雑誌詳細

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2018年8月号

2018年6月21日発売号   1,609 円(税込)

特集1

改訂コード、対話ガイドラインに対応
これからのガバナンス改革

特別企画

"非上場企業"コーポレート・ガバナンスの堪所

特集2

品質不正への実効的対応

特集1
改訂コード、対話ガイドラインに対応
これからのガバナンス改革
去る6月1日、東京証券取引所より改訂コーポレートガバナンス・コードが、金融庁より「投資家と企業の対話ガイドライン」が公表されました。改訂コードでは、CEOの選解任基準・後継者計画、政策保有株式、企業年金に関する事項など、コーポレート・ガバナンス改革をより実質的なものへと深化させていくために従来の原則が見直され、また、新たな原則が新設されています。対話ガイドラインは改訂コードの附属文書として位置づけられ、企業がCGコードの各原則を実施する場合などに、本ガイドラインの趣旨をふまえることが期待されています。本特集では、改訂コードおよび対話ガイドラインの要点を概観するとともに、企業に求められる"これからのガバナンス改革"の秘訣を紹介します。
会社法

資本コストの的確な把握で攻める
投資家と企業の対話に期待すること
小口俊朗

コーポレートガバナンス・コード改訂と対話ガイドラインに反映された5つの論点は、コード策定後に浮き彫りとなった克服すべき課題であり、企業年金に関する事項を除けば、資本コストがキーワードとなる。コードが目指す「攻めのガバナンス」を実現させる原動力として、投資家と企業の対話への期待は大きいが、今回の反映をもって、痛みを伴う課題の実現に向かうと考えるのは早計であり、対話の真価を問われるのはこれからである。

会社法

数値にみるあるべき姿
独立社外取締役と取締役会構成
酒井 功

本年6月1日、東京証券取引所はコーポレートガバナンス・コードを改訂し、同時に金融庁は「投資家と企業の対話ガイドライン」(以下「対話ガイドライン」という)を公表した。今回のコーポレートガバナンス・コード(以下「CGコード」という)の改訂は、独立社外取締役の3分の1への増員を求める内容とはならなかったが、独立社外取締役の適格性と多様性を明確に要求する内容となっている。取締役会の実効性を高めるためには、形式基準である独立社外取締役の人数に注目するだけでは十分でないことは明らかである。改訂CGコードが、適格性と多様性を備えた独立社外取締役の存在こそが、実効性のある取締役会の前提条件となることを明確にした点は極めて意義深いと考える。

会社法

指名委員会等を適切に活用する
CEO選解任手続と後継者計画の策定・運用
濱口耕輔・小宮慶久

CEOの選解任基準・手続や後継者計画は、近時のガバナンス改革において注目を集めている最も重要なテーマの1つである。もっとも、現状ではCEOの選解任基準・手続や後継者計画の策定・運用の方法は必ずしも明確とはいえず、対応に苦慮している会社も少なくない。本稿では、CEOの選解任基準を策定する際の留意点とともに、後継者計画の整備を含めた選解任の手続について若干の整理を試みる。

会社法

コードの要求事項と一歩先の対応
政策保有株式の縮減と開示
後藤晃輔

政策保有株式は、現在、縮減傾向にあるものの、事業会社における縮減は緩やかで、その議決権の割合も引き続き高い水準のままである。今般のコーポレートガバナンス・コードの改訂により、政策保有株式を縮減させていくことが原則とされ、保有することの合理性について積極的な説明・開示が求められるとともに、保有させている側にも一定の行動が求められることとなった。また、議決権行使基準についても、具体的な基準を策定・開示することが明文化された。

会社法

スチュワードシップ責任を果たすカギは?
企業年金のアセットオーナーとしての実務対応
市川佐知子

新たに加えられている原則2−6は、上場企業に、年金アセットオーナーとして機能すること、具体的には人材の配置・予算の確保を求めている。上場企業が投資家の側に立つことを求められるのはなぜなのか。従業員の老後生活を支える年金基金のガバナンスは、法的に、およびインベストメント・チェーンのなかでどのように守られるべきか。上場企業が実施すべき活動について海外年金基金の例、厚生労働省のガイドライン等から考えてみたい。

特別企画
"非上場企業"コーポレート・ガバナンスの堪所
コンプライアンス

非上場企業の2大課題を克服する
プチ・コーポレートガバナンスのすすめ
小塚荘一郎

この数年間で、日本企業のコーポレート・ガバナンスは大きく変化したが、その焦点は、上場会社の取締役会の改革であった。平成26年の会社法改正と並行して行われたスチュワードシップ・コードおよびコーポレートガバナンス・コードの導入によって、独立社外取締役の任用という取締役会の構成をめぐる改革が実現し、現在では、取締役会の役割の定義やその評価へと改革が進展してきている。これらのルールは基本的に、上場会社に対して適用されるものである。

コンプライアンス

非上場企業が取り入れるべきCGコードの要素
淵邊善彦・藤井康太

上場企業への適用が前提となるコーポレートガバナンス・コード(以下「CGコード」という)だが、株式公開を目指すベンチャー企業をはじめとして、非上場であってもCGコードの要素を取り入れるべき企業も少なくない。本稿では、CGコードのうち、非上場企業が取り入れるべき「攻め」のガバナンスの要素は何かを、「成長」と「出口戦略」の観点から解説する。

会社法

国際比較・経済分析で検討するガバナンスの強化
太宰北斗

ガバナンス強化に向けた取組みは、非上場企業にも必要だろうか。企業の財務データを用いた昨今の研究を振り返ると、実は、非上場企業であるからこそ、適切なガバナンスが必要だ、ともいえる。これはコーポレート・ガバナンスという考え方自体が、いかに資本効率を高めるかを目的としているからに他ならない─。さて、コーポレート・ガバナンスとは何だろうか?経済学の視点からいえば、「資本の提供者が提供額に見合った適切な利益を自分の手元に取り戻すための仕組み作り」と定義できる。つまり、不正防止といった側面は必ずしも重要ではない。問題は、資金を託された経営者などのエージェントが、プリンシパルたる資本提供者の期待どおりに動くとは限らず、両者の間にエージェンシー問題が生じることにある。これを解決することがコーポレート・ガバナンスの焦点なのだ。

特集2
品質不正への実効的対応
コンプライアンス

法務担当者・弁護士が対談
品質不正を防ぐ「守れるルール」とは
蔵元左近・真杉敬蔵

自社の取引先(グループ企業を含む)におけるデータ改ざん等の品質不正を予防する対策としては、契約書・覚書等に関連する規定を置くことが考えられるが、そのような文言・規定を整備していない日本企業もいまだ少なくないと思われる。他方で、契約が万能な特効薬になるというものでもなく、また、厳しすぎるルールはかえって「コンプラ疲れ」にもつながり、品質不正の実効的な予防は図れなくなってしまう。いわゆる「サイレントチェンジ」1や「特別採用(特採)」を防ぐには、契約書等に何をどこまで規定すればよいか、取引先への事前のデューデリジェンス等はどのように・どこまで行えばよいか、本稿では、日々の業務に奮闘されている、日本企業の法務・コンプライアンス担当者を読者として想定し、「守れるルール」の整備をコンセプトに、企業担当者と弁護士の各々の目線から対談形式にて解説を行った。本稿にご協力いただいた株式会社タクマの真杉敬蔵氏および同社法務部の皆様には、この場を借りて御礼申し上げたい。

コンプライアンス

調査報告書の指摘事項にみる
予防・再発防止のポイント
原 雅宣

東証一部上場企業においても品質不正問題が相次いでいる。どの企業も品質不正問題と無縁ではない。品質保証体制を強化し、将来の品質不正を予防するために何をすべきであろうか。本稿は、近時の品質不正事案の調査報告書において比較的挙げられることが多い原因および再発防止策を抽出し、具体的な品質不正予防策を例示的に示すことを目的とする。

コンプライアンス

公表の要否と適否を考える
データ偽装発覚直後の対応
山内洋嗣・千原 剛

近時、日本企業においてデータ偽装問題が相次いで発覚したことは記憶に新しいが、本稿では、データ偽装問題が発覚した「直後」において企業に求められる対応、とりわけ、発覚したデータ偽装を公表する必要があるのか否か、必要がないとしても公表することの適否はいかに判断すべきかを論じたい。

コンプライアンス

補償の範囲と再発防止策の実効性の検証
データ偽装問題の事後処理
宮谷 隆・山内洋嗣・金山貴昭

データ偽装が発覚した多くの企業においては、その偽装の内容を早急に調査し、原因を究明し、再発防止策を策定することになる。近時、日本企業においてデータ偽装の発覚が続いたこともあり、そのようなプレスリリースや不正調査報告書は数多く公表されている。一方で、データ偽装を起こした企業は、このように調査を実施するとともに、その内容をふまえ、取引先やエンドユーザー向けに補償対応を行う必要が出てくる。これらについては、第一義的には法的な損害賠償義務の検討を前提に、影響の内容や取引先との関係などに応じて個別具体的に折衝・対応を行うことになる。さらに、企業として、上述した再発防止策の策定より重要なのは、再発防止策の履践・その実効性の検証(場合によっては、再発防止策の見直し)である。当初の再発防止策の策定は「点」であるが、その履践・実効性検証は「線」として何年間も継続することになる。真の信頼回復は、再発防止策がしかるべく行われてこそ果たされる(後記II)。この2点については、不正調査の手法や結果そのものや原因究明・再発防止策の内容と違い、必ずしも公表情報が豊富なわけではない。本稿では、上記の取引先やエンドユーザー向けの対応、再発防止策の履践・その実効性検証について、当職らの経験・知見に基づき理論面・実践面の両面からアプローチしたい。

実務解説

コンプライアンス

「上場会社における不祥事予防のプリンシプル」対応上の留意点(下)
塩崎彰久・眞武慶彦

前号に続いて、本稿では「上場会社における不祥事予防のプリンシプル」(以下「本プリンシプル」という)の原則3以下について、その趣旨に関する解説を加えるとともに、それらを企業のコンプライアンス体制の強化に役立てていくうえでの実務上のポイントについて論じる。

知財

標準必須特許(SEP)利用・交渉における実務ポイント
石原尚子

Internet of Things(IoT)の利活用に向けて、標準必須特許およびそのライセンスについて注目が集まっている。欧州における複数の競争法関係調査事件や裁判例を受けて、欧州委員会による標準必須特許ライセンスについての政策ペーパーが発表され、日本特許庁も標準必須特許ライセンスの手引きの策定を進めている。本稿では、標準必須特許とそのライセンスの特性を理解し、欧州委員会や日本特許庁が提示するベストプラクティスをふまえて、法務担当者が押さえておきたい要点を整理する。

コンプライアンス

グローバル水準の不正調査のあり方
─"ガラパゴス的対応"からの脱却を
小林英明・深水大輔

グローバル化が進んだ今日では、製造した製品のサプライチェーンが国内にとどまらず海外にも及ぶなど、事業活動が何らかの形で海外との接点を持つ企業が多い。このような企業において不祥事が発覚すると、その不祥事は海外においても不祥事として取り上げられ、海外で損害賠償請求訴訟を提起されたり、海外当局から調査を受けたりするリスクが生じる。そのため、その不祥事対応、不正調査についても、このようなグローバルリスクについての十分な知識と対応が必要となる。しかし、これまでの日本の不祥事対応、不正調査においては、このグローバルリスクへの対応が十分とはいえないまま実施されるケースが多かったといえる。不正調査については、日本弁護士連合会が「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」(2010年12月17日改訂、以下「日弁連ガイドライン」という)を制定しており、それに準拠して不正調査を行う企業が少なくないものの、このガイドラインにおいては、グローバルリスクへの対応が想定されていないことから、グローバル企業がこのガイドラインに準拠して不正調査を行うことには大きなリスクを伴う。これまでの日本の不正調査の多くは、今日においては、いわば「ガラパゴス的不正調査」であったことを自覚し、そこから脱却し、グローバルリスクにも十分に対応した「グローバル水準の不正調査」を実施する必要がある。

テクノロジー・AI

「AI・データの利用に関する契約ガイドライン(AI編)」(案)に読むAI開発契約実務の課題
柿沼太一

機械学習・深層学習を利用したソフトウェア(以下「AIソフトウェア」という)の開発については、権利関係・責任関係についての確立した法解釈や契約慣行がないため、開発契約交渉が難航したり頓挫したりするケースなどがままある。本稿は、経済産業省が公表した「AI・データの利用に関する契約ガイドライン(AI編)」(案)(以下単に「ガイドライン」という)を題材に、AI開発契約実務の課題と解決の方向性について解説するものである。

LAWの論点
人材市場における労働法と独占禁止法の役割
─「人材と競争政策に関する検討会報告書」をふまえて
労働法 競争法・独禁法

荒木尚志

芸能人やスポーツ選手の移籍問題をはじめ、人材市場規制に公正取引委員会が乗り出すかと、各種メディアで注目されていた公正取引委員会・競争政策研究センターの「人材と競争政策に関する検討会報告書」(座長:泉水文雄神戸大学教授。以下「報告書」という)が2018年2月15日に公表された。 もっとも、同報告書は、芸能界やスポーツ界等の特定の業界の人材取引問題に焦点を当てたものではなく、役務提供者たる人材をめぐる市場(人材市場)における人材獲得競争全般について、独占禁止法(以下「独禁法」という)の適用の基本的な考え方を、労働法との関係もふまえて、整理したものである。

地平線
新コード、対話ガイドラインが求める「待ったなし」の経営改革
会社法

三瓶裕喜

新コーポレートガバナンス・コードでは、従前の73項目のうち10項目が改訂され、5項目が新設された。企業は部分最適的に改訂・新設項目のコンプライ・オア・エクスプレインを検討するのではなく、今一度全体を俯瞰して再考することが重要である。投資家は「投資家と企業の対話ガイドライン」に沿って順に質問するのではなく、個々の企業の状況によって課題、優先順位、適切な時間軸が異なることをふまえ、焦点を絞り企業価値向上への取組全体の整合性を検証する姿勢で対話に臨むべきである。ガイドラインには、3つの重要なメッセージが込められていると理解する。

トレンド・アイ
指導と暴力の境目は?
スポーツにおけるパワハラ認定
労働法

関谷健太朗

近時、ハラスメントの問題は企業にとどまらず、スポーツにおいても問題となっており、特にパワーハラスメント(パワハラ)に対する社会的な注目が集まっている。たとえば、女子レスリングにおけるコーチや選手に対するパワハラ問題は大きく報道された。また、直近では、日本代表の選手が所属している女子アイスホッケークラブチームにおいて、男性コーチによるパワハラがあったとして、当該コーチと監督を含めた指導者全員が解任されるというニュースや、大学のアメリカンフットボール部の監督による選手へのパワハラ報道などがあった。

連載

企業法務総合

LEGALHEADLINES
森・濱田松本法律事務所

2018年4月〜5月

会社法

最新判例アンテナ
第5回 金融商品取引法116条1項5号の「知った」の意義を示したうえで、金融庁長官による課徴金納付決定を取り消した事例(東京高判平29.6.29金商1527号36頁)
三笘 裕・大澤 大

企業法務総合

交渉術・心理学でUP!契約書交渉のキホン
第2回 契約条件の提示と譲歩
米盛泰輔

契約書の交渉において、①最初の条件提示は自分からすべきか、その場合どの程度強気にいくべきか、②相手方からの強気の条件提示にどう対応すべきか、③最初の条件提示と反対提案の後どのように歩み寄るべきか、といった点については、場当たり的に対応しがちです。しかし、交渉術および心理学の知見によれば、これらの点が最終的な交渉結果を大きく左右することが明らかになっています。今回は、このような契約条件の提示と譲歩のテクニックを解説します。

企業法務総合

法務2.0リーガルテックのフロンティア
第1回 リーガルテック活用による契約法務の変化
橘 大地

本連載では、日本を含めた諸外国にて日進月歩で発展するリーガルテックサービスを日本の法務部がいかに活用できるか、また、将来活用を前提として、現在の法務部をどう運営すべきかを問う連載とする。法律と技術の架橋を適切に分析、予測することで、インタラクティブ3性の高い特徴を有する「人間」の活用範囲、教育体制、採用方針等、多岐にわたる今までとは異なる法務部運営が可能となる。現在地点でのリーガルテック事例と、近未来への予測を紹介する。

企業法務総合 国際

海外ドラマ・映画で学ぶ法律英語─日頃からのちょっとずつseason3
第1回 SUITS(その1)
大島忠尚

2015年10月号から2016年3月号のシーズン1。
2016年10月号から2017年3月号のシーズン2。そして、今回なんとシーズン3を開始することになった。これまでのシーズン同様、英語の重要性は十分認識しているが、まとまった勉強時間は取れない法務の方を対象としている。「コツコツが勝つコツ」そんな「日頃からのちょっとずつ」これがこの連載の一貫した趣旨である。少しでもお役に立てるよう、私も知恵を絞っていきたい。どうぞお付き合いください。

会社法

会社法改正議論を追う
最終回 社外取締役関係規定等の新設
西村 賢・中島雪枝・矢野亜里紗

昨今、会社の不祥事が話題になるにつれ、海外機関投資家を中心に、株主の利益を確保する等の観点から、取締役等業務執行者の業務執行に対する監督機能を強化すべきとの声が高まってきており、独立した客観的な立場から会社経営の監督を行い、また、経営者または支配株主と少数株主との間の利益相反の監督を行う者として、社外取締役の役割が重視されてきている。

企業法務総合

Plain English styleで極める英文契約書作成
第5回 動詞や形容詞の過度な「名詞化」を避けよう
キャロル・ローソン・倉田哲郎

今月は、なるべく動詞や形容詞を「名詞化」(nominalization)せずに、法律文章を作成する方法について勉強しよう。文章を書く際に、動詞"notify"や形容詞"complex"などを、必要がないのに"notication"や"complexity"などの名詞に変換してしまうと、文章がより長く、意味もより抽象的になってしまう。また、「名詞化」のプロセスでは、元の動詞や形容詞が消えてしまうため、文章を作る際に、他の補助的な意味しか持たない動詞が、名詞の前の余分な前置詞や冠詞を伴って、必要となってくる。

企業法務総合 国際

読み方・書き方徹底マスター法律中国語・基礎講座
最終回 動詞の手前の「所」、条件(場合)の表現
森川伸吾

テクノロジー・AI

6tech法務の新潮流
最終回 FinTech─改正銀行法による銀行APIの利活用(電子決済等代行業者の新設)
渡邉寛人

平成29年5月26日付けで成立した銀行法の改正(以下「改正銀行法」という)が平成30年6月1日付けで施行された。同法の施行により、いわゆる「銀行によるオープンAPI」を利活用して金融サービスを提供する、「電子決済等代行業」という新たな業種が新設された。電子決済等代行業者は、各銀行にユーザーが開設した口座を介して、ユーザーからの委託を受け、後述の「決済等指図サービス」と「口座情報取得サービス」を行うことができる。同法の施行にあわせて、同日にて、改正銀行法に対応する銀行法施行令(以下「施行令」という)、銀行法施行規則(以下「規則」という)も施行され、これらに対するパブリックコメントの結果も公表された。

民法・PL法等

金融業者の債権法改正対応
第4回 ファンド関連ビジネス
川東憲治・河本秀介・関 泰士

証券会社やアセットマネジャー(以下「証券会社等」という)が取り扱う投資ファンドは、一般的に、複数・多数の投資家から資金を集め、当該資金を用いて不動産や有価証券等に対する投資を行い(以下「運用」という)、それによって得られた利益を投資家に配当ないし分配する仕組みである。投資ファンドを組成・運用する際に用いられる法的枠組みには、組合型、法人型、信託型がある。

コンプライアンス

すぐに使える危機管理の書式
第6回 記者会見の際に必要となる書式

梅津英明・山内洋嗣・大川信太郎

企業が、重大な不正・不祥事を公表したり、その後、それらに関し原因分析や再発防止策を説明する局面においては、適時開示などの書面によるリリースだけではなく、記者会見を行う場合がある。第6回ではこの記者会見に関する書式とその留意点を取り扱う。記者会見は、不正・不祥事への企業の真摯かつ毅然とした対応姿勢をみせる機会であると同時に、対応に失敗すればさらなる批判を招く、極めて重要な機会・局面である。したがって、記者会見においては、企業による説明内容の充実と適切性が最も重要であることはいうまでもない。この点、本稿では、説明内容自体は具体的な不正・不祥事の内容に依存するため深入りしないが、よい内容の記者会見を行うために欠かせないTodoリスト、案内書面、シナリオといった書式について述べる。

ファイナンス

FinTech法からみる銀行業務の将来
最終回 デジタル法貨と銀行
山田剛志

これまで5回にわたり、平成28年銀行法等改正法(以下「FinTech法」という)に基づき、FinTech関連業務が銀行業務をどう変えるかを検討してきた。具体的には、銀行法に従い銀行業務を明らかにして、FinTech関連業務でどう変容するかをみてきた。第1回目から第3回目までは、銀行の固有業務、付随業務、そして子会社によるその他周辺業務について、FinTech法からみる銀行業務の変容を検討した。第4回目は、その他FinTech関連業務を検討して、銀行業務への影響を検討した。第5回目は、仮想通貨交換業を中心に、銀行が取り扱う可能性に言及した。そして、今回は、FinTech法の改正に向けて議論されているように、法定通貨がデジタル通貨となった場合(以下「デジタル法貨」という)、銀行業務がどのように変わるか具体的に検討する。

国際

外国人弁護士世界一周
第13回 ウズベキスタン共和国
シャキロフ・アザマト

漫画やアニメが好きだから日本に興味を持ったのですか?などといった質問をしばしば受けます。しかし、そうではありません。もともと私は自国で検事になろうと思っており、日本には特に興味はありませんでした。それが一転して来日し法律家として日本で働くこととなったのは、大学時代に日本の法整備支援により日本語と日本法を学ぶ機会を得たためです。私は、中央アジアの中心にあるウズベキスタン出身です。日本は開発途上国の法整備支援に力を入れており、ウズベキスタンは法整備支援の重点国となっています。

国際 コンプライアンス

海外最新コンプライアンス事情
第1回 中国
若林 耕・屠 錦寧

中国では、改革開放路線が打ち出されて今年で40年が経過する。中国は、以降海外資本の積極的な導入などを行い、「世界の工場」から2010年にはGDPの規模で日本を抜いて世界第2位の「経済大国」に成長した。「社会主義市場経済」という特殊な市場においても、現在では通常の「資本主義市場経済国家」と肩を並べるほど、市場経済の運営に必要な法制度(2008年施行の「独占禁止法」、2018年施行の改正「不正競争防止法」等)はどんどん整備されつつある。