Accounting News

企業会計2000Vol.52No.11

最終更新日 10月4日

 

金融庁、EDINETを試験運用へ


 金融庁は、去る9月18日、平成12年10月から平成13年1月の間、電子開示のためのシステム・EDINET(Electronic Disclosure for Investors' NETwork)の試験運用を実施することを公表した。
 先般の通常国会にて、有価証券報告書の提出等の証券取引法上の開示手続についての電子化を図るため、証券取引法の改正が行われている。改正法は、平成13年6月より段階的に施行される予定であり、平成13年6月からは、有価証券報告書、半期報告書及び臨時報告書を電子情報処理組織を用いて提出することができることとなっている。
 EDINETは、平成13年6月からの本格稼働に向けて、これまでシステム構築を図ってきたところで、今回の試験運用で、金融庁は、来年6月からの本格稼働に先立ち、利用者及び職員の習熟を図るとともに、システム運用上の万全を期したい、としている。
 また、今回の試験運用で「開示書類の提出会社にもEDINETを前提とした開示書類の作成・提出処理等を経験していただく」ことも目的としている。
 主な実施要領は、以下のとおり。

1 参加対象者
 平成12年10月1日現在において、有価証券報告書又は半期報告書を既に提出している会社(外国会社、特定有価証券の発行者等を含む)
2 実施期間
・ 参加申込期間
 平成12年10月2日(月)〜平成12年11月20日(月)
・ 提出会社の登録期間
 平成12年10月5日(木)〜平成12年11月30日(木)
・ 開示書類の提出期間
 平成12年11月1日(水)〜平成13年1月31日(水)
3 実施内容
・ 試験運用における「提出会社の登録」手続
・ HTML形式による有価証券報告書又は半期報告書の作成・提出処理

 なお、詳細については、金融庁ホームページに「EDINET試験運用実施要領」が掲示されている。


公認会計士協会、「厚生年金保険法改正に係る退職給付会計適用上の取扱い」を公表

 
 日本公認会計士協会は、去る9月19日、表記の文書を実務上の参考に資するものとして、公表した。
 本取扱いは、去る3月28日付の厚生年金法の改正による厚生年金制度の改正を受け、会計基準変更時差異をどのように取り扱うかという会計上の問題が生じたため、公表されたもの。
 なお、本号174頁以下に全文を収録している。


政府税制調査会,新メンバーに総理から諮問


・政府税制調査会(首相の諮問機関)は,去る9月14日,第1回総会を首相官邸で開催した。
・この日は,新しい委員30名の任命が行われた後,委員の互選により,石弘光一橋大学学長が会長に選任された。なお,会長代理には,会長の指名により,上野博史農林中央金庫理事長が選出された。
税制調査会委員メンバー


氏  名現     職

石   弘 光一橋大学学長
猪瀬直樹作家
今 井   敬新日本製鐡椛纒\取締役会長
上野博史農林中央金庫理事長
榎本庸夫全日本自治団体労働組合中央執行委員長
大田弘子政策研究大学院大学助教授
奥野正寛東京大学教授
貝原俊民兵庫県知事
〓津十月作家
今野由梨叶カ活科学研究所代表取締役所長
佐野正人日本経済新聞社経済部編集委員兼論説委員
笹 森   清日本労働組合総連合会事務局長
島田晴雄慶応義塾大学教授
竹 内 佐和子東京大学助教授
田中直毅経済評論家
津 田   正財地域総合整備財団顧問
福原義春且草カ堂代表取締役会長
掘 田   力弁護士,財さわやか福祉財団理事長
本間正明大阪大学教授
松浦幸雄群馬県高崎市長
松尾好治共同通信社社友,松阪大学教授
松永真理eWomanエディトリアルディレクター
松本和夫佐賀県北方町長
水野忠恒一橋大学教授
水・野・・・勝日本たばこ産業椛纒\取締役会長
森   金次郎日本税理士連合会会長
森下洋一松下電器産業椛纒\取締役会長
諸 井   虔太平洋セメント椛樺k役
柳島佑吉産業経済新聞社論説委員
吉 永 みち子主婦,作家

税制調査会特別委員名簿


氏  名現     職

大宅映子ジャーナリスト
奥本英一朗日本証券業協会会長
神田秀樹東京大学教授
菊池哲郎毎日新聞社論説副委員長
幸田正孝社全国社会保険協会連合会理事長
河野光雄経済評論家
佐瀬守良東京新聞論説委員
中 里   実東京大学教授
中嶋榮一全国青色申告会総連合会長
中 地   宏日本公認会計士協会会長
長野幸彦朝日信用金庫会長
牧 野   力新エネルギー・産業技術総合開発機構副理事長
松田英三読売新聞社論説委員
村上政敏時事通信社代表取締役社長
室町鐘緒且O和銀行頭取
和田正江主婦連合会会長

 また,この日は,森内内閣総理大臣の挨拶および諮問ならびに宮澤大蔵大臣および西田自治大臣の挨拶が行われた。総理の諮問は,「わが国税制の現状及び諸課題を踏まえ,今後の経済社会の構造変化等に対応した21世紀初頭における望ましい税制の構築に向けての審議を求める。」となっている。


公認会計士協会,「金融商品会計に関するQ&A」を公表


 日本公認会計士協会は,去る9月14日,「金融商品会計に関するQ&A」を公表した。
 これは,平成12年1月31日付けで公表された会計制度委員会報告第14号「金融商品会計に関する実務指針(中間報告)」(「財務諸表等の用語,様式及び作成方法に関する規則」は平成12年3月13日付けで改正)についての留意事項を,Q&A形式でポイント解説したもの。
 同実務指針は,平成11年1月22日付けで企業会計審議会から公表された「金融商品に係る会計基準の設定に関する意見書」の,実務適用時の具体的な指針として発表されたものであり,平成12年4月1日以降に開始する事業年度から,適用されることになっている。
 なお,本Q&Aの全文を本号131 頁以降に収録している。



公認会計士協会、株式交換・移転制度による資本連結に係る指針を公表


 日本公認会計士協会は、8月31日、会計制度委員会研究報告第6号「株式交換及び株式移転制度を創設する場合の資本連結手続」(以下、指針)を公表した。これは,去る4月18日に公表した公開草案を正式に取りまとめたもの。
 株式交換制度は、株式交換・移転制度を利用した完全親子会社関係の創設に関する制度として、平成11年の商法改正で創設された企業再編の重要な手法である。
 この制度を利用して,完全親子会社関係を創設した場合の会計処理は,本来ならば企業結合に関する包括的な会計基準により規定されるべきである。しかし,わが国では現在,企業結合に関する会計基準は存在していない。
 このような状況を踏まえ,作成されたのが今回の指針である。企業結合全般に関する会計基準が設定されるまでの間,株式交換・移転制度を利用した完全親子会社関係の創設に関する当面の会計処理指針となっている。
 本指針は,株式交換・移転制度を利用して完全親子会社関係を創設した場合の資本連結手続の会計処理を主として解説しているが,前提条件として,企業結合会計の代表的な会計処理法である「パーチェス法」と「持分プーリング法」などの概念を最初に説明している。また,資本連結手続の解説を中心としている性質上,連結財務諸表作成における会計処理に重点がおかれており,個別財務諸表における会計処理については,資本連結手続上の論点を検討するのに必要な最小限の記述に留めている。
 また,本実務指針は企業結合に該当しない完全親子会社関係の創設に関する会計処理も同時に扱っている。
 なお,本号114 頁以降に,本指針の主要部分を収録。さらに51頁以降に,本指針作成担当者による解説を掲載している。



法制審商法部会、会社法制の見直し案を公表

 


 法制審議会商法部会(部会長・前田庸学習院大学教授)は,去る9月7日、会社法制の大幅な見直し案を公表した。
 具体的には、企業統治の実効性の確保,高度情報社会への対応,資金調達手段の改善,企業活動の国際化への対応等を柱として,平成14年の通常国会への法案の提出を目途に、検討を行うこととしている。
 見直し案の内容は以下のとおり。

1 見直しの必要性
 企業間の国際的な競争の激化,コンピュータ・ネットワークの普及,IT革命の進展,新規企業の資金調達の需要の増大,企業活動の国際化等,会社を取り巻く社会・経済情勢の変化に対応するため,会社法制の大幅な見直しを行う必要がある。
2 見直しの視点
1 企業統治の実効性の確保
 企業統治(コーポレート・ガバナンス)の実効性を確保し,その競争力を向上させるという観点から,次の事項について検討する。
 ア 会社の機関のあり方(株主総会制度,取締役機関のあり方,会社の区分に応じた機関のあり方等)
 イ 会社情報の開示のあり方(計算規定及び計算書類規則の見直し,計算書類のインターネット登記所公開等)
 ウ ストック・オプション制度の改善
2 高度情報化社会への対応
 高度情報化社会に対応するという観点から,次の事項について検討する。
 ア 会社関係書類の電子化
 イ 株主総会の改善(招集通知及び議決権行使の電子化,テレビ会議システムを利用した株主総会の開催)
 ウ 計算書類のインターネット登記所公開
3 資金調達手段の改善
 資金調達手段の円滑化を図る観点から,次の事項について検討する。
 ア 株式制度の改善(株式の単位規制の見直し,額面株式制度の廃止,資本準備金による株式消却制度の取扱い等)
 イ 社債制度の改善(社債決済制度の見直し等)
 ウ 短期資金調達制度の整備(コマーシャル・ペーパーのペーパーレス化)
4 企業活動の国際化への対応
 企業活動の国際化に対応するという観点から,外国会社と取引をする者の保護の制度の見直し等を検討する。

 ただし,社債決済制度の見直し及び短期資金調達制度の整備については,次期通常国会への法案提出を目途とする、としている。



東証、マザーズにおける外国会社向け上場制度を新設


 東証は、国内の新興企業の上場ニーズに応える形で昨年11月に開設された新興企業向け市場マザーズ(9月19日現在17社上場、上場承認済3社)について、市場開設後、海外の新興企業や内外の市場関係者から外国会社の上場の可能性に関する照会が数多く寄せられていることを踏まえ、日本の証券市場の一層の国際化を図る観点から、外国会社も上場対象とする制度改正を11月を目途に行うと発表した。
 発表された制度要綱では、売買・決済制度については既存の外国株市場のインフラを最大限活用し、上場基準関係も現行のマザーズをベースとして外国会社という点を配慮したものとなっている。
 1 上場審査基準関係
 まず、一定水準の流動性を確保するため、@上場時に1,000売買単位以上の公募を含む公募・売出しを行うこと、A上場時に本邦内株主数が300人以上増加する見込みのあること、B上場時の時価総額5億円以上となる見込みのあることを求めている。また、国内企業と同様に、成長事業に係る売上高が上場申請日の前日までに計上されていることや、「上場申請のための有価証券報告書」に記載される財務諸表等については虚偽記載がなく、かつ公認会計士又は監査法人の「適正」意見が表明されていることなどを求めている。外国会社特有の対応としては、既存の外国株市場と同様、株式事務取扱機関及び配当金支払取扱銀行の指定を要求している。
 上場審査面では、国内企業の場合と同様、企業内容・リスク情報等の開示の適切性、企業経営の健全性などの審査に力点をおくこととしている。
 2 上場後の会社情報の適時開示関係
 国内企業と同様に、公認会計士などのレビュー手続きの実施された四半期業績の開示、上場後3年間は年2回以上の会社説明会の日本国内での実施を求めている。
 3 上場廃止基準関係
 本邦内株主150人未満(1年間の猶予期間あり)となった場合、最近1年間の月平均売買高10単位未満となった場合など、ほぼ国内会社と同様の項目に、本国の証券取引所で上場廃止となる場合等という外国会社特有の項目を加えている。


日銀,RTGSを導入


 2001年1月4日以降、日銀の当座預金勘定での決済、国債の決済の方法が大きく変化する。いわゆるRTGS(Real Time Gross Settlement)の導入である。これによって銀行の資金繰りが大きく変化する。RTGSの実施日が2001年の最初の営業日であるため、2000年問題に続き、銀行は慎重な資金手当てを行なうだろう。また日銀も、それに対して豊富な資金供給を行なうとみられている。
 資金決済は、最終的には日本銀行の当座預金勘定を用いて行なわれている。企業や個人の資金の受け払いはいったん銀行に集められるが、さらに銀行はその資金の受け払いを自行の日銀当座預金勘定に集める。そして、銀行間で必要となる資金の受け払いが、日銀当座預金勘定で調節されることになる。
 現在の決済制度はネット(差額)決済である。図の「現在の資金決済」で示されているように、銀行間で必要となった資金の受け払いの差額が計算され、日銀の口座で清算される。その清算も、日中の特定の時間に行なわれるにすぎない。しかしRTGSが導入されれば、銀行は、資金の受け払いの請求がある都度、その請求額を即時に、日銀の口座で清算しなければならない。銀行にとって、資金の払い出しの請求がいつあるか判らないし、また日銀の当座預金残高をマイナスにできないから、資金繰りに慎重にならざるをえない。
 RTGSの導入は、来年1月4日からと予定されている。通常、年末年始の資金決済は大量である。それだけに、慣れないRTGSに銀行が対応できるのかどうか、危ぶむ声が一部にある。今後、銀行はRTGSを含めて、年末年始の資金需要に対応するため、大量の資金調達を短期市場で行なうものと予想される。
 それに対して日銀は、今年も潤沢な資金供給を行なう。また、9月に日銀はRTGSにともなう措置として、日中の当座貸越額について担保価格を上限として当分の間は限度を設けないことと、当座預金残高がオーバーナイトで赤字になったとしても、6カ月の期間に限って延滞利息を徴収しない方針を公表した。銀行がRTGSに不慣れなことによって生じる混乱を防止する意図である。
 いずれにせよ、10月以降の金融市場の動向が注目される。


バーゼル委員会、信用リスクの管理およびディスクロージャーに関する指針を公表


 バーゼル銀行監督委員会は、平成12年9月14日、信用リスクの管理およびディスクロージャーに関する指針の改訂版を公表。
 「信用リスク管理の諸原則」は、1信用リスクを取りまく適切な環境の確立、2健全な信用供与プロセスの下での業務運営、3適切な与信の管理、測定、モニタリングのプロセスの維持、4適切な信用リスク・コントロールの確保、といった分野について提言している。
 「信用リスクのディスクロージャーに関するベスト・プラクティス」は、信用リスクの有益なディスクロージャーに関する指針を銀行に提供し、また、銀行の持つ信用リスクに関する監督上の情報ニーズについて論ずることによって、銀行の信用リスク・プロファイルについて、十分で効果的な透明性を促進することを目指したものである。
 当指針は、貸出、トレーディング取引、投資、流動性/資金調達管理、資産管理など、あらゆる種類の銀行業務から生ずる信用リスクをカバーしている。
 指針の改訂版は、1999年7月に公表された市中協議案に対して寄せられたコメントを考慮に入れている。これに基づき、ディスクロージャーに関するペーパーでは、機密性を持つ情報の取扱いについて言及されている。2本のペーパーはともに、多くの国で、業務の複雑さの程度が異なる様々な銀行に対して適用されることが期待されている。
 バーゼル委員会のリスク管理小委員会で議長を務めるRoger Cole氏は、「信用リスク管理の具体的な実務は、その銀行が行う与信活動の性質と複雑さに応じて異なるかもしれないが、包括的な信用リスク管理の枠組みは、このペーパーで述べられている諸原則に対応しているであろう。こうした諸原則は、バーゼル委員会が最近別途公表した文書で示されている、資産の質の評価と、引当金および準備金の適切性に関するサウンド・プラクティス、および本日公表される信用リスクのディスクロージャーに関するペーパーとあわせて適用されるべきである」と述べている。
 バーゼル委員会の透明性小委員会において議長を務めるJan Brockmeijer氏は、「ディスクロージャーに関するこのペーパーは、銀行の信用リスクのパブリック・ディスクロージャーのためのベスト・プラクティスに関する指針を提供している。その目的は、銀行の信用リスク・プロファイルについて意味のある評価を行うために必要な情報を市場参加者や一般に提供するよう、銀行に促すことである。脆弱な信用リスク管理体制と与信の質の劣化が、引続き世界中の銀行破綻や銀行危機の決定的な原因になっているため、信用リスクの分野における透明性はとりわけ重要である」と述べて、こうしたメッセージをさらに強調している。
 バーゼル委員会の議長であるWilliam J McDonough氏は、これらのペーパーの公表を歓迎して、「これらのペーパーは、銀行の主要なリスクに対処するための指針を、世界中の銀行と監督当局に対して提供するべく継続的に行われている努力の一環として重要な意味を持つ」と述べている。さらに、「これらのペーパーで示されている諸原則は、当委員会が来年初に公表を予定している新たな自己資本充実度の枠組みにおいて、信用リスク評価手法の利用と透明性について当委員会が示す指針に関し、重要なバックグラウンドとなるだろう」とも述べている。


法制審、「国際倒産法制に関する要綱」を公表


 法制審議会は、去る9月8日の総会で、「国産倒産法制に関する要綱」を決定した。
 いままでの日本の倒産処理制度は、裁判所による倒産手続を企業の本店が置かれている国で行うこととされていた。そのため、国境を越えて活動する企業が倒産した場合、その企業の海外資産は国内法に基づく処理手続の対象外となっており、海外の債権者が無秩序に債権を回収するといった問題が指摘されていた。
 本要綱の主な内容は以下のとおり。

〈外国倒産処理手続の承認援助手続(仮称)〉
1 承認援助事件の管轄および移送
・ 外国倒産処理手続の承認の申立に係る事件は、東京地方裁判所の管轄に専属する。
・ 外国倒産処理手続の承認がされた場合において、著しい損害または遅 滞を避けるため必要があると認めるときは、職権で債務者の住所、居所、営業所、事務所または財産の所在地を管轄する地方裁判所に移送することができる。
2  外国倒産処理手続の承認の決定
・ 裁判所は、外国倒産処理手続の承認の申立てがあった場合において、当該外国倒産処理手続につき破産宣告、再生手続開始の決定、更生手続開始の決定、整理開始の命令、または特別精算開始の命令に相当する判断がされたときは、外国倒産処理手続の承認の決定をする。
3  裁判所の許可を要する行為の指定
・ 裁判所は、債務者が日本国内にある債務者の財産の処分または国外への持出しその他裁判所の定める行為をするには裁判所の許可を得なければならないものとすることができる。ただし管理命令または保全管理命令による処分がある場合を除く。
4  管理命令
・ 裁判所は、承認援助手続の目的を達成するために必要があると認めるときは、利害関係人の申立てによりまたは職権で、債務者の日本国内における業務および財産に関し、承認管財人による管理を命ずる処分(管理命令)ができる。
5  保全管理命令
・ 裁判所は、外国倒産処理手続の承認の申立てがあった場合において、承認援助手続の目的を達成するためにとくに必要があると認めるときは、利害関係人の申立てによりまたは職権で、当該外国倒産処理手続の承認の申立てにつき決定があるまでの間、債務者の日本国内における業務および財産に関し、保全管理人による管理を命ずる処分(保全管理命令)ができる。
6  国内倒産処理手続開始の申立てがある場合の取扱い
・ 外国倒産処理手続の承認の申立てがされた場合、同一の債務者についてすでに国内倒産処理手続が開始されているときは、その申立てがされた裁判所は、1当該外国倒産処理手続が外国主手続であること、2日本国内で債権者の利益が不当に侵害されるおそれがないこと、3当該外国倒産処理手続の承認をすることが債権者一般の利益に適合すること、の要件のすべてを具備する場合を除き当該承認の申立てを棄却しなければならない。
〈破産手続等の一部改正〉
1  破産法の一部改正
・ 債務者が個人である場合には日本国内に営業所(債務者が営業者である場合に限る)、住所、居所または財産を有するときに限り、法人その他の社団または財団である場合には日本国内に営業所、事務所または財産を有するときに限り、日本の裁判所に破産の申立てをすることができる。
・ 国内法を海外資産には適用できないという属地主義の規定を削除。
・ 破産法第6条第1項を、破産者が破産宣告の時に有する一切の財産は、それが日本国内にあるかどうかを問わず、破産財団を構成する旨の規定に改める。
2  会社更生法の一部改正
・ 会社が日本国内に営業所を有する場合に限り、日本の裁判所に更生手続開始の申立てをすることができる。
・ 属地主義の規定を削除する。
・ 会社更正法第40条第1項を保全管理人による管理の命令があったときは、会社の財産の管理および処分をする権利は、その財産が日本国内にあるかどうかを問わず、保全管理人に専属する旨の規定に改める。
3  民事再生法の一部改正
・ 再生債務者が個人である場合には日本国内に営業所(債務者が営業者である場合に限る)、住所、居所または財産を有するときに限り、法人その他の社団または財団である場合には日本国内に営業所、事務所または財産を有するときに限り、日本の裁判所に再生手続開始の申立てをすることができる。
・ 属地主義の規定を削除。


事業の結合および無形資産


 FASBは昨年9月にAPB意見書第16号「事業の結合」と第17号「無形資産」に代わる表題の公開草案を発表して意見の提出を求め,その後4月から公開草案の規定に関する審議を再開した。また,FASB議長はその規定に関連して下院で証言し,上院では円卓討議に参加した。再審議により新たに到達した暫定的結論には,次のようなものがある。
 識別可能無形資産は,それが分離できる場合,または契約もしくは他の法律上の権利を通じて当該資産の将来の経済的便益の支配を取得した場合にのみ,別個に認識しなければならない。これらの規準を満たさない無形資産は区分せずに暖簾の中に含める。ただし,「分離できる」とは,企業から分割して,理論的には売却し,移転し,または交換する能力のあることをいう。
 ここで問題にする無形資産は購入した無形資産(ただし未完成の研究開発費を除く)を対象にし,自己形成暖簾は含めない。取得した識別可能無形資産はその経済有効期間にわたって償却するとともに,基準書第121号「長期性資産の減損および処分する長期性資産の会計」に従って減損の有無の検討対象とする。
 経済有効期間が不明確な識別可能無形資産はその期間が有限であると判断されるまで償却を行わない。その間は,帳簿価額と公正価額のどちらか低い方により評価し,基準書第121号の検討対象にしない。この場合,公正価額は観察可能な市場価格に基づいて決定する。それがない場合には,取得日現在で配分された公正価額を支持する割引キャッシュ・フロー・モデルを基礎にする。基準書には,不明確な(indefinite)期間は無限の(infinite)期間とは異なり,期間が予見できる視野を超えて伸びていることを示し,正確な有限の(finite)期間がわからないことを理由に期間は不明確とすることはできないことを明示する計画である。
 FASBは,まず暖簾と他の購入した無形資産の会計について構成員から提出された代替案を慎重に検討する計画である。代替案には,貸借対照表上に暖簾を計上し,償却をせず定期的に減損の有無の検討を行うこと,現行と同じく40年以内の経済有効期間にわたって償却を行うこと,その他がある。
 最大の懸案である持分プーリング法を廃止するかどうかに関連する問題の検討は,暖簾の会計に関する財務諸表の作成者・利用者双方の懸念を解くことのできる暫定的結論に達した後に再開する計画である。
 FASBは議会関係者を含む構成員により提起された本質的な問題点のすべてに焦点をあてて,主題の全体について暫定的結論に達するまで,最終的な決定を行わない。
 FASBは再審議を本年末までに完了し,来年第1四半期中には最終基準書を発行することになると予測しているが,完成期限を設定してはおらず,進行状況いかんによっては遅れることも考えられる。