昨年7月に発足した司法制度改革審議会が約1年半を費やし、合計38回にも及ぶ審議の結果11月20日に中間報告をとりまとめた。審議会の任期は来年7月までの2年間であり、最終報告まで残された期間は半年である。今回の中間報告は最終報告に向けた審議会の基本的な方向性を示すものとして重要な意味を持っている。中間法報告の主要な論点とその方向性について整理したい。
中間報告の概要
中間報告が取り上げた項目は多岐にわたっているが、まず、人的基盤の拡充として、「法科大学院」すなわち日本版ロースクールの設置と、法曹人口の拡充、弁護士ならびに裁判官制度の改革が重要である。
一方、制度的基盤の整備としては、計画審理の実施や刑事事件における被疑者段階からの公的弁護制度の導入などの民事・刑事司法の改革、裁判所・弁護士へのアクセスの拡充がポイントとなっている。
最後に、国民の司法参加が取り上げられており、陪審などの裁判手続きへの国民の参加のみならず、検察審査会の権限の拡充や裁判官選任家庭への国民の参加といった課題が掲げられている。
法曹人口の拡大隣接専門職種との関係
この中でまず注目されるのは、法曹人口の拡大である。報告では、「計画的にできるだけ早期に、年間3000人程度の新規法曹がの確保を目指す必要がある」と指摘しており、現在の司法試験合格者の3倍程度のペースで新規法曹を生み出す方向を示している。これまで経済界をはじめとする各界から、司法の専門性の欠如や裁判の遅延の問題が指摘されてきたが、その大きな原因の一つは司法の容量の不足であり、法曹人口拡大の決定は評価できる。11月1日に、この点を受け入れるかどうかをめぐって日弁連総会が紛糾したが、各界の要望を無視する弁護士がいまだに多いことは憂慮すべき事態である。
法曹人口の拡大の中で、その大部分を占める弁護士は、従来のような個人・法人の代理人・弁護人として活動するだけではなく、行政や企業やNPO 等においてさまざまな法的サービスを提供することが期待されている。一方で、弁護士以外の法律専門職種についても、今回の報告では、「それぞれの業務内容や業務の実情、業務の専門性、人口や地域的配置状況」などを踏まえ、「信頼性の高い能力担保制度」を前提に、一定範囲の法律事務の取り扱いを認めることに踏み切った点が注目される。司法書士の簡易裁判所における訴訟代理権、税理士の税務訴訟における出廷陳述権等、関係者からこれまでさまざまな要望がなされてきたが、前向きな方向性が打ち出された現在では、その前提となる「信頼性の高い能力担保制度」の構築こそが重要な課題となった。
大きな対立点
審議会において議論が大きく分かれた論点として、裁判官制度の改革と国民の司法参加の2つがある。裁判官制度の改革は、従来「法曹一元」の問題として昭和39年の臨時司法制度調査会の答申以来長い論争の歴史のある問題である。今回の報告書では「法曹一元」が是か非かという不毛な議論に終止符を打ち、いかなる裁判官の確保が必要なのかという観点から検討するという方向が打ち出された。
一方の、国民の司法参加、特に裁判手続きへの参
加については、陪審制度の導入をめぐり激しい意見の
対立がみられたものの、中間報告では「特定の国の制
度にとらわれることなく、主として刑事訴訟事件の一
定事件を念頭に置き、わが国にふさわしいあるべき参
加形態を検討する」として今後の審議にゆだねられた。
問われる審議会の姿勢
今回の中間報告は非常に幅広く多くの課題について、思い切った改革の方向が示されており、その点は評価できる。しかし、この報告の基本的考え方を示した「2.今般の司法制度改革の基本的理念と方向」が難解で、他の章との関連性も不明確である点は残念である。審議会自体の使命が国民にわかりやすい司法の実現であることから、今後の審議において、さらに、国民への配慮が期待される。
〈Y.O〉
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