Accounting News

11月理事会

 2003年11月18、19日にロンドンで開催。

 ・ 企業結合

 共同支配(IAS31)の適用によってパーチェス法を逃れる行為を防止するため、共同支配を認める要件を強化することを決定。戦略的重要事項だけでなく、すべての財務、投資、運営にかかわる事項について全会一致での合意を契約に定めた場合のみ共同支配を認めるようIAS31を改訂する。

 今回の改訂にあたり決定された処理とIAS36(投資の減損)の改訂草案で要求される回収可能価額、使用価値の考え方に齟齬が生じているため、IAS36草案を今回の改訂に合わせて改訂することとした。

 ・ 保険会計

 公開草案へのコメントとして保険者の資産と負債の測定方法に不一致が生じるケース(「ミスマッチ」と呼ばれる)が多数あげられており、12月にかけて検討を続けることとした。また、再保険にかかわる資産と負債とを相殺しないことを再確認したが、再保険の定義については12月にかけて討議していく。

既存基準の改訂状況

 IFRS情報購読会員はホームページ(パスワードが必要)で改訂最終案の閲覧が可能になっている。作業が終了した基準から順次掲載されており、12月8日現在では以下のものが掲載されている。

 IAS17(リース)

 IAS28(関連会社に対する投資)

 IAS31(ジョイント・ベンチャーに対する持分)

 IAS40(投資不動産)

 

年金制度および他の退職後給付に関する雇用者の開示

 FASBは,基準書第132号(同名)を改訂する表題の公開草案を2003年9月に発表し,提出された意見を検討して同年12月中には最終基準書を公表する計画である。

 FASBは2003年12月初旬現在,基準書第132号が要求する開示に加えて,次のような開示を要求するよう暫定的に決定した。

 ・ 制度資産

  持分証券,負債証券,不動産および他の資産の主要な分類ごとの百分比と,採用する投資戦略および方針(使用するときは目標配分比を含む),投資目標,リスク管理方針,デリバティブの使用,分散および制度資産と給付債務の関係を含み,認められまた禁じられる投資種類の記述。

  制度資産の予測長期収益率を決定するために使用した基礎の記述。過去の実績に基づいて収益率を決定した範囲,それに修正を行った範囲および修正を行った方法を含む。

  市場リスクおよび予測長期収益率を理解するのに有用な場合にはより細かい内訳の開示を奨励する。

 ・ 給付債務

  給付建(確定給付)年金制度については累積給付債務。

  将来5年度の各年度およびその後の5年度間における予測給付支払額。給付支払額の計算にあたっては,給付債務の測定および将来における従業員の勤務の見積りに使用したものと同一の仮定を使用する。

  妥当な見積りが出来次第,翌年度の基金への予測拠出総額。

 ・ その他

  制度資産の公正価額と給付債務の期首と期末残高の間の調整表(第132号の要求と同じ)。

  給付債務を決定するために使用した仮定の一覧表と年金費用純額を決定するために使用した仮定の一覧表。

  少なくとも過半を構成する制度資産と給付債務の測定日。

 ・ 中間開示

  年金および他の退職後給付費用の構成(勤務費用,利息費用,予測資産収益など)。

  基金拠出額。前に開示した金額と相当異なるときは当年度中に予測する拠出額も開示する。

 ・ 発効日と経過措置

  制度資産の分類ごとの資産配分,配分目標を含む投資戦略および制度資産収益を決定するために使用した基礎と,測定日および仮定に関しては,国内の制度は2003年12月15日後終了する年度。国外の制度および非公開企業は2004年6月15日後に終了する年度。

  累積給付債務と見積拠出額に関しては,国内の制度は2003年12月15日後終了する年度。国外の制度および非公開企業は2004年6月15日後に終了する年度。将来の給付支給額に関しては双方とも2004年6月15日後に終了する年度。

  中間開示に関しては,双方とも2003年12月15日後開始する四半期。

  経過措置に関連して,従来国内の制度と国外の制度を結合して開示してきた企業は,経過的に国内と国外の制度を区分表示するよう要求される。

 同草案は,第132号の要求は不十分だとして年金資産,債務,キャッシュ・フロー,および純給付費用に関するより多くの情報を求める財務諸表利用者の要求に応えて開発された。

 第132号の年金資産および給付債務に関する期首・期末残高間の変動分析の開示要求を廃止し,それに代わり,年金資産および給付債務の期末残高,資産の実際収益,給付支払額,雇用者・従業員の拠出高その他多くの新しい開示を求めている。

 制度資産を最低に分類して開示し,投資リスクまたは期待長期収益率を理解するのに有用だと期待されるときは,より細かな分類および特定資産に関する追加情報の開示を奨励する。また,前述の分類について,○a貸借対照表表示日現在における制度資産の公正価額の百分比,○b加重平均で示した目標配分率または配分率の幅,○c加重平均で示した期待長期収益率を表示し,すべての負債証券については満期日または期間の幅と加重平均の開示を求める。また,制度資産の満期と給付支払時期の調整を含む,投資戦略および方針の開示を奨励する。

 貸借対照表各表示日については,従来は最小負債の計算目的にのみ使用していた累積給付債務の開示を求める。

 ○a直近の貸借対照表日後5年間の各年度中とその後における見積将来給付支払額,その合計を現在価値に引き直すために必要な割引額,○b直近年度の次年度中に支払うと予測される@規則または法律が要求する拠出額,A自由裁量による追加拠出額,B拠出総額および非現金拠出の記述を求める。

 草案はまた,表形式により(測定日現在で給付債務測定に使った仮定と年度の給付費用測定に使った仮定を区分して)予定割引率,予定昇給率および制度資産の期待長期収益率を求める。開示は,すべての給付建年金制度とすべての他の退職後給付制度について加重平均により報告する。この要求は現行のものと変わらないが,情報の明確化を求める。

 原則として測定日の開示を要求しないが,貸借対照表日現在で測定したときには制度資産,給付債務および純期間費用に重要な影響を及ぼすはずの経済事象または経済状況変動が測定日と貸借対照表日の間に起きたときは開示し,重要な変動の性格も記述することを要求する。

 非公開企業については制限された開示要求を継続するが,新たな要求に関しては,中間期間の開示を除いてすべて要求する。公開企業に関しては,中間期間について,○a勤務費用,利息費用,期待収益,数理計算差異認識額,経過債権債務償却額,過去勤務費用償却額,清算・縮減による損益を区分して認識した給付費用,○b雇用者拠出額の開示を求める。

 FASBは,2003年中に基準書を発行し,2003年12月15日後開始する事業年度(中間期間については同年度の第1中間期間)から適用するよう提案している。

 

企業会計基準委員会,企業結合専門委員会および事業分離専門委員会を設置し審議を開始

 平成15年10月31日に企業会計審議会から「企業結合に係る会計基準」が公表され、企業会計基準委員会で当該基準に関する適用指針等の開発を行うこととなったことを受け,上記2つの専門委員会が11月7日の企業会計委員会で設置され(ともに西川郁生専門委員長),審議が開始された。

 当該基準の実施時期は平成18年4月1日以後開始事業年度とされているが、企業結合に関しては、検討すべき論点が多岐にわたることから、作業効率を高めるため、2つの専門委員会を設置することとした。

 なお、会計基準等の開発は実施時期の1年程度前の平成17年3月頃に完了することを予定している。

減損会計適用指針の訂正

 平成15年10月31日付で公表された企業会計基準適用指針第6号「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」に下記の誤植があった。なお、すべて表記にかかわるもので,内容には影響はない。

 @ 第17項

 (誤) また,のれんの帳簿価額を各資産グループに配分する方法を採用した場合には,(中略)、当該配分された各資産又は資産グループに第12項から第15項における事象がある場合、減損の兆候があることとなる。

 (正) また,のれんの帳簿価額を各資産グループに配分する方法を採用した場合には,(中略)、当該配分された各資産グループに第12項から第15項における事象がある場合、減損の兆候があることとなる。

 A 第107項3

 (誤) 減損損失の測定において,回収可能価額のうち使用価値を算定するあたり,使用後の処分によって生ずると見込まれる将来キャッシュ・フロー(第31項2参照)

 (正) 減損損失の測定において,回収可能価額のうち使用価値を算定するにあたり,使用後の処分によって生ずると見込まれる将来キャッシュ・フロー(第31項2参照)

 B [設例2]

 (誤) 資産グループ中の主要な資産以外の構成資産の経済的残存使用年数(30年)が,主要な資産の経済的残存使用年数(25年)を越える場合には、(以下略)

 (正) 資産グループ中の主要な資産以外の構成資産の経済的残存使用年数(30年)が,主要な資産の経済的残存使用年数(25年)を超える場合には、(以下略)

 C [設例5]表中4箇所

 (誤) キュッシュ・フロー

 (正) キャッシュ・フロー

 

AICPA ,教育能力評価に関するウェブ・サイトを立ち上げ

 アメリカ公認会計士協会(AICPA)は,2003年11月13日,教育能力評価(ECA)に関するウェブ・サイトを立ち上げた。同サイトは,会計および監査教育に携わる者を支援し,経験の浅い会計士が必要としている程度の実務上の能力を,大学等の高等教育機関における教育プログラムまたは各会計事務所等の研修プログラムにおいて習得できるようにすることを目的としている。

 AICPAでは,以前からアメリカ会計学会と連携して「AICPAコア能力フレームワーク・プロジェクト」に取り組み,会計士として必要な能力のフレームワーク作りを進めてきていたところであり,同サイトの内容は,これに基づくものである。同サイトには,評価および教育戦略のための素材,包括的な文献リスト,ならびに学生の成績評価および教育プログラムの到達範囲に関するガイダンスが示されている。AICPAのこのような取組みは,エンロン事件以降の会計不信の状況を受けて,監査実務の底上げを図ろうとするものであるとともに,国際会計士連盟が国際教育基準を公表し,会計士教育の国際標準化を図ろうとしていることへの対応という側面もある。

日本公認会計士協会,経営研究調査会研究報告第20号「再生計画の策定及び検証について(中間報告)」を公表

 日本公認会計士協会は,平成15年10月6日付で,上記研究報告を公表した。本研究報告は,民事再生法等の法的手続による再生もしくは私的再生にあたり策定される再生計画について、公認会計士が再生支援業務や検証業務を行う際の留意事項をとりまとめたもので,今後も調査研究を進め最終報告をとりまとめる予定。

 

日本公認会計士協会,下記の監査委員会報告等を公表

 1 監査委員会研究報告第15号「経営環境等に関連した固有リスク・チェックリスト」について

 上記は,平成15年11月4日付で公表された。本研究報告は,平成14年の監査基準改訂を受け,各種研究報告が見直されていることを踏まえ、平成8年7月4日付で公表された監査委員会研究報告第5号「経営環境チェックリスト」を見直し,新たな監査委員会研究報告として公表されたものである。

 なお、本研究報告を使用する際には,会社の実情を十分考慮した上で、必要に応じ質問事項を補足または修正することが必要であるとしている。

 2 監査委員会研究報告第16号「統制リスクの評価手法」について

 上記は平成15年11月4日付で公表された。本研究報告は、平成14年の監査基準改訂を受け,各種研究報告が見直されていることを踏まえ,平成9年12月8日付で公表された監査委員会研究報告第7号「内部統制の有効性の評価について」を見直し,新たな監査委員会研究報告として公表されたものである。

 本研究報告は,監査人が監査の実施にあたり,統制リスクの評価に関連して具体的に実施すべき手続および留意すべき事項を掲げるとともに,評価過程における監査調書の書式等を例示している。

 3 監査委員会報告第80号「産業活力再生法に基づく会計監査に係る監査上の取扱い」

 上記は平成15年12月9日付で公表された。これは,同年4月に産業活力再生特別措置法が改正され,従来から支援対象であった「事業再構築計画」のほか,過剰供給構造解消のための「共同事業再編計画」および事業早期再生のための「経営資源再活用計画」が新たに支援対象に加えられるとともに,各計画の認定基準と支援措置が明らかにされている。また債権放棄を含むこれらの計画の実施状況について産業活力再生特別措置法に基づき,半期および事業年度終了後三カ月以内に、公認会計士または監査法人の監査を受けた貸借対照表および損益計算書を添付して主務大臣に半期報告書および年次報告を行うことが義務付けられた。

 本報告は、産業活力再生特別措置法の適用により初めて監査を受ける会社を対象として,公認会計士または監査法人が、当該半期報告および年次報告において添付される貸借対照表および損益計算書に係る監査を行う場合に留意すべき事項を明らかにするとともに、監査報告書の文例を示すものである。

 なお,本報告は平成15年12月9日以後提出される中間貸借対照表および中間損益計算書に係る中間監査または貸借対照表および損益計算書に係る監査から適用される。

「監査役監査基準の改定」の公開草案、公開される

 日本監査役協会は平成15年12月12日「監査役監査基準の改定」案を協会ホームページ上で公表し会員監査役および広く一般からの意見を求めている(意見募集期間:平成16年1月16日締切)。

「監査役監査基準」については昭和49年の商法改正において、監査役に業務監査権限が復活されると同時に制定されて以降、監査役の監査実務の基準、行動指針として監査役実務をリードする役割を果たしてきている。しかしながら、近時、監査役の機能強化を図る商法改正の一方で監査役設置会社に対峙する形で委員会等設置会社の選択を認める商法改正が行われるなど、コーポレート・ガバナンスにおける監査役の役割については期待感とともに責務の果たし方への問いかけもあった。そこで日本監査役協会・監査法規委員会(委員長;株b川製紙所 大川博通氏)では,監査役が今日的に期待されている役割と責務を明確にしその具体的行動指針を示すべく監査役監査基準の全面改定を行うこととした。

 改定方針として「内外から評価される監査実務のあり方、責任のとれる監査のあり方を明示することを目指し、企業不祥事を防止し健全で持続的な成長を確保することが基本責務である」とした。具体的には適法性・妥当性監査論争の呪縛から離れ「執行とは独立の立場から取締役の職務執行を監査すること、その際取締役の善管注意義務履行の判断基準として経営判断の原則の観点を監査基準とすること」「内部統制システムの構築と運用を監査し活用する立場にあること」また、株主総会での監査報告にとどまらず「企業の市場への情報開示の適正性、透明性及び信頼性を監査すること」等を明確にしている。

 

東証、中期経営計画(2003〜2005年度)の見直しを発表

 東証では、2003年11月18日、中期経営計画(2003〜2005年度)の見直しを発表した。内容は以下のとおりである。

 東証では、経営環境の変化等に適切に対応するため、中期経営計画について毎年度改定するローリング方式を採用しているが、昨今の情勢の変化に対応するため、修正計画を策定した。

 主な修正要因は、株式売買代金等の増加および設備投資計画の見直しである。株式売買代金等の増加については、株式市況の好転により、計画策定時の予想を上回る売買代金の水準となっていることから、当初の想定数値の見直しを実施した。設備投資計画の見直しについては、株式売買システムおよび相場報道システムの安定稼動を確保するための大規模な緊急能力増強を行うとともに、データセンターの安全性向上および効率的な運用の観点から、新たなデータセンターへの移転を行うものである。

 市場の信頼性を確保・向上させることは、財務基盤の強化と並ぶ東証の重要な経営課題であり、そのための設備投資を積極的に行っていく必要があると考えている。今回の修正により、中期経営計画における2005年度の経営財務目標は、営業収益410億円(当初計画比+11億円)、営業利益45億円(同−2億円)と、営業利益が若干減少するものの、市場の信頼性の確保・向上は、長期的には東証の経営財務数値に好影響を与えるものと考えている。

 

東証、コミュニティ・ミーティングin神戸を開催

 東証では、全国各地の上場会社および地域経済社会との交流・相互理解を深めるとともに、証券市場の魅力向上の一助とすべく、2002年1月より、「東証コミュニティ・ミーティング」を各地で順次開催している。

 2002年の名古屋(1月)、福岡(4月)、札幌(7月)、京都(12月)、2003年の新潟(2月)、高松(6月)および金沢(9月)に引き続き、今回12月2日に神戸にて開催することとした。今回の意見交換の場では、兵庫県における上場会社の代表者と東証との間で、最近の上場関連の施策や今後の証券市場の運営等について意見交換を行った。また、上場会社だけでなく、東証上場に関心のある未上場会社および関係各機関との意見交換もあわせて行っている。

 

東証、反社会的勢力の実態等に関する講演会を開催

 東証では、2001年から2003年までに新規上場された会社を対象として、2004年1月に、反社会的勢力の実態等に関する講演会を開催することとした。

 近年、証券市場においては新規上場会社が増加する傾向にあるが、その一方で、反社会的勢力による証券市場への介入の可能性が指摘されているところである。そこで、当該介入を排除すべく、最近、上場された会社を対象にして、反社会的勢力の実態等に関する講演会を開催することとしたものである。

 

ゆれる地銀の経営――足利銀行一時国有化へ

 2003年11月29日、政府は金融危機対応会議を開催し、足利銀行の経営破綻を認定すると同時に、預金保険法第102条第3号に基づく一時国有化を決定した。かつて一時国有化された銀行は旧日本長期信用銀行と旧日本債券信用銀行だけであり、足利銀行は3行目、地方銀行としては最初である。

 その決定によると、足利銀行の2003年3月末での自己資本額は233億円の債務超過にあった。この5月の決算発表では745億円の自己資本が残っているとされていたものの、金融庁の検査によって要追加償却・引当額の積み増しや税効果資本の減額が必要とされたためである。また9月末中間決算では監査法人が税効果資本の大幅な減額を求めたため、1,023億円の債務超過となった。この結果、9月末の自己資本比率はマイナス3.7%となり、国内基準の4%をはるかに下回った。これが経営破綻の直接の要因である。

 これまで地方銀行で経営不振に陥ったのはすべて第二地銀であり、経営規模が小さいこともあって、銀行業務は受け皿金融機関に移管された。一方、足利銀行は栃木県でのシェア4割に達するトップ地銀であるために受け皿金融機関の選定が難しく、一時国有化の措置がとられたものと考えられる。

 一時国有化にともない、預金保険機構が足利銀行の全株式の保有を公告、既存の株式の価値はなくなった。他方、預金は全額が保護される。また、劣後ローンや劣後債は保護される見込みとされる。

 足利銀行は1998年に300億円(永久劣後債)、1999年に1,050億円(優先株)の公的資金を受けている。また1999年と2000年には栃木県や地元企業に対して合計727億円の増資を行った。これらのうち、劣後債以外の価値はゼロになってしまったわけだ。昨春に公的資金の注入を受けたりそなの場合と異なり、足利銀行への措置は株主にとって厳しいものとなった。

 足利銀行にかぎらず、地方銀行の経営環境は厳しい。日本全体の景気はゆっくりとした回復基調にあるとはいえ、それは東京や中京地区が牽引している。その分、他の地域の景気は依然として芳しくない。しかも、地方経済は特定の産業を基盤としていることが多い。足利銀行の一時国有化の発表にともない、株価が大幅に下落した地方銀行もあった。2005年4月のペイオフ全面解禁予定を前に、金融システムの焦点は大手銀行から地方銀行に移った感がある。

 

政府税調,「平成16年度の税制改正に関する中間報告」を公表

 政府税制調査会(首相の諮問機関,会長:石弘光一橋大学学長)は,平成14年10月6日の第1回総会において,内閣総理大臣から「少子・高齢化やグローバル化等の大きな構造変化に直面しているわが国社会の現状及び将来を見据えつつ,社会共通の費用を広く公平に分かち合うとともに,持続的な経済社会の活性化を実現するため,あるべき税制の具体化に向けた審議を求める」との諮問を受け,検討を続けていたが,平成15年11月27日に開催された第6回総会において,平成16年度税制改正にあたっての指針について,中間的な取りまとめを行った。

「中間報告」で公表された個別税目の改正に係る部分は,概略次のようになっている。

 1 個人所得課税

 1 年金課税等

  給付等の改革も踏まえ,低所得者に適切な配慮を行いつつ,公的年金等控除,老年者控除の縮減を図るべき。

 2 住宅ローン減税

  税負担の大きな不公平,住宅をめぐる環境の変化,将来1兆円となる巨額の財政負担を踏まえ,景気情勢に配慮しつつ縮減すべき。

 3 個人住民税均等割

  生計同一の妻への非課税措置の廃止,税率の引上げおよび人口段階に応じた税率区分の廃止を行うべき。

 2 法人税

 1 不良債権処理に係る税制

 ・ 無税償却基準

  金融機関に与える影響を見極め,企業会計との差異が小さくなるよう見直しの具体化を図る必要。

 ・ 16年間分の繰戻還付

  実質的に金融機関への公的資金の供与にほかならず,課税の公平性を著しく欠くものであり,到底とりえない。

 ・ 繰越期間の延長

  産業構造の改革や不良債権処理の加速という政策課題に真に有効な措置となるかどうか,慎重に検討すべき。

 2 連結付加税

  財政状況を見極める必要はあるが,事業再編の一層の促進を図る観点から,基本的には廃止すべき。

 3 国際的な投資交流の促進

  新たな日米租税条約

   新条約実施の環境整備のため,国内法令を速やかに見直し。今後,他国との条約交渉のモデルに。

 4 その他(租税特別措置等の整理・合理化,課税自主権)