SCOPE EYE

 金融コングロマリット時代への課題

翁 百合


論  壇

 収益の認識をめぐる概念フレームワーク

辻山栄子


特  集  企業価値を高める コーポレート・ガバナンス

Summary  
近時のコーポレート・ガバナンス問題は,不祥事への対応のみならず,そのあり方如何が企業価値を左右するとの世界共通認識のもとに議論が展開している。日本企業においても,さまざまな社会事件や新会社法等の制度改革とも相俟って,どのように設計・運用すべきか重大な岐路に立たされているといえよう。
本特集では,日本企業のガバナンス・システムの現状とその評価を概観した上で,企業価値向上に資するあるべき姿を各種制度改革の動向を踏まえ浮き彫りにする。

 日本のコーポレート・ガバナンス――ガバナンスと企業業績 

若杉敬明

 取締役会の構成と取締役の責任――ソフトロー研究との架橋の視点から 

野田 博

 社外取締役・社外監査役と内部統制・内部監査・コンプライアンス
 
――敵対的買収におけるコーポレート・ガバナンスの問題とともに 

岩倉正和

  上場企業にみるコーポレート・ガバナンスの実効性 

関 孝哉

  ガバナンス格付けによる企業と投資家への影響 

米山徹幸

  ステークホルダーとガバナンス――会社法の課題 

田中 亘


時事解説

  ASBJとIASBのコンバージェンス・プロジェクトについて
  ――第1フェーズの検討項目と今後の取組み
 

新井武広

  日本公認会計士協会「監査リスクモデル等に関する改正監査基準委員会報告書」の解説 

加藤 厚

 日本公認会計士協会・IT業界における特殊な取引検討プロジェクトチーム報告
  「情報サービス産業における監査上の諸問題について」の解説

柴谷哲朗

OPINION

 京セラのアメーバ経営と利益連鎖管理(PCM) 

上總康行/澤邉紀生


会計制度Review

 討議資料「財務会計の概念フレームワーク」の苦心と本音 

石川純治

実務解説

  米国企業における内部統制報告書の事例分析 

奥村裕司

 京都議定書と企業に求められる対応    

松尾幸喜

故事に学ぶマーケットacc  

楽観売り悲観買い――貪欲と恐怖

羽村 進

Color Section

三角波
 会社法改正による企業会計への影響

アウトサイド
 
「まずは防衛策」への戸惑い 前田昌孝
会計時評

 
内部統制報告制度の見直し 町田祥弘
経理・財務最前線

 
電通の情報セキュリティ委員会 塚本知行
JICPAレポート
 
ITイノベーションへの対応――IT委員会の取組み 木勇三
IASB――基準設定の舞台裏

 
オペレーティング・リースと引当金(その4) (鳥飼裕一)
ゲーム理論で考える企業会計

 
会計基準についての2つの見方 (田村威文)
サロン・ド・クリティーク

 
リース会計(1)――オンバランス化の根拠と資産認識の範囲 坂井映子


学会ルポ

 日本会計研究学会第75回九州部会

福川裕徳

相談室

 〔会社法務〕 新不動産登記法の概要

早川 学

BOOK REVIEW

 『利益会計論――公正価値評価と業績報告』  草野真樹 著

井上良二

 『会計改革とリスク社会』  澤邉紀生 著 

柴 健次

 『生命保険会計2004』  吉野智市 著 

児島幸治



編集室より
さる5月17日,会社法案が一部修正され衆議院を通過しました。修正内容は,利益供与を行った取締役の責任の無過失責任化,自己株式の市場売却規定の削除,株主代表訴訟却下事由の一部削除等の現行規定を維持するものです。郵政民営化法案の余波が心配されるものの,ようやく先が見えてきた感があります。こうなると,早く施行規則≠ェ見たくなるのは小誌のみでしょうか。いよいよ本番です。
今6月の株主総会では敵対的買収防衛策を提案する企業が多数みられる一方,市場は目先の防衛策に否定的で中長期的な企業価値向上に関心が集まっています。その一環となるガバナンス・システムの構築・運用は,上記新会社法や内部統制論議の動向とあいまって企業の喫緊の課題といえましょう。本号特集では,企業価値を高めるガバナンスのあり方を多面的に検討しました。ご活用ください。
4月末,CESR(欧州証券規制当局委員会)は,日本の会計基準を国際会計基準と基本的に同等と認めつつも,連結,企業結合やストック・オプションなどの差異に関する補完措置を求める案を公表しました。会計基準の国際的コンバージェンスが進む中,今回の案がこの動きを加速させるのか,逆に同等だから並存する状態が続くのか,12月に最終決着するまで,議論の帰趨が注目されます。

『企業会計』2005年8月号のご案内

◆特集◆新会社法と財務戦略


 今通常国会で成立が見込まれる新会社法では,資金調達方法に関する規定(株式・新株予約権・社債)の大幅な見直しや,M&Aにかかわる規定等が企業財務に大きな影響を及ぼすと思われる。これらの改正は,会社の自由度を高めるため多様な選択肢が用意され,どのように対応するかが,実務での大きな関心事となっている。
 本特集では,新会社法の財務への影響を概観した上で,重要論点やケースごとに,企業の財務戦略への活かし方を検討する。


新会社法における財務への影響/小川一夫 組織再編と財務の一体化/竹埜正文 資本政策と配当/石塚洋之 M&A戦略/中村直人 ベンチャー企業(公開準備企業)のファイナンス/森田耕司