雑誌詳細

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2018年3月号

2018年1月21日発売号   1,609 円(税込)

特集1

「コンプライ」の質が問われる
株主総会2018

特集2

条項の作り方で「売上計上時期」が変わる
新・収益認識基準契約法務の対応

特集1
「コンプライ」の質が問われる
株主総会2018
会社法

ガバナンスの転換に伴った運営の一新を
2018年の総会環境と実務対応
中村直人

2015年6月にCGコードが施行されて以来、総会のあり方は大きく変わってきた。2017年の総会もその流れの中にある。かつては招集通知等では法律で定められた事項の開示だけを行い、その書きぶりも標準的なひな型どおりであったが、CGコードの施行以来、各社は招集通知に任意の記載を多数掲載するようになり、その内容も各社さまざまである。また総会の運営方法も、以前は法律の定めと会社側の事情という物差しで種々決められていたが、最近では株主の立場に立ってどういう総会が期待されているかという視点で決めることが多くなった。

会社法

全株懇調査にみる
対話型株主総会の現状
中川雅博

コーポレートガバナンス・コード対応の観点で見ると、2017年6月総会はコード施行後3回目の総会となった。2016年の総会までにコード対応をひととおり済ませた会社も多く、全株懇のアンケート調査結果を見ても2016年のような著しい進捗は見られないが、対話型株主総会に向けた取組みは着実に進展している。コード対応は、「コンプライ」の質が問われるステージに移りつつある。

会社法

役員報酬
─制度設計のポイントと付議事項の検討
阿南 剛

役員報酬は平成30年度定時株主総会の重要なテーマの1つである。本稿では、役員報酬に関する近時の動向を振り返ったうえで、新しい役員報酬制度の設計と株主総会への付議について筆者の考える実務上のポイントを述べる。なお、本稿の対象は、特に断らない限り、監査役設置会社の取締役に対する報酬とする。

会社法

スチュワードシップ・コード改訂を踏まえた
議決権行使結果の個別開示状況
依馬直義

2014年2月に制定された「日本版スチュワードシップ・コード」(責任ある機関投資家の諸原則)(以下「SSコード」という)は、2017年5月29日に3年ぶりに改訂された。最も注目を集めた改訂点は、機関投資家による議決権行使賛否結果の個別開示であったことから、その状況について解説する。なお、文中意見にわたる部分は筆者の私見であることをあらかじめお断りしておきたい。

会社法

議決権行使助言業者への反論・補足説明事案の分析
鈴木 裕

2017年の日本版スチュワードシップ・コード改訂により、機関投資家は投資先企業の株主総会における議案の賛否を個別に開示することが求められるようになった。個別開示は、機関投資家が陥っている利益相反状況を可視化することで、利益相反を避ける動機を与える目的で行われる。利益相反を適切に管理しているとの外観を作るためには、外部から情報を購入することが簡易な方法だ。そこで、機関投資家向けに議案の賛否に関して助言を行う議決権行使助言業者の影響力を高めることになったと考えられる。上場企業側では、反対票を少なくする目的で、議決権行使助言業者への反論や、議案の補足説明を行う場合があり、こうした取組みは今後増加するかもしれない。

会社法

株主総会プロセスの電子化に関する最新動向
奥山健志

招集通知の発送や議決権行使といった株主総会プロセスにおける電子化は、単に書面を減らすことでコストを削減したり、紙資源の節約をしたりするだけでなく、会社と株主との間の対話を増加させることにもつながる。最近は、法制審議会会社法制(企業統治等関係)部会でも、次期会社法改正に向けて株主総会資料の電子提供制度の導入に関する議論が行われている。本稿では、株主総会プロセスの電子化に関する最新動向を紹介するとともに、2018年定時株主総会に向けた総会プロセスの電子化について検討する。

会社法

「実質的」なスチュワードシップ活動とESG評価の役割
─運用機関における取組みの現在
林 寿和

昨今、議決権行使を含むスチュワードシップ活動の「形式」から「実質」への深化が強く求められている。本稿は、運用機関で実務に携わる立場から、中長期の企業価値向上を促す「実質的」なスチュワードシップ活動に向けて、その主要な構成要素である「投資先企業の状況把握」「目的をもった対話」「議決権行使」を、三位一体の活動として捉えることの重要性を論じる。さらに、三位一体の活動を支えるための実施体制についても私見を述べる。

会社法

企業価値評価、女性役員起用、データ改ざん等不正行為
2018年想定問答
小川尚史

本稿では、近時話題となっている事項として、ROEスプレッド、企業価値向上表彰、伊藤レポート2.0、価値協創ガイダンス、監査等委員会設置会社への移行と社外取締役比率、内部通報制度の実効性確保、データ改ざん等の不正行為等のテーマを取り上げ、想定問答を検討する。なお、本稿の記載のうち意見にわたる部分は筆者の個人的見解であり、筆者の所属する法律事務所の見解ではない。

特集2
条項の作り方で「売上計上時期」が変わる
新・収益認識基準契約法務の対応
企業法務総合

早わかり解説
「収益認識に関する会計基準」とは
片山智裕

2017年7月に公表された公開草案「収益認識に関する会計基準(案)」が、2018年4月以降の早期適用に向け、間もなく最終基準書として公表される。上場・非上場を問わず国内すべての株式会社に適用されるこの会計基準は、契約に基づいて収益を認識する原理を採用したことで注目されており、法務の担当者や顧問弁護士の役割が重要になる。そこで、普段、会計に馴染みのない法律家に向け、複式簿記の基礎からこの会計基準の動向とポイントまで、やさしく解説してみたい。

企業法務総合

法務部が主導すべき
新基準の契約への適用手順
片山智裕

新しい「収益認識に関する会計基準(案)」(以下「本基準」という)は、契約に基づく収益認識の原則を採用しており、顧客との契約の成立を判定し、契約内容から"履行義務"(≒債務)を識別し、その履行により収益を認識するので、契約条項や法的な強制力が収益認識に大きく影響する。そこで、本基準の概要と適用手順について、法務の担当者や顧問弁護士が理解すべきポイントを解説したい。

企業法務総合

売買契約書見直しのポイント
横張清威

収益認識に関する会計基準が制定されることにより、これまで会社が採用していた売買契約における収益認識時期や額が変化するおそれがある。会計基準が適用されるまでの間に会社の売買契約書を確認し、問題や疑義があれば事前に修正対応しておく必要がある。

企業法務総合

請負・業務委託契約書見直しのポイント
中村慎二

請負契約および業務委託契約は、仕事の完成を目的としつつも、会計上は仕事の進捗割合に応じて収益を認識することが可能な契約類型である。しかし、改正収益認識基準のもとでは、仕事の進捗割合に応じて収益を認識することができる契約であるかどうかについて改めて厳格なチェックを受けることとなる。具体的には、契約の中途解約時に進捗度に応じた報酬請求権を有することが法的に保全されるよう、法務の観点から契約書の見直しを行うことが必要となると思われる。

地平線
金商法年とこれから─FinTechが迫る法変革
ファイナンス

黒沼悦郎

金融商品取引法(金商法)の前身である証券取引法(証取法)が制定されてから70年が経とうとしている。金商法は金融法であるとともに企業法であり、その改正や運用は金融実務と企業実務に大きな影響を与えてきた。証取法は、企業の資金調達を効率的に行わせることで日本の経済成長を支え、国債の大量発行時代にはリスクヘッジの手段を提供した。

トレンド・アイ
ナブテスコの知財経営戦略
IPランドスケープの実践
知財

菊地 修

現在の企業経営環境は、中国に代表される新興国の急激な発展と、第4次産業革命の渦中における技術革新の急速な進展による、市場の覇権争いがグローバルに展開される大変革期を迎えている。経営者はこの市場環境の変化を逸早く把握し、今後の事業戦略の策定や経営体制の再構築を行う必要がある。近年このためのマーケティング手法として「IPランドスケープ」が、欧米の先進企業を中心に活用され始めてきた。

実務解説
会社法

コシダカHD招集手続にみる
会計監査報告・監査報告の提供遅延
弥永真生

未受領の(?)会計監査報告(およびそれを論理的前提とする監査等委員会の監査報告)の謄本を添付した株主総会招集通知を発送したという事案を題材にして、会社法上のいくつかの問題点およびその検討とこのようなことが生ずる背景の分析を試みる。このような場合には、当該株主総会における決議は招集手続の法令違反を理由として取消しうるものとなるが、剰余金の配当等が行われる場合には、取消されることが必ずしも株主の「経済的利益」にはそぐわないことがあることは興味深い。

国際

新規ビジネス・テクノロジー規制が増加
海外法務ニュース2018
石田雅彦

日本企業の海外展開、海外企業のM&Aが拡大傾向であることは論を待たないが、それに加え、最近は、新しいビジネスモデルに対応する各国の規制、法改正等が、歩調を合わせスピーディーに行われる傾向がある。したがって、ボーダーレスの経済環境の中、国内の規制の動向を予想するという意味でも、海外の立法事情への知見の重要性が高まっており、本稿は、このような観点から、特に日本企業にとって知っておくべき海外の法改正、ポイント等について概説を加えるものである。

連載
企業法務総合

LEGALHEADLINES
森・濱田松本法律事務所

2017年11月〜12月

テクノロジー・AI

6tech法務の新潮流
第1回 EdTech
藤江大輔・鈴木 景

テクノロジーの進化が著しい昨今、既存ビジネスもテクノロジーにより進化しているが、このような新たなビジネスでは、既存ビジネスでは検討する必要がなかった法的論点にも気を配る必要がある。そこで、本号から6回に分けて、「6tech法務の新潮流」と題して、事業者が知っておくべき法的論点を紹介する。

税務

法律家のための租税法解釈の落とし穴
第1回 所得税法における「事業」と「業務」の解釈
酒井克彦

租税法は財産権の侵害規範であるといわれることがある。租税法が、憲法の保障する財産権を侵害するものであることからすれば、租税法の条文解釈は厳格になされなければならないことになろう。すなわち、租税法の条文解釈に当たっては、条文を規定通りに素直に解釈すべきとする「文理解釈」が優先され、法の趣旨に応じた柔軟な解釈を展開すべきとする「目的論的解釈」が劣後すると考えられている。

コンプライアンス

すぐに使える危機管理の書式
第1回 証拠の保全~不正探知後すぐに必要になる書式~
藤津康彦・山内洋嗣・塚田智宏

昨今、会計不正やデータ偽装等の企業不祥事が相次いでおり、企業不祥事に対する関係当局を含むステークホルダーの視線はより一層厳しくなってきている。しかし、こうした不祥事が発生した際の危機管理については、企業において蓄積された対応ノウハウはさほど豊富ではないのが現実であり、不祥事に直面した際には、一から必要となる書面を作成することが多い。そこで、本連載においては、以後10回にわたり、当職らが多数の危機管理案件を経験する中で得たノウハウを元にした主要な書式を、企業ごとにアレンジしていただくための解説を付してご紹介する。

ファイナンス

FinTech法からみる銀行業務の将来
第1回 FinTech法と銀行の固有業務
山田剛志

本稿は、平成28年銀行法・資金決済法等改正法(通称FinTech:FinancialTechnology法と呼ばれる。以下「FinTech法」という)に基づき、銀行業務がどのように影響を受けるか、具体的に考察する。FinTech法において、資金決済法が改正され、ビットコインなど仮想通貨についても定義された(資金決済法2条5項1号および2号)。業として仮想通貨の売買・交換等(仮想通貨交換業)を行う場合、内閣総理大臣の登録が必要となった。はたして銀行は、仮想通貨交換業を行うことは可能だろうか。

民法・PL法等

不動産業・建築業の債権法改正対応
第2回 不動産業(売買)(その2)
猿倉健司

前号では、契約不適合責任の概要と同責任に基づく買主の権利行使手段のうち、追完請求および代金減額請求について説明した。本号では、引き続き、損害賠償請求および解除について説明する。

企業法務総合

基礎から学ぶ広告マーケティング法
最終回 健康増進法に基づく食品の誇大広告規制と景品表示法・薬機法の関係
木川和広・藤本啓介

食品の分野では、近年、健康増進法上の誇大広告規制に関する取締りが強化されている。2016年4月1日に施行された改正法により、健康増進法に基づく勧告の権限が、消費者庁長官だけでなく、全国の保健所設置市区の長に拡大されたことで、健康増進法に基づく食品の広告表示に関する行政調査が活発化しており、今後もこの傾向は続くことが予想される。本稿では、景品表示法や薬機法との比較を交えながら、健康増進法に基づく食品の誇大広告規制について解説したい。

国際

外国人弁護士世界一周
第8回ブラジル
カラペト・ホベルト

現在、日中欧米の間以外の地域に関する仕事をするならば、インスピレーションとなる出会いと架け橋になれるモチベーションが必要だと思います。ロースクールに入学直後はあまり学業に熱が入りませんでしたが、1年生の終わりに私の人生に大きく影響する出来事がありました。著作物の適正な再利用の促進を目的とした組織であるCreativeCommonsについてのセミナーに出席し、初めて知的財産と出会ったのです。

税務

法務部員のための税務知識
最終回 税務争訟
岩品信明

企業として税務当局から指摘された修正申告に応じず、また、課税処分に納得できない場合には、再調査請求、審査請求、取消訴訟という一連の税務争訟により、課税処分を争うことになる。税務争訟の段階になると、経理部だけでなく法務部も関与し始め、また、税理士だけでなく弁護士も関与することになる。税務争訟も訴訟の一類型であるが、税務争訟特有の原則や手続があるため、法務部としてあまり馴染みがないと思われる。

企業法務総合 会社法

Next Issueはどこにある? 海外の今を読む
最終回 企業における女性登用の潮流
松井智予

日経新聞によれば、2017年11月、議決権行使助言会社グラスルイスは、2019年から、女性の取締役や監査役の候補者をあげない日本の主要企業の総会において、トピックス100社を皮切りとして段階的に会長もしくは社長の選任議案に反対票を投じるよう投資家に推奨していく予定であることを発表した。議決権行使助言会社は寡占であり、特に、ポートフォリオの一部として日本株を持つことで上場会社にとって重要な株主となりつつある外国人機関投資家は、個別の会社の事情を知って買っているわけではないため、助言に従って議決権を行使するのが一般的である。

企業法務総合 国際

読み方・書き方徹底マスター 法律中国語・基礎講座
第5回 例外、根拠、手段などの表現
森川伸吾

民法・PL法等

要件事実・事実認定論の根本的課題 ── その原点から将来まで
第16回 民法総則における幾つかの問題②─ 新民法(債権関係)における要件事実の若干の問題
伊藤滋夫