佑

eコマースの市場規模は拡大傾向にあり、2017年度の商取引に占めるECの割合は2010年度の2倍を超える。事業者は多岐にわたるeコマース関連法の適用有無および内容を把握した適切な対応が要求される。また近年は、新たな取引類型への対応から、重要ガイドラインたる 「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」1(以下「準則」という)も改訂を重ねている。そこで、本稿ではeコマース関連法の概要と企業の留意点につき、準則に触れつつ、全体を俯瞰できるよう総論的に解説する。

知財

EC事業者への削除申請を意識した出願が鍵
商標権侵害への対応
安田和史

EC市場のなかでも比較的模倣品などの問題が発生しやすいB2CおよびC2Cにおいて模倣品などの被害を受けた場合の対応および法的根拠について明らかにする。また、SEOや広告などの手段を用いて顧客を自己のサイトに引き寄せる場合において、無断で商標が用いられる場合の法的問題点について従来の判決を参酌しながら解説する。

知財

侵害の悪政に応じた検討とEC事業者との協力
著作権侵害への対応
関 真也

ECサイト運営者にとって、侵害品のないクリーンな市場環境を整え、そのイメージを確立することが、利用者の信用獲得や市場拡大のために重要性を増している。また、出品者の属性等に応じた程よい柔軟な対応を可能にし、コンテンツのファンを教育・啓蒙しながら適切に侵害品を排除することは、権利者にとっても重要な課題である。そして、その実現には、ECサイト運営者のリスクに配慮しながら、ECサイト運営者と権利者との協力関係を構築することが不可欠である。そこで、ECに関して問題となりやすい著作権法上の課題を整理するとともに、好ましい協力関係の一例を示す。

知財

楽天株式会社
最新技術を取り込んだEC特許実務の進展

今枝真一

eコマースのビジネスモデルは加速度的に複雑化しており、それらの複雑なビジネスモデルに対応する技術開発が求められている。本稿ではeコマースのビジネスを取り巻く環境をふまえ、そこに用いられる代表的な技術分野について楽天の技術動向とそれら技術をサポートする特許実務を紹介する。

知財

株式会社メルカリ
権利者・官公庁と協力した不正出品物対策
上村 篤

CtoC(ConsumertoConsumer、一般消費者間の取引)のeコマースプラットフォームでは、一般の利用者がさまざまな商品の取引を容易に行うことができるが、ファッションブランドの模倣品やインターネットでの取引が規制される商品が出品されることがある。筆者が所属する株式会社メルカリ(以下「メルカリ」という)では、これらの出品物に対し、法務、公共政策、カスタマーサービスなど複数の担当者で連携して対策に当たるだけでなく、同業者や官公庁・自治体とも連携して、利用者が安心して取引を行える環境づくりをしている。本稿では、これらの取組みの一部を紹介する。

速報解説
「会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する要綱案」の要点解説
会社法

小磯孝二・矢野領・大江弘之


法制審議会会社法制(企業統治等関係)部会は、本年1月16日、「会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する要綱案」および附帯決議案をとりまとめた。本稿は、昨年2月14日にとりまとめられた中間試案からの変更点を中心に、要綱案について簡潔に解説するものである。本誌昨年6月号掲載の「『会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する中間試案』の要点解説」もあわせてご参照いただきたい。なお、紙幅の関係から、要綱案の提案事項の細部に言及できないことをあらかじめ了解されたい。

実務解説

税務

役員給与関係や国際課税の各種見直しに注目
平成31年度税制改正のポイント
酒井 真・緒方 航

平成31年度税制改正大綱では、消費税率10%への引上げ(平成31年10月予定)に伴う軽減税率制度の実施や車体課税に係る負担の軽減を含む見直しが盛り込まれた。また、企業に関係のある改正としては、研究開発税制等の法人課税や、過大支払利子税制等の国際課税の分野で種々の見直しが盛り込まれている。

会社法 コンプライアンス

具体的事例で検討する
日本版司法取引における役員の善管注意義務
木目田 裕

改正刑事訴訟法による「証拠収集等への協力及び訴追に関する合意」制度(以下「司法取引」という)が昨年6月に施行された。これは、被疑者・被告人が他人の犯罪の捜査等に協力するのと引換えに、検察官が当該被疑者・被告人の刑事罰の軽減・免除等を約束するものである。対象犯罪には、法人税法、不正競争防止法、金融商品取引法の各違反など企業犯罪全般が含まれる。報道によれば、企業犯罪の分野ではすでに複数の事案で司法取引が活用された。本稿は、司法取引と取締役・執行役・監査役(以下一括して「取締役等」という)の善管注意義務の関係について、有事対応を中心に論じる。

労働法

働き方改革で労使関係はどう変わる?
社内労働組合交渉における企業対応の再点検
倉重公太朗

いつの時代も労使関係は重要である。働き方改革の中心にあるべきは、社内労働組合を中心とする、集団的労使関係における対話である。しかし、労使関係のあり方は昔のそれとは異なりつつある。そこで、本稿では働き方改革の本質や近時の法改正の動きから、新時代の労使関係のありようを検討する。

会社法

合同会社・株式会社の特徴比較と
組織変更時の留意点
森本大介

株式会社DMM.comは、2018年5月25日付けで株式会社から合同会社に組織変更を行ったが、このような組織変更は珍しく、市場において注目を集めた。また、たとえばアマゾンジャパン合同会社、合同会社西友、アップルジャパン合同会社など、著名な企業のなかにも合同会社形態を利用している会社も多数存在する。東京商工リサーチによると、2017年度に設立された合同会社は27、039社(法人全体に占める割合が20.49%)であり、法人全体に占める割合が初めて20%を上回ったとのことである。では、なぜ今、合同会社の数が増え、その存在が注目されているのか。本稿では、合同会社の特徴につき、株式会社と比較しながら概観するとともに、株式会社から合同会社に移行する場合のポイントを解説する。

会社法

デラウェア州衡平裁判所で初の判断
MAC条項によるM&A契約解除の実務
関本正樹

M&A契約を締結してからクロージングまでの間に対象会社の事業等に重大な悪影響(MaterialAdverseChangeあるいはMaterialAdverseEect)(以下「MAC」と総称する)が生じたことを理由に買主がM&A契約を解除することは米国においても長らく認められてこなかったが、2018年10月1日、デラウェア州において初めてMAC条項に基づく買主によるM&A契約の解除を認める衡平裁判所の判断が出され、2018年12月7日、デラウェア州最高裁判所も当該判断を是認した。MAC条項は日本においても実務上多くのM&A契約で規定されるようになってきていることから、今回のデラウェア州衡平裁判所の判断をふまえてMAC条項に関連して今後のM&A実務で留意すべき事項を検討する。

知財

新規事業における競争力に資するための
「ビジネスモデル特許」を活用した知財戦略
杉尾雄一

近年、ビジネスモデル特許の出願が増加傾向にあり、注目を浴びている。ビジネスモデル特許の呼称からは、ビジネスモデル自体が保護されるかのような誤解が生じることがあるが、基本的には、ビジネスモデル特許も、通常のプロダクトやシステムの特許と同様に考えることができる。本稿は、ビジネスモデル特許の一般論から具体的な事例まで説明をすることにより、ビジネスモデル特許を活用し、新規事業の知財戦略の立案に資することを目的としたい。

民法・PL法等

抵当権との衝突を考察する
不動産が商人間留置権に含まれるとした最高裁判決の概要と影響
山下眞弘

建築請負人は、建築工事代金債権を被担保債権として、その建物敷地について商法521条の商人間の留置権を主張することができるか。民法295条の民事留置権では不動産についても留置権が認められるところ、商人間留置権では判例・学説ともに肯定・否定の両論があったなか、最高裁が肯定説に立ち判例を統一した。しかし、抵当権と留置権の衝突する典型例については問題が残されたままであり、その場面に対しても妥当な結論を導く余地のある肯定説を前提に解決策を考えてみたい。

地平線
"第四の法曹"としてのインハウスカウンセル資格の創設を
企業法務総合

平野温郎

トレンド・アイ
アフィリエイト広告をめぐる企業対応の必要性
企業法務総合

齋藤健一郎

アフィリエイトとは、ブログ等に企業サイトへのリンクを張り、閲覧者がそのリンクを経由して当該企業のWebサイトで商品を購入するなどすると、ブログ等のオーナーに一定額の報酬が支払われる広告手法をいう。近年、アフィリエイトの市場規模は拡大を続けており、さまざまな商品についてアフィリエイト広告が行われているが、そのなかには法令に違反する不適切なものも存在する。

書評
『図解&ストーリー 「資本コスト」 入門 』岡 俊子[著]
企業法務総合

門多 丈

連載

企業法務総合

LEGALHEADLINES
森・濱田松本法律事務所

2018年12月〜2019年1月

民法・PL法等

最新判例アンテナ
第12回 不動産の売主の署名がある媒介契約書の成立の真正の推定が覆された事例 (大阪高判平30.3.8判時2378号10頁 )
三笘 裕・淺野航平

労働法

会社がすべきこと・しなくてよいこと
メンタルヘルス不調者への対応実務
第1回 復職・退職判定の勘所①
向井 蘭

メンタルヘルスに不調を来して休職中の従業員について復職・退職判定に悩む場合も多いと思う。退職と判断すれば紛争になる可能性があり、かといって復職と判断しても、従前の業務を遂行できる可能性が低い場合がある。紛争リスクを避けつつ、円満な着地が必要になる。本稿では実務上問題になりがちな主治医判断の重要性・情報提供の方法・信用性の争い方等について記載した。

企業法務総合

第2キャリアとしての弁護士
第1回 前職での経験を活かし「営業」の得意な弁護士に
高橋喜一

バブル崩壊後の平成5年、経済学部を出た 私は最初に住友不動産に入社した。国内最大手の不動産会社で7年間不動産ビジネスを基礎からたたき込まれた後、チェース・マンハ ッタン銀行システム部の中途採用選考に合格し、エンジニアとしてのキャリアを本格的に開始した。その後日本アイ・ビー・エム株式会社に転籍出向してしばらくしたころに、当時33歳だった私はエンジニアとしての自分の寿命が少しずつ心配になってきて、何か将来歳をとっても続けられる仕事に就くべきではないかと考えるようになった。

会社法

会社法改正後の株主総会電子提供制度への実務対応
第4回 Q17〜Q20
伊藤広樹・中川雅博

Q17:株主は、会社に対して、いつまでに書面交付請求を行う必要があるのでしょうか。

民法・PL法等

いまさら聞けない登記実務の基本
第3回 不動産登記:売買・担保権設定
鈴木龍介・石井知幸

本連載の3回目は、実務で頻出する不動産の売買による所有権移転と担保権設定に関する不動産登記のポイントについてとり上げます。それらの登記のルールを把握していないと迅速かつ安全に取引を行うことはできないばかりか、予期せぬ損害を受けかねません。

企業法務総合

若手弁護士への箴言
第7回 別れから感謝を思う
髙井伸夫

別れは突然にやってくる。人生はたくさんの出会いと別れが交錯しながら進み、そうした経験が人を成長させる。私は、事務所から巣立つ者には、送別会を開いて、ねぎらいと惜別の時間を事務所全体で共有している。このときに私がいつも思うのは、第一に、健康であってほしいということである。どんなに優秀な人材であっても、心身が健康でなければ社会で十分に活躍できない。第二に、次世代を担う彼らには、来し 方行く末を思う有意義な時間を少しでも持ってほしい。人生の1つの節目で自身の初心とキャリアを振り返り、気持ちも新たにこれからの人生をより豊かにしてもらいたい。

コーポレート 国際

法務が主導するアジア子会社管理
第2回 贈収賄帽子体制の構築方法
栗田哲郎

第2回となる本稿では、各論としてアジア各国における贈収賄防止体制の構築方法について述べる。当事務所においては、「①規程制定→②導入→③監査」の一連のワークフローを設定することが重要であると考えている。すなわち、コンプライアンス体制の構築とは、①規程などを整備し、遵守すべきルールを策定し、②当該ルールをセミナーなどを通じて、各アジア子会社に浸透させていき、③当該規定の内容、導入活動による浸透度を監査し把握し、それをもとに①規程、②運用を見直すことを繰り返すことである。

競争法・独禁法

企業結合審査対応の最新実務
最終回 中国の企業結合審査対応 ─ 各 論
宇都宮秀樹・鈴木幹太 ・井上諒一

前回は、中国の企業結合審査について、総論として、審査手続の概要を説明した。連載の最後に当たる今回は、中国における企業結合審査の内容と問題解消措置、ガンジャンピングについて説明する。審査を円滑かつ安全に進めるためには、過去事例等をふまえ、審査のポイントを中国当局に対して的確に説明することと、問題解消措置が必要となった場合には、的確な措置を適時に提案し、中国当局と十分に交渉することが重要である。また、中国当局は届出の遅滞・懈怠に対して厳格な執行態度をとっているため、届出の要否を慎重に検討し、適時に届出を行うことが重要である。

ファイナンス

スッキリわかる金商法の基礎
第2回 開示規制
谷澤 進・和田卓也

前回の「第1回 金融商品取引法の全体 像」で予告したとおり、第2回からは、一般の事業会社にも関わりが深い金融商品取引法(以下「金商法」という)のテーマをとり上げ、事例と設問形式で解説を行う。 今回はそのなかでも開示規制をとり上げる。 なお、以下で紹介する事例は、小職らが所属する法律事務所で扱った案件とは一切関係がなく、小職らが作成した架空の事例である。

企業法務総合 国際

海外ドラマ・映画で学ぶ法律英語─日頃からのちょっとずつseason3
第5回 SUITS(その2)
大島忠尚

「コツコツが勝つコツ」という趣旨で連載している、この「日頃からのちょっとずつ」。 シーズン3の第1回(ビジネス法務2018年8月号)にとり上げた作品が「SUITS」だった。 その後、日本でも織田裕二さんと鈴木保奈美さんの久々の共演で話題となった、同タイトルのドラマが放映されていたので、 そちらをご覧になった方もいるかもしれない。

会社法

法務担当者のための非上場株式評価早わかり
第4回 DCF法を理解する(下)
明石正道・山田昌史

過去3回の連載では、非上場株式の取引価格の決まり方を公開買付事例から読みとるとともに、それらの事例で用いられた評価手法を整理し、とりわけ重要となるDCF法の基礎について解説した。最終回では、割引率の算定方法を解説し、非上場株式の評価が法律上争われる場合を例に、どのような修正がなされるかを検討する。