<インターネットで学ぶ会計学>

保証と認証

執筆者:梶原 晃 

  公認会計士の行う保証業務の目的を、国際会計士連盟はその基準案の中で、「職業会計士が、他の一方の当事者の責任である対象事項を適切な規準を用いて評価し、想定される利用者に当該対象事項について一定水準の保証を付与する結論を表明すること」とした。この代表例は環境報告書等の保証業務である。こうした新しい役割と機能が今後の会計士業務の新領域として実務的に期待されている。

 では、認証とは何か。認証とは、第三者が製品やサービスなどが特定の規準を満たすことを文書で表明することである。したがって、時には自己認証や二者間の認証といった表現も見られるが、第三者認証が認証の基本である。また、認証にはシステム認証とパフォーマンス認証という分け方もある。システム認証では採用されているシステムが評価の対象となり、システムの規準適合性を介して間接的にパフォーマンスへの影響を期待する。一方、パフォーマンス認証では、活動の成果、たとえば、製品などを評価の対象とする。認証は、条件がそろえば、会計士業務でいう保証ときわめて近いものとなる。

 ところで、認証制度は世界で多くの分野に採用されている。日本でも、食品における有機農産物認証や産地認証はお馴染みである。また、最近の動きとして森林認証制度も見逃すことができない。

 食品は認証制度が最も成功を収めている分野といってよい。最近の健康志向によって、消費者は食の安全性に対して大きな関心を持つようになった。そして、有機農法や国産農作物への安心感ともあいまって生産方法や産地の正確な表示を求める声が強くなり、その表示に対して第三者による保証を求める動きも活発になった。これは、有機農法であればその生産方法に、またブランド産地であればその地域の伝統や慣習に対して一定の評価を与えることにより、作物の持つ属性によって他の作物と差別化できるからである。そのため、これらの属性を持たない作物であってもあたかも有するかのような表示をするフリーライダーが後を絶たない。そうした偽物を放置すると、正当に生産された作物の品質に対する評判さえも下がってしまう。こうした事態を回避するために、出所を管理しその製品や製法といった属性の定義を明文化して体系的に管理するとともに、それらを制度的に検証して誠実さを承認し、それを意見として消費者に表明する機能を持つ第三者機関による認証が求められる。

 また、林業の分野でも認証制度の導入が進められている。90年代、世界の森林の利用と保全に対する関心は高まり、多くの国際的なプログラムや発案が公表された。木材・紙パルプ業界やNGOはこれらの有力な実効策として、第三者認証制度の構築とその運用を個別的に進めてきた。これら認証制度の趣旨は、消費意思決定を通じて市場に影響力を持つ消費者に対し、ある基準に照らして適切に管理されていると認定される森林から産出された木製品や紙製品を消費者が購入しているという事実を第三者が保証することにある。現在のところ、世界基準としてはFSCやISOが、ローカル基準としてはAF&PAやPEFCが代表的な森林認証制度である。

 現在、制度を支える要として認証機関は重要な役割を果たしている。これには監査法人からの参加も多く、その数の増加も予想される。会計士の保証業務は第三者認証の拡大とともにますます社会的な意義が高まるであろう。

 

食と森の認証

http://lumiere.sheena.to/~elica/axis/

NGOのアクシスが作成したHP。有機農産物や森林の認証を中心にさまざまな認証制度に関して、その基準の解説や情報の提供を行っている。特に、「認証」と「認定」の違いや有機農産物認証に関する検査・認証制度の法制化、各地方自治体が取り組んでいる有機農産物認証制度に関する情報はわかりやすくまとめられている。

 

VIPS農産物ネット認証システム

http://vip2.nfri.affrc.go.jp/aboutvips.html

農水省の農産物ネット認証システム研究プロジェクトのHP。農産物ネット認証システムとは、生産者が個々の農産物についてIDや各種情報を入力することにより、既存の流通システムを利用しながら消費者が自分の購入した農産物の情報をインターネットなどで閲覧できるシステム。認証システムの新たな形として注目を集めている。

 

森林認証制度研究会

http://www.fc.kais.kyoto-u.ac.jp/~fcnet/home-menu/home.html

森林認証に関する研究会のHP。研究者や自治体担当者を中心に、林業・木材産業から広く参加者を集めている。国内の森林認証制度に関する情報発信のベースとなっている。最近ではFSCの国内基準に関して草案を作成し公開している。また、事務局からの情報発信や森林認証制度に関する情報交換の手段として、メーリングリストを開設している。

 

WWF Japan

http://www.wwf.or.jp/

世界自然保護基金日本委員会のHP。WWFはさまざまな環境保全運動を展開する国際的な非営利団体として知られている。この日本委員会のHPではFSC(森林管理協議会)やMSC(海洋管理協議会)といったWWFが中心となってすすめている国際的な環境認証スキームの解説がある。

 

SF & CW

http://www.sfcw.org/

カナダ・モントリオールのNGOであるSF & CWのHP。世界各国に広がるさまざまな森林認証制度の動きをフォローしながら、これに関わる林業・木材産業の動向も同時に伝えている。特に、北米・ヨーロッパの最新の情報に強みを発揮している。AF&PA(アメリカ林業製紙業協会)やPEFC(欧州森林認証

制度)に関する情報も豊富である。

 

F A O

http://www.fao.org/

イタリア・ローマに本部のある国連食糧農業機関(FAO)のHP。食糧や農産物に関するデータの宝庫で、有機農産物認証や産地呼称認証、森林認証に関する統計も整備されている。また、各種刊行物がPDFファイルで入手できるほか、さまざまな問い合わせにも対応するインフォメーションセンターが開設されている。

 

F S C

http://www.fscoax.org/principal.htm

メキシコ・オアハカに本部のある

森林管理協議会(Forest Stewardship Council)のHP。FSCによる森林認証制度の詳細な説明のほか、パーセンテージ認証やグループ認証といった新しいタイプの認証プログラムに関する解説や認証森林に関する統計などが公開されている。また、希望者には電子メールによる情報の配信サービスもある。〓200D記事〓200E

 

I S O

http://www.iso.ch/

スイス・ジュネーヴに本部を置く

国際標準化機構(International Organization for Standardization)のHP。このISOは工業製品を中心にさまざまな分野の製品・サービスなどの規格の国際的な標準化を目指して活動を進めてきた。ISO9000やISO14000シリーズといった環境マネジメントの国際規格に関する詳細な解説もある。