インターネットで学ぶ財務会計

 

 

 環境会計の近年の発展はめざましい。環境庁が1999年に環境会計

ガイドライン案を発行してから日本企業の取組みも急速に普及した。

環境庁は2000年4月に同ガイドラインを正式に発表する予定なので、

今年は一層の展開が期待される。

 

 昨年は「環境会計元年」と呼ばれたが、その意味でいうと今年は

「環境会計二年」である。「元年」はいろいろな意味でブーム的な状況

を呈するものだが、「二年」目は地に足のついた対応が求められる。

環境会計もその例外ではない。

 

 特に、環境庁のガイドラインを、企業にとっての自主的な指針として、

実際にどのように活用していくのかが重要なポイントとなる。環境庁の

ガイドラインは、環境会計の内部管理目的と外部報告目的の双方を

視野に納めているが、実質的には外部報告目的が重視される構成と

なっている。したがって、これを実践に適用していく際には、内部管理

目的のシステムとの連携がひとつの課題となろう。

 

 欧米の環境会計の動向をフォローすると、外部報告目的の環境会計

(外部環境会計)と内部管理目的の環境会計(内部環境会計)は、か

なり特徴を異にしていることがわかる。内部環境会計の領域としては、

製品原価計算、設備投資決定、業績評価、予算編成などの分野があ

り、経営目的別に構築されるのに対して、外部報告目的の環境会計は

企業間の比較可能性が重視される。


 日本の場合、内部環境会計的な実践の積み重ねが、欧米に比べて

少ないため、環境庁のガイドラインをそのまま移入するのではなく、

まず企業内部での必要性を十分に考慮して、最初はガイドラインを選

択的に利用することが望まれるであろう。すなわち、それぞれの企業

にとって重要な環境問題を特定して、そこから段階的に環境会計シス

テムを構築していくことが必要である。

 

 一方、外部報告目的から考えるならば、環境庁のガイドライン発行後

は、どの程度まで環境報告書等で開示される環境会計情報の比較可

能性が確保されているかが、重要なポイントとなる。日本でも、エコファ

ンド(環境に配慮した企業に投資する投資信託)や環境格付けの動き

が盛んとなりつつあるので、環境会計情報の比較可能性の問題は今

後ますます重要性を増すであろう。

 

 ただし、現状の環境会計ガイドラインでは、まだまだ企業の比較可能

性を確保するところまでは到達していない。これは環境コストの測定に

関してのみならず、環境パフォーマンスの測定に関してもいえることで

ある。しかし、このような限界は、環境会計実践自体の歴史が浅いこと

からある意味でやむを得ないことである。

 

  財務会計の歴史をさかのぼっても、USスチールが20世紀初頭に自主

的に財務報告書を公開してから、SECが組織化され、財務会計基準を

統一化するまでに約30年もの時間を要した。環境会計にも同じくらいの

時間がかかるとはいわないまでも、会計基準が経験の蒸留であるなら

ば、環境会計のガイドラインが今後精緻化していくためには、環境会計

実務の蓄積が並行的に進むことが必要である。

 

                              (執筆者:國部克彦)

 

 

環境庁

 

 「環境会計ガイドライン2000年版」が掲載される予定である。さらに、

環境会計のソフトウエアも開発中で、これもこのホームページからダウン

ロードでき、さらにそれを使って環境庁に報告も可能になるという。

 

 

 

アメリカ環境保護庁

 アメリカ環境保護庁は1992年から環境会計プロジェクトに取り組んで

おり、そこでの成果はほとんどこのホームページで公開されている。こ

こでは内部環境会計が中心だが、環境会計研究者には必見のホーム

ページである。

ダンディ大学社会環境会計研究センター

 社会環境会計研究センターは環境会計の世界的第一人者R.グレイ教

授が開設したセンターで、これまで環境会計研究に大きな貢献を残し

ている。2000年1月にグレイ教授がグラスゴー大学に異動したので、

センターもいずれはグラスゴー大学に移る予定である。

アジア太平洋環境アカウンタビリティセンター

 アジア太平洋地域でも環境会計は近年盛んに研究されている。特に、

オーストラリアはその中心国のひとつで、同センターはオーストラリア

国立大学のR.バリット氏を中心に、アジアの諸大学とも連携をとりなが

ら環境会計の研究促進に努力している。

グローバル・リポーティング・イニシャティブ(GRI )
 
 環境会計の開示媒体として、環境報告書はもっとも有力な手段であ

る。その環境報告書の国際的な標準化を推進しようとしている団体が

GRIである。GRIでは、環境と社会と経済の3つを統合したサスティナ

ビリティ報告書を指向している。