自民党の司法制度調査会が、5月18日に、報告書「21世紀の司法の確かな一歩」を取りまとめた。この調査会が一昨年に発表した提言をきっかけに、今の政府の司法制度改革審議会(会長:佐藤幸治京都大学教授)が発足したことを考えると、今回の提言は、来年7月に予定されている審議会の最終報告を占う上で重要である。
自民党の提言の概要
今回の自民党の報告書で取上げられた項目は、(1)多様な法律サービスの提供、(2)裁判の迅速化と民事執行の充実、(3)知的財産権の法的保護と特許裁判の充実、(4)国民の争訟解決の支援、(5)司法の人的・物的基盤の整備、(6)法曹養成のあり方、(7)国民の司法参加のあり方、(8)法曹一元の8項目である。
多くの項目は、ある程度の方向性を示しつつも、来年7月の司法制度改革審議会の結論に委ねる書きぶりになっている中で、(1)多様な法律サービスの提供に関しては、ADRに関する研究会の設置や、隣接法律専門職種の訴訟への関与について具体的かつ明確な提案がなされている。
隣接法律専門職種の訴訟への関与
隣接法律専門職種とは、司法書士、弁理士、税理士、社会保険労務士などの総称である。現在は、これらの専門職種が依頼に応じて訴訟の代理人をつとめることは、弁護士法72条によって禁止されている。わが国の弁護士数は約1万7,000 人であるのに対して、これらの専門職種の人口は合計で約17万人にも及ぶ。
たとえば、税理士に関しては、現在、行政上の救済制度である異議申立ておよび審査請求においては、不服申立ての代理を行うことができるものの、税務訴訟においては、専門家として出廷し陳述する権利が認められていない。依頼人にとって日ごろから接触のある税理士こそ最もよき理解者であるにもかかわらず、裁判での正式な支援活動は認められていないのである。
また、法的な紛争を適正迅速に解決するは、法律の専門家の手助けが必要となるが、先述の弁護士法72条によって法律事務を独占する弁護士は、大都市に集中している。
その結果、当事者双方に弁護士が選任されていない本人訴訟は簡裁では全国平均でも86%と相当多いが、たとえば旭川では97%にも及んでおり、実際には、訴状などの作成に関与する司法書士が事実上当事者を援助している。弁護士人口を増加させることも一つの解決策ではあろうが、そのことが地方の弁護士人口の増加に必ずしもつながるわけではなく、むしろ、すでに全国にくまなく存在する司法書士のこうした活動こそを正当なものとして認める必要がある。
今後の方向
この点、すでに本年3月末に改定された政府の規制緩和推進3か年計画において、「司法書士、弁理士、税理士の訴訟代理等については、規制改革委員会の第2次見解、司法制度改革審議会の審議結果等を踏まえ、司法サービスへのアクセス向上等の観点から検討し、結論を得て所要の措置を講ずる」とされている。
自民党の報告書の要旨では、「国民に身近な法律関係業務に携わる」これらの隣接法律専門職種の活用により、「国民の司法に対するアクセスの拡充を図ることは、国民に対する法律サービス提供の質及び量を向上させる」として、司法制度改革審議会の最終報告書の取りまとめが行われる来年7月を待つまでもなく、「早期に具体的かつ前向きな結論が示されることを期待する」とされている。
自民党の指摘する通り、研修等を通じて適切な能力的担保措置等の諸条件の整備が進められれば、そのような必要な能力の向上を図った意欲のある専門職種に携わる人々には、早期に裁判への関与が認められることが期待される。
〈Y.O〉
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