<インターネットで学ぶ会計学>

コンピュータ会計とEDI

執筆者:岡部孝好

   販売、調達などのビジネス活動を会計数字に写し取ったのが会計記録であるが、その会計記録の基礎をなすのは取引文書(trade document)である。取引には受発注、輸送、入出庫、請求、決済などのステップがあるが、これらの取引ステップのそれぞれにおいて買い手と売り手が何をなしたのかはすべて文書化(documentation)されており、取引の相手側によってそのつど取引文書の正確性が確認されている。取引を証拠立てるこの取引文書が会計記録の出発点となる。会計監査においては会計記録よりもむしろ取引文書の方に重点がおかれるが、それは会計記録が取引文書と一体になっているという理由によるものである。
 最近ではeコマースが爆発的に拡がってきたために、取引プロセスそのものがコンピュータ・ベースに変わり、取引文書は紙ベースから磁気ベースへと大転換をとげてしまった。B2Bであれ、B2Cであれ、eコマースでは、すべての取引文書はコンピュータにより自動的に生成され、自動的に貯蔵されている。紙に打ち出す局面もないではないが、取引文書を握っているのはいまやコンピュータなのである。このため、会計記録の作成でも、コンピュータの中において、磁気的な取引文書を会計記録に自動的に変換するのが一般的な手順になってきている。eコマースでは、取引手順のコンピュータ化により取引文書が磁気化され、これに対応して会計記録もまたすべてコンピュータにより自動生成されている。簿記で習う仕訳とか転記という作業は、eコマースでは、もはやこの目で観察できることではない。
 このようにコンピュータ化が急速に進展すると、何もかも見えないところで自動的に処理されてしまうから、会計記録の作成にまったく問題がないと誤解されやすい。しかし、現実はそうではなく、コンピュータ会計においても、解決を急がなければならない課題が山積している。その中の最大のものが、取引の当事者が交わす磁気的な取引文書がまちまちで、いかにネットワークが高度化されても、コンピュータとコンピュータとの対話が正確には成り立たないという問題である。
 この問題にソリューションを与えるには、取引文書を国際的に標準化して、取引データ(電文)がネットワークの中を円滑に流れる仕組みを一日も早く完成させなければならない。EDI(electronic data interchange)というのは、このような考えから、磁気的な取引文書を地球規模において標準化しようとするものであるが、この動きはけっして軽快ではない。
 EDIによって統一的な取引ルールを確立するには、通信プロトコルだけでなく、電文の受け渡しにかんする規約と電文のレイアウトを標準化しなければならないし、取引相手の識別方法、略号とコード番号の統一、言語とメッセージのタイプ、データ要素の構成など、詳細なルールが必要になってくる。
 これらのルール設定において国際的にリーダーシップを取っているのは国連であるが、各国に国内事情があって、国連が推進するEDIFACTは完全には浸透していない。わが国でもそれそれの業界において業界標準を定めているが、電子工業界などの一部の産業を除いて、EDIはこれからの課題といえる。右ページに紹介しているサイトは、このEDIに関連するものである。

 

UN/EDIFACT
http://www.unece.org/trade/untdid/
 EDIのルール設定において、世界でこの動きをリードしているのが国連である。国連では1984年にEDIの標準化作業を
開始し、1986年にUN/EDI-
FACT(United Nations/ EDI for Administration Commerce and Trade)という国際標準規格を発表した。この国際的なEDI規格では、国コード、通貨コード、言語コードなど、コンピュータ・ベースによる国際貿易取引の一般ルールのほか、ビジネス・プロトコルにかんするルールが定められている。


DISA
http://www.disa.org/
 DISA(Data Interchange Standard Association)はアメリカのデータ交換標準協会のサイトであり、アメリカのEDI標準になっているASC X12(Accredited Standards Committee X12)の事務部門を担当している。ASC X12は各産業の代表者によって組織されており、最新のeコマース技術とEDI標準との統合を図ることによって、電子的取引の発展に大きな影響力を発揮しているといわれる。


IMC
http://www.imc.org/
 IMC(Internet Mail Consortium)は電子メールの規約を決める団体であるが、最近ではインターネット技術を利用した新しいタイプのEDIが注目されてきたため、このWebEDIの規約についても重要なステートメントを発表している。インターネットによるEDIとしてはXML(eXtensible Markup Language)が大きな関心をよんでいるが、このXMLによるとHTMLのタグに当たる部分が柔軟に設定でき、データ形式の自由度が高くなる。このXMLが今後のEDIの主流になると期待されている。


EU/ European Initiative in Electronic Commerce
http://www.cordis.lu/esprit/src/ecomcom.htm
 EUにおいては、地域内の各国においてEDIの標準化がすすめられている。これら各国の動向を踏まえ、EU全体のEDI標準化を推進する母体がこのEIECである。各国の言語による報告書を掲載し、急展開するeコマースにおいて、取引文書を統一することがいかに重要であるかを、EUの競争力を確保する視点から明確に指摘している。また、EU本部の議会、理事会、関連委員会との調整についても、そのあり方を検討している。

社電子情報技術産業協会(JEITA)
http://www.edi.eiaj.or.jp/index-j.html
 日本においてEDIのリーダーシップをとってきた団体としては社日本電子工業振興協会(JEIDA)と社日本電子機械工業会(EIAJ)が挙げられるが、これらは2000年11月に統合され、社電子情報技術産業協会(JEITA)として再出発している。このJEITAが推進する日本のEDIでは、コンピュータ、電子部品などの取引文書の標準化が中心をなすが,工業製品を広くカバーする汎用プロトコルの構築もターゲットに含まれている。


物流EDIセンター(JTRN)
http://www.transport.or.jp/edi/index.html
 取引ステップの上流から切り分けると、EDIは受発注EDI、物流EDI、決済EDIの3つに区別することができる。これら3つの中で物流EDIはロジステックスにかかわっており、運輸会社、倉庫会社などにおいて荷主との間で電文の受け渡しを行う統一規約を定めようとしている。このJTRNのサイトでは取引文書の標準フォーマットを掲載し、会員会社がダウンロードできるサービスを提供している。