SCOPE EYE
本当の財宝とはなにか 原田 泰
論 壇
会計基準のコンバージェンスと企業結合会計――持分プーリング法の廃止案をめぐって 松尾聿正
EU同等性評価への対応と会計基準の方向性
2009年より,EUでは域外企業に対し,IFRSかそれと同等の会計基準を適用することが義務付けられる。2005年のCESRの同等性評価では日本基準とIFRSの差異が26項目指摘されており,日本基準を引き続きEU内で使用するには,この差異を解消しなくてはならない。その解消に向け,ASBJは基準の設定・改訂を急ピッチで進めてきたが,その作業も大詰めを迎えている。
本特集では,これまでの同等性評価への対応により,日本の会計基準がどのように変わったか,その全体像を明らかにする。

EUによる同等性評価とASBJの対応
西川郁生
EUにおける同等性評価項目に係るASBJの基準開発状況
新井武広
企業結合により受け入れた研究開発の途中段階の成果の会計処理等について
豊田俊一
企業結合に関するその他の対応――持分プーリング法の廃止等
小堀一英
賃貸等不動産の時価開示 嶋田和洋
特別企画 サブプライム問題にみる金融市場の課題
サブプライム問題の本質
 
川北英隆
信用格付の役割・利用の変化と利益相反の回避
 
吉川 満
証券化商品を巡る会計上の評価 茂木哲也/
上野佐和子
時事解説
国際会計基準を巡る今後の展望
 
黒澤利武
近時の諸環境の変化を踏まえた買収防衛策の在り方
――企業価値研究会報告書の背景と意味
新原浩朗
連載 純利益vs包括利益――論争の深層を探る(第2回)
収益費用アプローチと「ドイツ型」資産負債アプローチ
――損益計算の「原型」と「派生型」
武田體
Research
知的資産情報と金融機関の信用評価プロセス/評価規準
―実態調査を基礎として(その1)
古賀智敏
與三野禎倫
論文
日本電産の成長戦略と管理会計
上総康行
吉川晃史
民営鉄道の管理会計システム 片岡健治
書評
『変貌する現代会計』石川純治 著
 
武田體
『財務会計の理論と実証』ウィリアム・R・スコット 著 奥村雅史
学会ルポ
日本経営ディスクロージャー研究学会第10回年次大会 田中智徳
日本簿記学会第24回関東部会 成川正晃
日本内部統制研究学会第1回年次大会 山崎秀彦

Color Section

三角波
 インセンティブのねじれについて
アウトサイド
 新興企業向け市場の低迷 前田昌孝
会計時評
 開示事例にみるストック・オプション会計の諸問題(2) 竹口圭輔
経理・財務最前線
 内部統制の有効性評価への課題 岡 恭彦
知っておきたい環境会計
 気候変動リスクに関する投資家向け情報開示 水口 剛
不正経理の手口と対策
 不正な循環取引における対応策 松澤公貴
サロン・ド・クリティーク
 利益の質に関する実証研究(1) 海老原崇
ASBJ 企業会計基準委員会ニュース

相談室
〔会計実務〕 新しいリース会計基準について(その2) 西田俊之
〔会社法務〕 有価証券報告書等の虚偽記載に関する裁判例 横田真一朗

編集室より
△ASBJでは,EU同等性評価に関連する会計基準改定作業が大詰めを迎えており,企業結合や投資不動産など残された項目についても本年中に作業が終了する予定です。特集では,これら一連の改訂により,会計基準がどのように変貌したか,明らかにしました。今後はさらに,中長期を見据えたコンバージェンスへの取組みが本格化するものと見込まれます。この9月にはASBJより新しいプロジェクト計画表が公表され,2010年までの検討計画が明らかになりました。IFRSの国内適用も検討されているところで,会計制度をめぐるこれからの動きに目が離せません。

△さる9月15日,アメリカ証券大手リーマン・ブラザーズが,サブプライム問題の影響を受け,経営破たんしました。2007年夏にアメリカの住宅ローンの焦げ付きから発生したこの問題は,その後世界全体に波及し,未だその展開に予断を許さない状況といえます。現在,欧米ではサブプライム問題の一因とされる信用格付や証券化商品の会計上の評価問題について報告書等の取り纏めが始まっています。本誌特別企画では,これらの検討状況を明らかにするとともに,今後金融市場でどのような対策が講じられていくべきか考察しました。

△平成17年2月に発効した京都議定書により,日本は温暖化ガスを1990年比で6%削減する義務を負いました。この目標を達成するためのひとつの有効な手段として,排出量取引が挙げられており,経済界の自主的な取組みの他,この10月には政府主導で国内排出量取引の実験が行われる予定です。ただ,排出量取引はその考え方や仕組みが複雑で,実務上も不透明な部分が多く残されています。次号特集では,排出量取引をめぐる国内外の状況を整理しながら,会計・税務上の課題を考察します。

◇企業会計2008年12月号のご案内
特集=排出量取引の現状と会計課題


排出量取引をめぐる会計上の論点 黒川行治/排出量取引の現状と将来課題 中村義人/排出量に関する会計処理の実態と課題大串卓矢/排出量取引をめぐる税務問題 高城慎一/EU排出量取引と会計処理の問題点 村井秀樹