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日本公認会計士協会,会社分割に関する会計処理案を公表

 日本公認会計士協会は、平成12年12月1日、「会社分割に関する会計処理」の草案を公表した(以下「公開草案」)。
 同公開草案は、平成12年5月に成立した会社分割法制に関する会計処理をまとめたもので、平成13年1月8日まで、広く意見を求め、同年4月までに正式な実務指針として完成させる見込みである。公開草案の論点は以下のとおり,12項目があげられている。
 なお、論点の詳細を本号137 頁以降に収録している。
1 個別会計と連結会計における整合性等
2 「取得」と「持分の結合」の判定
3 親子会社間における分割型の吸収分割において、親子会社関係が解消される場合の会計処理
4 分割型の支配移転に係る分割会社の営業移転損益の計上
5 売買処理法が適用される場合の分割型における資本の部の取崩し
6 簿価引継法において承継した純資産の公正な評価額が簿価純資産額を下回る場合の会計処理
7 簿価引継法が適用される分割型の会社分割における分割会社の資本の部の取崩しと承継会社の資本勘定の引継ぎ
8 売買処理法が適用される分割型会社分割における承継会社の資本勘定の引継ぎ
9 営業の分割と結合する資産及び負債と損益
10 売買処理法が適用される分割型の会社分割の場合の株主分割損益の認識
11 分割会社及び承継会社における退職給付引当金の会計処理
12 法定有限連帯責任に伴う債務に関する会計処理

与党税調,平成13年度改正決定
 自民党の税制調査会および与党(自民党・公明党・保守党)税制協議会では,平成13年度の税制改正についての審議を進めていたが,それぞれ,平成12年12月13日および12月14日に,「平成13年度税制改正大綱」を決定した。
 国税関係の主な改正の内容は,次のようになっている。
「平成13年度税制改正大綱」のポイント
@1@住宅・土地税制
 〇 新住宅ローン減税制度(仮称)の創設
 平成11年から2年半にわたり講じられている住宅ローン控除制度の終了に伴い,景気に配慮し,新住宅ローン減税制度を創設。
 ・平成13年7月1日から平成15年12月31日までの間に居住の用に供した場合には,ローン残高(最高5,000 万円)の1%の税額控除を10年間認める。
 〇 住宅取得資金の贈与を受けた場合の贈与税額の計算の特例(後掲)
 〇 土地譲渡益課税の負担軽減措置の延長
 最近の経済情勢や土地取引の状況等を踏まえ,現行の負担軽減措置の適用期限を延長する。
 〇 登録免許税の軽減措置の拡充等
 ・実物不動産の流動化へのインセンティブを与えるため,一定のSPC ,投資信託,投資法人が不動産を取得した場合の登録免許税につき,軽減措置を講ずる。
 2 相続税・贈与税
 〇 事業承継への配慮(小規模宅地等の特例の拡充)
 中小企業者等の事業承継の円滑化等の観点から,小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例を拡充する。
〓〓特定事業用宅地など:適用対象面積 330 u→400 u特定居住用宅地  :適用対象面積 200 u→240 u〓〓
 〇 贈与税の基礎控除額の引上げ
 高齢者から若年・中年世代への早期の財産移転を容易にする等の観点から,贈与税の基礎控除額を引き上げる。
 ・基礎控除額 60万円→110 万円
 〇 住宅取得資金の贈与を受けた場合の贈与税額の計算の特例
 住宅取得の促進等に資するため,住宅取得資金の贈与に係る贈与税の特例について,非課税限度額を550万円に引き上げるとともに,一定の増改築,買換えを適用対象に追加する措置を講ずる。
 ・非課税限度額 300 万円(60万円×5)→550 万円(110 万円×5)
 3 金融・証券関連税制
 〇 株式等譲渡益課税
 現下の経済情勢,株式市場の動向等を踏まえ,申告分離課税への一本化を平成15年4月まで2年間延期する。
 平成15年4月1日以降の申告分離課税のあり方については,直接金融を担う株式市場の役割,一般投資家の参加,国・地方を通ずる公平な課税等の観点より,譲渡損失の取扱い等を含め,一本化にあわせて検討する。
 〇 商品先物取引
 近年における商品先物市場の整備の状況を踏まえ,個人投資家の市場参加を円滑化する等の観点から,商品先物取引による,所得に対する課税については,申告分離課税(26%)によることとする。
 〇 非居住者・外国法人の所有する一括登録国債の利子非課税制度の拡充
 非居住者・外国法人が,日本銀行及び税務署長の承認を受けた海外の適格外国仲介業者(仮称)を経由し,国債振替決済制度上の直接・間接参加者の国内の営業所等を通じて一括登録国債を寄託した場合には,租税条約上の情報交換の利用を前提とする一定の本人確認手続等適正課税制度を整理した上で,非課税の対象とする。
 4 企業組織再編税制
 〇 会社分割・合併等に係る企業組織再編税制の創設
 企業が経営環境の変化に対応し柔軟な組織再編を行うことを可能にするため,租税回避防止措置を講じつつ,一定の要件を満たす会社分割・合併等に係る資産の譲渡損益の繰延べを認める等の企業組織再編税制を整備する。
 5 中小企業関連税制
 〇 中小・ベンチャー支援税制
 中小企業を取り巻く経済環境等を踏まえ,中小企業投資促進税制,中小企業技術基盤強化税制の適用期限を延長する。
 6 IT関連税制
 〇 電子計算機の耐用年数の短縮
 IT革命推進にきわめて重要な役割を果たす電子計算機の耐用年数を短縮する。
 ・現行6年→パソコン4年,その他のもの5年
 (注) パソコン減税については,適用期限を延長しない。
 〇 高速インターネット網の整備促進支援
 高速インターネット網の整備を促進するとの観点から,広帯域加入者網普及促進設備について,特定電気通信設備の特別償却制度の対象に追加する等の措置を講ずる。
 7 NPO 税制
 〇 認定NPO 法人に対する寄付金控除等の創設
 NPO 活動を支援する観点から,認定NPO 法人(一定の要件を満たすものとして国税庁長官の認定を受けたもの)に対する寄附金控除等の特例を創設する。

景気回復は正念場か,日銀短観公表
 2000年12月に公表された日銀短観によれば、98年を底に回復してきた企業の業況判断が足踏み状態を迎えた。他方、設備投資の計画額の増加が依然続いている。このことからすると、今回の足踏みが景気の踊り場を意味するのか、それとも94年から96年にかけての景気回復期のように好況感に乏しいまま腰折れするのか、微妙な段階にさしかかったと言えよう。
 2000年8月に日銀がゼロ金利政策を解除したものの、その後の景気回復の足取りはかんばしくなかった。とりわけ昨春以降のアメリカでの株価の下落と景気の減速は、世界の株式市場と経済全体の頭を抑えると同時に、ようやく回復のきっかけをつかんだ日本の景気に悪影響をもたらしかねないと懸念されている。
 今回の日銀短観は、世界的な経済の頭打ちと株価の下落傾向が明白になった2000年の11月から12月にかけて、企業に業況をアンケートしたものだったので、早くから注目されていた。
 その結果は、98年から2年間続いた景気回復が正念場を向かえたというものだった。すなわち、景気回復の牽引力であった電気機械や自動車などの好況感が縮小したこと、2000年度下期の経常利益予想が多くの産業で下方修正になったことなどに、景気回復感の足踏みが顕著に見られる。
 大企業・製造業の12月の業況判断(良い−悪い)は、9月の+10と同水準で横ばい、2001年3月は+7と少し低下の予想となっている。大企業・非製造業の12月は−10と水面下のまま、ほぼ横ばいになってしまったし、中小企業はさらに業況が悪い水準での横ばいである。
 その一方、2000年度の設備投資計画は9月調査と比
べて上方修正され、中小企業・非製造業以外は前年比プ
ラスの計画にまで盛り上がっている。これはITなどの
設備投資を活発に行おうと企業が考えているためだろう。
 現在、2000年8月に日銀がゼロ金利政策を解除したのは誤りだとの批判が強まってきているが、この短観の結果を見るかぎり、景気が悪化に向かっているのか、一時的な踊り場なのかの判断を下すことは困難である。それだけに、アメリカ経済の行方にますます注意が払われることになろう。

農業の会計基準を承認
IASCは2000年12月11日から13日までロンドンで理事会を召集し、継続審議となっていた農業に関する会計基準をIAS41 として承認した。当基準の焦点として時価による評価をどの範囲まで適用するかについて意見が分かれ、承認が遅れていたが、最終的には原則として全面的に時価を採用することとなった。
農業にかかわる生物資産および収穫した農産物は、公正価値から販売に要する見積費用を差し引いた価額で測定される。ここで公正価値とは生物資産や農産物の市場価格を指す。活発な市場が存在する場合は取引
相場によるのが適当であり、そうでない場合も最終取引
価格など市場により決定された価格を用いることとする。
そのような価格が存在しない場合は当該資産から得ら
れる正味キャッシュフローの現在価値を公正価値とする。
生物資産についても上記の公正価値が測定できるものと推定する。当初認識の時点では市場による価値が得られない場合があるが、いったん公正価値が測定可能になった時点でただちに評価を変更しなければならない。評価の見直しや生物資産の初期認識価格から公正価値への見直しによって生じる損益は、当該会計期間の純損益に含める。
なお、収穫した農産物の加工については、当基準で はなくIAS 2(棚卸資産)が適用される。
また、生物資産が土地に付随している場合には両者を切り離して取り扱う。当基準は当該生物資産についてのみ適用され、土地そのものにはIAS16 (有形固定資産)やIAS40 (投資不動産)を適用する。
生物資産に関する国庫補助金は収入として認識する。補助が無条件で与えられる場合は受給が可能になった時点で、条件付の場合(企業がある特定の農業活動を行わないことを条件とする場合を含む)はその条件が満たされた時点で認識を行う。
原価から減価償却費と減損額の累計額を差し引いて測定される生物資産についての国庫補助金は、IAS20(国庫補助金の会計および政府援助の開示)が適用される。それらの資産については新たな開示項目が追加されている。
IAS41 は、2003年1月1日以降に開始する会計年度より適用となるが、早期適用が推奨されている。

東証、コーポレート・ガバナンスに関するアンケート調査結果を発表

東証は、平成12年11月30日、東証上場会社を対象として行なったコーポレート・ガバナンスに関する調査結果を発表した。これは、上場会社各社におけるコーポレート・ガバナンスに関する意識・各種施策の取組み状況を調査するとともに、今後の東証としての支援
活動に関する検討材料を得ることを目的に行なわれたも
のであり、平成10年9月に行なって以来、2回目である。
調査対象は、本年9月18日時点で東証上場している内国会社1,994社(市場第一部:1,417社、市場第二部:561社、マザーズ:16社)であり、1,310社(回答回収率65.7%)から回答があった(前回の回答会社は1,137社、回答率62.4%)。調査結果は以下のとおりである。
まず、コーポレート・ガバナンスに関する関心度については、1,278社(回答会社比97.4%)が「関心をもっている」と回答しており、実際に1,163社(同88.8%)がコーポレート・ガバナンスをめぐる最近の議論を意識して経営を行なっている。
具体的にコーポレート・ガバナンスの充実のために必要となる事項としては、「取締役会の機能強化」と回答した会社が963社(同73.5%)と最も多く、次いで、「ディスクロージャーの充実」の919社(同70.2%)、「監査役(会)の機能強化」の696社(同53.1%)、「法令違反行為の未然防止機能の強化」の650社(同49.3%)という順であった。なお、前回の調査時と比較すると、「監査役(会)の機能強化」と回答した会社が0.4ポイント減少したのに対して、「取締役会の機能強化」と回答した会社が8.8ポイント増と大幅な上昇が見られ、最近の重要性の認識が「取締役会の機能強化」へシフトしている傾向が伺える。
また、回答会社数のもっとも多かった「取締役会の機能強化」策については、すでに実施していると回答した会社は785社(同59.9%)である。具体的施策としては「取締役の人数削減」(363社)、「執行役員制度の導入」(279社)、「社外取締役の選任」(261社)というものが上位に並び、取締役会をスリム化する一方で執行役員制度を導入し、経営の意思決定機能と業務執行機能の分離を明確化させることにより、機能強化を図るという図式を読み取ることができる。
IR活動に関しては、株主等に対するアカウンタビリティ充実のための施策を実施または検討中の会社が1,055社(同80.5%)であり、具体的な内容としては、インターネット上でのホームページの開設・内容の充実(815社)、事業報告書・株主通信等での経営方針等の記載充実(453社)を挙げている会社が多く見られた。

日本監査役協会,監査役のための法律相談室を開催
 日本監査役協会では,中部支部において本年2月より法律相談室を開催することを決定した。
 同協会では,従来より東京および大阪の事務局において毎月無料の法律相談室が開かれており,会員監査役の相談を受け付けているが,中部支部の会員からの要望にもこたえ,名古屋においても法律相談室を開くことになった。
 法律相談室を担当する弁護士は次のとおりである。
  東 京 加藤一昶弁護士
      田代有嗣弁護士
      鴻 常夫弁護士
  大 阪 河本一郎弁護士
      今井 宏弁護士
  名古屋 小川宏嗣弁護士(新任)
  その他,協会には昨年から監査役のための法的サポート相談室が,上記相談室とは別に東京の本部に設けられている。
 このサポート相談室は,協会が個々の監査役に対して支援することを重視した事業のひとつで,監査役が実際に業務上具体的案件に直面したとき,監査役としての任務をどのように果たしたらよいかということについて,法的側面からサポートすることを目的としている。そして,相談をする監査役の会社名や相談内容については協会にも知られない措置がとられている。また,相談に応じる弁護士には,当の監査役とともに具体的案件に対する処理方法についてまで考えてもらえることになっている。
 具体的に監査役がこのサポート相談室を利用する場合とは,次のようなときが考えられ,これからの監査役の味方になることが期待されている。
 @ 放置すると監査役の責任が問われるような重大な事件が生じたとき,またはその恐れがあることが明らかになったとき。
 A 監査役自身の行動に任務懈怠の恐れがあるか否か不安を感じたとき。
 B 取締役に対し,監査役として法的権限を行使すべきと考えたとき,または行使すべきか否か悩んでいるとき。

生命保険の加入実態調査が公表
 財団法人生命保険文化センターは、「生命保険に関する全国実態調査(平成12年度版)」を公表した。この調査は、一般家庭における生命保険の加入実態ならびに生命保険・生活保障に対する考え方を把握することを目的として、昭和40年以降3年ごとに実施している調査となっている。
 今回の調査結果によれば、生命保険の世帯加入率は依然として9割を超える高水準であるが、6年前の調査の95.0%をピークに今回は91.8%と2回連続して低下している。加入世帯の加入件数7年間払い込み保険料なども減少し、長引く景気低迷による家計の引き締めや、あいつぐ保険会社破たんによる消費者の不信感を裏づける結果となった。
 一方、生活保障のための経済的備えに対する不安感は増大傾向を示している。死亡保障、入院保障、老後保障のそれぞれの経済的備えに対して不安感を持つ世帯は、前回調査より若干増加し、いずれも70%以上の高い割合になっている。また、要介護状態になった場合の経済的備え(今回新規調査)に対して不安感を持つ世帯は86.7%ときわめて高い割合になっている。
 さらに、生命保険に期待する生活保障ニーズは多様化の傾向が顕著に見られる。生命保険に加入(追加加入)意向を持っている世帯の、必要とする保障内容は、死亡保障、医療保障、老後保障への分散化傾向が顕著になり、介護保障へのニーズが急増するなど、生活保障ニーズの多様化が一層進んでいる。

JWG,金融商品に関する新会計基準案を公
日本公認会計士協会は,去る平成12年12月14日,金融資産及び金融負債を公正価値で測定し,その変動をすべて損益計算書で認識することを骨子とする金融商品に関する新たな国際的会計基準の公開草案「金融商品及び類似項目」(以下、公開草案)を公表した。
 これは、日本公認会計士協会からもメンバーが参加している金融商品の会計基準に関する世界主要国の会計基準設定主体の共同作業組織(ジョイント・ワーキング・グループ−JWG)が同日付けで世界的に同時に公表した金融商品に関する会計基準案であり、JWG参加メンバー国においてそれぞれの設定主体などの名前で公表されている。
 JWGには,米,英、加、豪、仏、独、ノルウェー、ニュージーランド、日本及び国際会計基準委員会(IASC)の9カ国の会計基準設定または職業会計士団体,及び1機関が参加している。わが国は、日本公認会計士協会から代表が参加している。
 また,今回の公開草案は,97年からJWGが進めてきた金融商品に関する会計基準の検討の成果であるが,基準設定主体または職業会計士などによる審議は不十分なため,関係各方面の検討が必要とされている。同公開草案へのコメントの締切りは、日本国内では平成13年7月まで(英文で作成されたものは9月末)となっている。
 公開草案が提案する会計基準案の特徴は以下のとおり。
@ ほとんどすべての金融資産及び金融負債を公正価値で測定すること。非上場株式のみが公正価値による測定の唯一の例外とされている。特に、金融負債に対して初めて公正価値による測定が提案されており,企業自身の信用格付けが変動することによって自社が発行した社債や自社の借入に生じる損益も損益計算書で認識することになる。
 A 公正価値の変動によって生ずる損益をすべて損益計算書で認識すること。
 B ヘッジ会計は認められていないこと。
 C 金融資産の譲渡という会計処理が複雑な分野に,財務構成要素アプローチが採用されたこと(基本原則は,金融資産に対する支配が移転した場合にのみ金融資産の譲渡が起こったと考える)。
 D 金融商品に関する注記による開示の拡充
 なお,本号140 頁以降に公開草案の要約を集録している。