雑誌詳細

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2018年9月号

2018年7月21日発売号   1,609 円(税込)

特集1

新規ビジネスを成功に導く
法的リスク突破力

特集2

サイバーセキュリティをめぐる法務対応

特集1
新規ビジネスを成功に導く
法的リスク突破力
IoT、AI、仮想通貨、FinTech......新規技術・ビジネスが次々と生まれる現在、法務部には、ビジネススピードを損なうことなく事業部をサポートすることはもちろん、みずからリーガルリスクを回避し得るビジネスモデルを提案することや、制度・ルール自体を変え、事業障壁を突破する力が求められます。 第4次産業革命の新しい時代に、法的リスクにどのように向き合い、如何にして法的リスクを突破するのか。本特集では、最前線のビジネス領域で活躍する弁護士・法務部員にお集まりいただき、新たな「攻めの法務」のかたちを提案します。
企業法務総合

法律の壁を突破するための
見えないリスクを「見える化」する思考回路
二木康晴

新規ビジネスを立ち上げる際、法的リスクへの懸念によりプロジェクトが頓挫してしまうことは少なくない。しかしながら、法的リスクも経営判断を行う際の1つの要素にすぎない。リスクのないビジネスが存在しないのと同じように、法的リスクのないビジネスも存在しない。本稿では、法的リスクにどのように向き合い、いかにして法的リスクを突破していくかを解説する。

企業法務総合

「保守的」法務が企業に与えるリスクと解決の視点
─最前線からの合理的リスクマネジメント
齊藤友紀

企業法務の実務に身をおくと、法務と「現場」、それぞれが互いのコミュニケーションのとり方に難しさを感じているという印象を受ける機会は少なくない。しかし、早期のリスク検知がリスクマネジメントの基本であるとすれば、その鍵を握るのは法務と「現場」とのコミュニケーションである。本稿では、こうした理解に基づき、法務が「現場」で生じるリスクを適時に検知し、リスクマネジメントを機能させるための1つのアプローチを提案する。

企業法務総合

新規市場の独占に向けて
グレーゾーン解消措置・サンドボックス制度活用のしかた
轟木博信

スタートアップは、自社ビジネスの適法性の判断のみならず、独占可能な市場を作るという観点から、参入規制のある分野における事業展開を可能とする新事業特例制度・グレーゾーン解消制度、サンドボックス制度の利用を積極的に検討すべきである。筆者は弁護士として法律事務所に勤務後、知人が立ち上げたスタートアップにて経営管理・マネジメント全般を担当する一方、法律上の検討が不可欠なFin techを含む事業立上げの最前線で戦略的に前記制度の利用を進めてきた。本稿では両制度の概要とともに、外部カウンセルとしての弁護士以外の仕事の醍醐味もあわせてお伝えすることができれば何よりである。

企業法務総合

具体的影響、代替案の提示を
経営層・事業部門への法的リスクの伝え方
岡本杏莉

筆者は、2008年9月に西村あさひ法律事務所に入所。約5年間、クロスボーダーおよび国内のM&A案件、ジェネラルコーポレート案件などに従事してきた。2015年3月に株式会社メルカリに入社し、日本および米国事業に関する法務に加え、2016年3月および2018年3月の増資、2018年6月のIPO等を担当した。本稿では、大手法律事務所の弁護士と、スタートアップ企業のインハウスロイヤーという双方の経験をふまえながら、経営層・事業部門(非法律専門家)への法的リスクの伝え方につき、筆者の考えを記載したい。なお、筆者は設立から2年という比較的初期の段階で株式会社メルカリに入社しており、また、個人としてスタートアップ企業へのリーガルアドバイスも行っている。かかる経験もふまえ、本稿は、主にスタートアップ企業や中小企業を前提とした内容とさせていただいている。

企業法務総合

5つの事例で身につけるリスク分析・回避・突破の勘所
角田 望・徐 東輝・小笠原匡隆・南 知果・柳田恭兵・松永昌之

事業部門から新たな事業案の相談がきたとき、既存の知識の範囲内で即断的に応答してはならない。何よりもまず事業の内容、サービスが世に送り出されるまでの流れ(開発プロセス)と、顧客がどのようにそのサービスを利用するのか(事業展開プロセス)、その全体像を的確に把握する必要がある。

特集2
サイバーセキュリティをめぐる法務対応
コンプライアンス

経営者の喫緊の課題
新たなサイバーリスクへの向き合い方
山岡裕明

セキュリティインシデントが次々と発生しており、サイバーリスクはどの企業においても看過できない事業リスクとなっている。このサイバーリスクへの取組みとして、サイバーセキュリティに関する法律、ガイドライン、サービス・インフラの整備が進んでおり、また、予防策および事後対応策についての経験・知見が集積しつつある。そうしたなか、セキュリティインシデントに関する平時・有事の法務対応の重要性が増している。本稿では、法務として押さえるべきサイバーセキュリティに関する近時の動向を紹介する。

コンプライアンス

官民の多様な主体における情報共有の促進を
サイバーセキュリティ関連法の改正動向
蔦 大輔

近年、サイバーセキュリティに関する情報を共有する動きが一層活発化しており、近時の法改正においても、情報共有を行うものが見受けられる。このため、それらを中心に近時の法改正の概要を解説するとともに、今後の取組みについて述べる。

コンプライアンス

アクセス・コントロール、持出し困難化ほか
従業員による情報漏えいを防ぐポイント
中崎 尚

サイバーセキュリティ対策では、従業員をはじめとする内部犯による情報漏えいをいかに防ぐかが重要となる。事業者への指針として、「サイバーセキュリティ経営ガイドライン」「セキュリティマインドを持った企業経営ワーキンググループ報告書」をはじめとするドキュメントが出そろいつつある。本稿では、サイバーセキュリティ対策のうち、情報持出しを防ぐための対策を解説する。

コンプライアンス

サイバー攻撃による情報漏えい
インシデント発生から再発防止までの対応
北條孝佳

セキュリティインシデントが発生したときに対応するのは、IT部門やCSIRTメンバーだけではない。会社にとって今後を左右する重大な事象の可能性もあるため、経営者や法務部門等もともに対応する必要がある。

実務解説

会社法

M&AでのExitを想定した
ベンチャー投資契約における条項作成の留意点
小名木俊太郎・小林哲士

時価総額6、000億円超で新規上場を果たしたメルカリのように、ベンチャー企業は、日本の経済成長に大きな影響を与える存在となってきている。このようなベンチャー企業にとって、投資(エクイティ・ファイナンス)は必要不可欠なものであり、その際に締結される投資契約の重要性は非常に高いものである。本稿では、経済産業省が公表した資料をもとに、M&AによるExitを想定した投資契約について解説する。

企業法務総合

予防、発見、対処の観点から検討する
法務・コンプライアンス部門のKPI導入・設定のしかた
水戸貴之・新堀光城・酒井太郎

事業拡大や規制環境の変化に伴い、法務・コンプライアンス部門1において対応すべき課題が山積している。その課題解決に対するパフォーマンス向上の一方策として、事業部門同様にKPI(KeyPerformanceIndicator:業績評価指標)の導入を検討する例が散見される。もっとも事業部門とは異なり、法務・コンプライアンス部門は直接的に売上・利益を生み出す部門ではないため、その特性をふまえた検討が必要となる。本稿では、KPIの基本的な考え方を整理したうえ、法務・コンプライアンス部門へのKPI導入実務および、それに伴う課題につき、具体例を交えながら紹介する。

テクノロジー・AI

システム欠陥による事故増を見据えた対応は?
自動運転ルールをめぐる最新動向
戸嶋浩二

世界的に自動運転の開発競争は激しさを増しており、実証実験も国内・海外問わず多く行われている。他方で、ウーバー・テクノロジーズ社の実証実験中の事故を受けて、自動運転車の事故における責任についても関心が大きくなっている。このようななか、日本政府は、2018年3月20日に「自動運転における損害賠償責任に関する研究会」報告書を、4月17日に「自動運転に係る制度整備大綱」を公表するなど、制度整備に本格的に取り組み始めている。本稿では、自動運転に関する制度整備の最新動向と今後の方向性についてお伝えする。

企業法務総合 コンプライアンス

支払を確実に受けるための手続・管理を整理
ビジネス保険請求時の対応と留意点
岡本大毅

企業の事業内容の多様化やグローバル化に伴い、今日、多種多様な保険商品を目にする。伝統的な火災保険はもとより、サイバー保険、個人情報漏えい保険、ドローン保険や芸能人の顔等の特定部位を補償するパーツ保険など一風変わった保険商品も登場している。企業活動において保険を活用する場面はますます増えている。一方で、保険の活用を推奨する記事は散見されるが、加入した保険契約に関し保険金を請求する際の留意点について語られることは少ないように思われる。そこで、本稿では、ビジネス保険を活用する企業における保険金請求時の基本的な対応のしかたと留意点について解説する。

速報解説
「働き方改革法」の概要と実務への影響
労働法

増田陳彦

「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」(以下「働き方改革推進法」という)が平成30年6月29日の参議院本会議で可決成立し、7月6日に公布された。平成28年9月から動き出した官邸主導の働き方改革実現会議は、平成29年3月に「働き方改革実行計画」を公表していたが、その中心内容である、長時間労働の是正に関する労働時間の上限規制と非正規雇用の処遇改善のための同一労働同一賃金に向けた法改正が実行されたこととなる。本稿では、働き方改革推進法の全体概要に触れつつ、労働基準法等の改正を中心に実務への影響について現段階での情報をもとに私見を交えつつ触れる。なお、後述するとおり、今後、改正法の施行通達や省令が出されるため、実務的な取扱いの詳細はこれらをまってさらに検討を要することに留意いただきたい。

地平線
IT・ICTの技術革新に法律家は追いつけるか
テクノロジー・AI

岡村久道

いまや猫も杓子も街頭や電車内でスマホをいじくるなど、IT(情報技術)やICT(情報通信技術)の利活用が幅を利かせており、それらが絡んだ法律紛争も増加して当然だ。現に判例でも立法でも、その多くがIT・ICTに関連する。

トレンド・アイ
漫画・アニメ海賊版サイトのブロッキングにみる憲法的課題
知財

唐津真美

本年4月13日、政府の知的財産戦略本部・犯罪対策閣僚会議は「インターネット上の海賊版サイトに対する緊急対策」(以下「緊急対策」という)を決定し、漫画やアニメ、映画などを権利者に無断で掲載するいわゆる海賊版サイトへの接続を遮断するための法整備に乗り出す方針を示した。さらに、特に悪質な3つのサイトを名指しして、「法制度整備が行われるまでの間の臨時的かつ緊急的な措置」としてインターネットサービスプロバイダ(ISP)がこれらのサイトへのアクセスを遮断すること(ブロッキング)は適当という見解を示した。これを受けて4月23日にはNTTグループ3社がブロッキングを実施する方針を発表したが、サイトブロッキングについては通信の秘密や表現の自由の観点から憲法に違反する可能性があると指摘されており、複数の団体が反対意見を表明するなど波紋が広がっている。本稿では、背景事情もふまえつつ、サイトブロッキングの法的問題を整理してみたい。

企業法務総合

LEGALHEADLINES
森・濱田松本法律事務所

2018年5月〜6月

労働法

「同一労働同一賃金」議論を追う
第9回 ハマキョウレックス事件・長澤運輸事件の最高裁判決
橘 大樹

最高裁は、労働者の賃金のあり方は経営判断や労使交渉により決められるという原則論を尊重しつつ、個々の手当ごとに「趣旨」を確認したうえで待遇差が不合理と評価されるかを検証し、結論として精皆勤手当につき高裁の判断を覆した。

会社法

最新判例アンテナ
第6回 取締役解任議案の株主総会への上程に係る取締役会決議につき、当該取締役が特別利害関係取締役に当たるとされた事例(東京地決平29.9.26金商1529号60頁)
三笘 裕・金田 聡

競争法・独禁法

企業結合審査対応の最新実務
第1回 企業結合審査対応の概要
宇都宮秀樹・藤田知也

M&Aの成否やスケジュールを左右し得るものとして、日本の独占禁止法をはじめとする各国の競争法上の企業結合審査が重要な意味を持つことは、もはや常識と言ってよいであろう。競争当局による審査は、近時ますます厳格化・精緻化が進んでおり、実務上の重要性は一層高まっている。そこで本連載では、日本企業が当事者となるM&Aを念頭に、企業結合審査の実務について幅広く触れ、近時の傾向をふまえたベストプラクティスを紹介することとしたい。第1回となる本稿では、M&Aにおける競争法関連手続の全体像について解説し、第2回から第4回にかけ、日本における企業結合審査の実務について、論点ごとに掘り下げて解説し、第5回・第6回では、海外での審査のなかで特に日本企業を悩ませることが多い、中国での審査の実務について解説する予定である。

企業法務総合

交渉術・心理学でUP!契約書交渉のキホン
第3回 合意形成のテクニック(基本編)
米盛泰輔

契約書の条件交渉を、相手方が得をすればこちらが損をするというゼロサムゲームだけで考えてしまうと、双方が納得いく合意に達することは困難です。今回は、当事者間の利害を調整して合意を形成するため、1条件を定める基準の合意(Q11)、2将来予想の相違や情報の非対称性を埋める条項(Q12、Q13)、3複数の論点の組合せによる合意(Q14)、4取引の対象範囲の変更(Q15)といったテクニックを解説します。

企業法務総合

法務2.0リーガルテックのフロンティア
第2回 スマートコントラクト時代における裁判以外の紛争解決可能性
橘 大地

近年シリコンバレーを中心とするテクノロジー都市を中心に、「スマートコントラクト」に対する期待が高まっている。スマートコントラクトとは、ソフトウェアプログラムで動作する契約の自動執行プログラムのことである。ソフトウェア言語で記述可能な形式で「契約」を締結することで、契約上記述した条件が到来すれば記述どおりのプログラムが発動し、自動執行が可能となる革新的なテクノロジーと評価される。

企業法務総合

若手弁護士への箴言
第1回 書き続ける
髙井伸夫

足のケガがもとで、春先からしばらく外出がままならなくなった。何事においても現場主義の私にとって、これほどつまらなく、また不自由に感じることはなかった。現場の息吹を感じて着想を得て、文章をまとめて推敲を重ね、その内容をまた現場に生かす。私は弁護士になって今年で55年だが、このように、実際の経験をもとに勉強を深めて文章化し、さらに勉強を深めてわがものとするという作業を、繰り返し、繰り返し、倦まずたゆまず行ってきた半世紀余であったともいえる。

企業法務総合

PlainEnglishstyleで極める英文契約書作成
最終回 単数形・現在形を優先
キャロル・ローソン・倉田哲郎

今月は、法律文章の書き手が意識すると有用な2つのこと、また、文章の見栄えである「ドキュメントデザイン」を検討するうえで2つの留意点をあげる。まず、意識すべき2つのこととは、①名詞は可能な限り単数形を使うこと、そして②時制は現在形を優先させることだ。日本語では単数複数の区別は明確にされないことが多く、また時制も臨機応変に使用する流動的な概念といえる。

民法・PL法等

金融業者の債権法改正対応
第5回 株式等の売買
川東憲治・河本秀介・関 泰士

機関投資家が非上場の株式や債券(以下「株式等」という)を相対で売るまたは買う場合、当該当事者間に株式等についての売買(民法555条)が成立する。今般の民法改正においては、売買の当事者に適用のある各種条文も種々変更された。株式等の売買取引において、実務は変わるのだろうか。

コンプライアンス

すぐに使える危機管理の書式
第7回 調査報告書(上)

梅津英明・新井朗司・塚田智宏

第7回となる本稿では、発生した不祥事について実際に調査を行った後、その結果を取りまとめる調査報告書の書式について取り扱う。具体的には、さまざまな企業で起こり得る事例であり、かつ実例も多い役職員による横領行為に関して、社内調査委員会が作成する調査報告書を念頭に置いている。調査報告書は、大要、①調査の内容、②調査の前提となる事実、③調査により判明した事実、④原因分析、⑤再発防止策の提言といった各パートから構成されることが多いため、本稿においてもかかる構成を基礎として解説する。なお、本稿では、①について解説し、②から⑤については第8回で取り上げる。

国際

外国人弁護士世界一周
第14回 ロシア連邦
ジュロフ・ロマン

私の故郷であるユジノサハリンスク市に最も
近い外国は、日本です。そのため、ロシアのウ
ラジオストク市の大学を卒業してから日本に留
学するという私の選択は、自然なものでした。
大学卒業後の1998年10月に、私は、1〜2年ぐ
らい留学するつもりで来日しましたが、結局、日本語学校を卒業した後に日本の大学院で法律を勉強し、さらに日本の法律事務所に勤めるようになって現在に至ります。

会社法 国際

海外最新コンプライアンス事情
第2回 タイ
安西明毅

タイは、東南アジア諸国連合(ASEAN)における製造業を中心とした日系企業の最大の集積地として成長を遂げたという歴史的経緯より、多くの日本企業のタイ拠点が存在し(2018年4月現在のバンコク日本人商工会議所の会員数は1、764社である)、近年ではサービス業の進出も盛んとなり消費市場としても発展をしている。そこで、世界的な潮流に従い子会社のコンプライアンスを充実させるという多くの日本企業にとり、タイ子会社のコンプライアンス問題というのは非常に関心の高いところである。本稿では近年法改正のあった事項を中心に、タイのコンプライアンス上重要と思われる点につき、解説する。

民法・PL法等

要件事実・事実認定論の根本的課題──その原点から将来まで
第18回 債権者代位権─新民法(債権関係)における要件事実の若干の問題
伊藤滋夫