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SCOPE EYE 企業価値におけるCSRの重要性 秋山をね Akiyama One 株式会社インテグレックス代表取締役 Profile
あきやま・をね■1983年慶應義塾大学経済学部卒業。卒業後、米系証券会社に勤務。1998年ファイナンス修士取得。米国駐在の後、2001年6月に社会責任投資の普及および企業社会責任の支援を目的に(株)インテグレックスを設立。米国公認会計士(統一試験合格)。 CSRの世界的な動き
企業社会責任(Corporate
Social Responsibility ,以下「CSR」)への取組みが世界的に進みつつある。本年6月のエビアン・サミットで議題として取り上げられ、国際的な標準化も2007年に予定されている。とはいうものの、CSRとは実際に何を指すのか、何をすることなのかを国際的に普遍性を持たせた形で具体的に定義するのは難しい。なぜなら、CSRは、それぞれの社会とのかかわりにおいて、その内容が決められるべきだからだ。しかし、共通項は、「持続的成長」と「企業の競争力」である。
欧州におけるCSRの目的は、欧州域内の持続的経済成長を実現させることだ。また、CSRをサポートする米国のNPOでは、倫理的価値を尊重し、人・地域社会・自然環境に配慮しながら、ビジネスの成功を達成することをCSRとしている。
競争力としてのCSR
日本でも、CSRは、企業経営にかかわる問題であり、企業と社会の持続的な発展に資するものと捉えられている。仮にCSRの具体的定義が難しいとしても、またはCSRという言葉を意識しない経営者がいても、自らの企業の持続的成長を目指さない経営者はいないだろう。
〔図表〕は、持続的成長のための企業価値を表すモデルである。企業価値とは、経済的な側面、すなわち品質、価格やサービスによる競争力と、社会的な評価、すなわち雇用、人権あるいは地域社会、環境問題への取組みなどからなる。そして、それらを生み出す根源は経営の誠実さと透明性という企業の本質的な価値であることを、モデルは意味している。
経営の誠実さと透明性を担保し機能させる仕組みとして、経営理念・使命を具体化するトップのコミットメント、効率と牽制に支えられたコーポレートガバナンス、社会への説明責任、企業理念実現化のための機能する倫理・コンプライアンス体制といったものを持つ企業こそが、持続的成長のための基本的な条件を持っているといえる。今、日本企業に求められるCSRとは、まさにこういったことだろう。
企業は、まず自らが進むべき道を決め、社会に宣言し、それを誠実にやりきるための体制をつくることが必要だ。すなわち言っていることとやっていることを一致させることである。目標は各企業の理念や力に応じて決めれば良い。しかし決めたことに、はっきりとコミットし、実行できるように社内の体制を作ることが重要である。
そのような体制を作る上で、いくつかの重要なポイントがあるが、ここでは3つをあげる。迅速なリスク情報の把握、情報開示、そして、優先順位付けである。
第1に、目標を達成する上で、どのようなリスクがあるかを把握し、それに適切に対応することが重要だが、企業規模が大きくなり、事業が多岐にわたると、すべてのリスクを洗い出すことは困難になる。したがって、リスク情報を把握するためには、社内のコミュニケーションを高め、情報が入りやすい体制を作ることが必要である。風通しの良い組織であれば、何らかの問題点があっても、それが隠蔽されることもないだろう。
第2の情報開示は、社会とのコミュニケーションである。企業は社会とのかかわりの中で、自分たちがしていること、しようとしていることを社会に説明することが重要であり、そうでなければ社会からの信頼も得られない。何かが起こった時のスピーディーな情報開示はもちろんのこと、基本的な情報開示の手段として、会社案内や決算報告書だけでなく、今後、CSR報告書の果たす役割が大きくなるだろう。
第3は、企業理念・使命から導かれた企業行動の優先順位の確立である。たとえば企業が何らかの緊急事態に陥った時に、会社としての軸がぶれない適切な行動を取るためには、いざという時にどのような価値観、どのステークホルダーを優先するのかを決め、それを社員に浸透させておくことが重要である。緊急時にこそ、企業の社会責任が問われるのである。
適者生存へ
CSRが競争力となるこれからの時代、企業自身のCSR戦略がますます重要になる。なぜならば、企業が、きれいで人目を引く目標を掲げながら、一方で法令違反や不祥事を起こしていたら、手痛いシッペ返しを市場から受けるからだ。CSRというと、〔図表〕の中の社会的側面への取組みだけのことを指すと思われるかもしれないが、それは間違いである。CSRはそのような企業行動の本質をなす企業価値(経営の誠実さと透明性)そのものである。
日本でも、年金運用においてCSRを考慮しようとの動きが出始めている。本年6月に、年金総合研究センターが発表した「コーポレート・ガバナンス・ガイドライン」がそれだ。ガイドラインは、CSRをコーポレート・ガバナンスの大前提であるとし、年金運用におけるCSRの考え方をまとめた。それによれば、CSRとは、企業が、あらゆるステークホルダーに対して、株式会社制度・法令・市場原理・倫理的責任を遵守することであり、広い意味でのコンプライアンスであるとされ、企業が市場へ参加するための最低限のルールであると位置付けられた(注)。
CSR への誠実な取組みについての評価を直接的に反映させたSRI
(Socially Responsibility Investment,社会責任投資)が、今後日本においても浸透してくると思われる。そうした時代においては投資という行為を通じて企業の「適者生存」が進んでいくことになろう。
(注) 「年金基金と企業との対話によるコーポレート・ガバナンス」に関するセミナー資料、2003年6月((財)年金総合研究センター)参考。 |
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