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日米租税条約の改定について

   

 日米租税条約の改定について
 さる11月に署名された日米新租税条約は、1971年の条約締結以来32年ぶりの大改定であった。日米間の直接投資を促進することを通じたわが国経済活性化への好影響が期待されている。日米両国政府は、米国において今議会での批准、日本において次期通常国会での批准を経て批准書の交換をもって発効する。早ければ,源泉所得税については平成16年7月1日からの適用開始となる可能性がある。

利子・配当・使用料への源泉地国課税の軽減
 新条約の最大のポイントは、投資所得(配当、利子、使用料)に関する源泉地国課税の大幅な軽減である。
 配当について、現行条約では、持株割合10%以上の会社からの配当にかかる源泉徴収税率は10%である。また、持株割合10%未満の会社からの配当は、15%である。新条約では、持株割合50%超の会社からの配当については免除(0%)、持分割合10%以上50%以下の会社からの配当について5%、持株割合10%未満のものについて10%となる。新条約が適用されれば直接投資が約4,800 億円の出超である日本側の米国に納める税が相当減少することとなる。また、持株割合50%超については源泉徴収免除となったことから、従来問題となっていた米国における支店の留保益課税も解消されることとなる。
 利子については、銀行、保険、登録を受けた証券会社等に支払われるものは源泉地国免税となった。この結果、配当と同様に従来問題となっていた、米国の支店から日本の本店への支払利子に対する課税は、上記の金融機関等については、免税となることが明確になった。
 特許権等の使用料(ロイヤリティ)については、現行は10%の源泉徴収税を課していたが、今回の新租税条約で一律免税とされた。


移転価格税制における調査開始時期の制限
 これまで移転価格税制については、米国では、その調査開始時期について、実質上全く制限がなかった。そのため、日本企業からみれば、租税法上の地位が不安定で、帳簿の長期保存を余儀なくされる等の負担が重く、しかも更正処分の結果、延滞利子税を課されるおそれもあった。
 新条約では、課税年度終了時から7年以内に調査が開始されない事案については、移転価格税制における課税処分を行わないとされた。


恩典制限条項(LOB :Limitationon Benefits )の導入

 現行条約では、居住者の要件を満たせば租税条約上の恩典を受けることができることとされている。これでは、トリーティーショッピング等の濫用を防止できないことから、新条約では、条約上の恩典を受けるための要件として、居住者要件に加え、
@主体に関する要件として適格者基準、A所得に対する基準として能動的事業活動基準を設け、B権限ある当局の認定(いわゆるバスケット条項)のいずれかに該当することを要求することとされた。
 適格者基準では、個人、国・地方公共団体等は無条件で基準を満たすとする一方、法人については、一定の公開会社に限る等の措置を取っている。また、能動的事業活動基準では、居住地国で営業、事業の活動に能動的に従事し、その取得する所得が当該営業などの活動に関連・付随し、かつ、条約の特定に関する要件を満たしていることとしている。

〈Y.O 〉