新春インタビュー
三井秀範・金融庁総務企画局企業開示課長に聞く

会計・ディスクロージャー制度をめぐる変革の方向性――マーケットの信頼性確保に向けて

《聞き手》持永勇一
特集T 企業会計のグローバル化に向けて
企業会計のグローバル化が加速している。近時の世界的な金融危機への対応にも見られるように,市場のグローバル化の進展に伴い,会計の世界でも国際協調が進んでいる。また,ここ数年来のコンバージェンスの取組みに加え,米国などIFRS適用を検討する国も増えている。
このように,長期的に会計は国際統一化へと向かっているように見える。ただ,そこに至るまでに検討すべき課題は多い。本特集では,それらを会計学的視点から考察する。
会計基準グローバル化の展望と課題――時価会計の見直しにふれて
斎藤静樹
コンバージェンス後のわが国会計基準の展望
平松一夫
会計基準のコンバージェンスと会計研究――グローバル無形資産財務報告への布石
伊藤邦雄
企業会計のグローバル化と制度分析の視点 藤井秀樹
特集U IFRSをめぐる国際動向
11月14日,米国証券取引委員会(SEC)が米国の上場企業に対して国際財務報告基準(IFRS)を強制適用するためのロードマップ案を公表した。わが国でも企業会計審議会でIFRS適用に関する議論が始まっている。
IFRSを適用する場合,強制適用か選択適用かの適用方法,適用範囲や時期についての検討が必要になる。
特集では,IASBによるIFRS設定の現状と,EU・アジア等各国のIFRS適用をめぐる対応について明らかにした。
IFRS設定の現状と展望 山田辰己
米国内でのIFRS適用に向けた動き
杉本徳栄
EUのIFRS採用と各国の対応
高井大基
アジア・太平洋諸国におけるIFRSへの対応 大迫隆史
時事解説
改正企業会計基準第9号「棚卸資産の評価に関する会計基準」について 中條恵美
Research
知的資産ファイナンスにおける非財務情報の有効活用と今後の展望――実態調査を基礎として(その3・終) 古賀 智敏
與三野禎倫
OPINION
後入先出法はなぜ廃止か――ストック重視思考の一環として 石川純治
論文
ドイツの公認会計士業務に対する職業監督と職業裁判所 木下勝一
海外会計News&Topics
金融危機における金融商品の公正価値評価をめぐって
あらた監査法人
企業会計研究会
書評
『株式・債券投資の実証的分析』川北英隆 著
砂川伸幸
 『退職給付会計情報の分析』吉田和生 著 石川博行
学会ルポ
日本簿記学会第24回全国大会 杉田武志
日本監査研究学会第31回西日本部会
 
藤岡英治
国際会計研究学会第25回大会 白 在龍
Academic Eye
会計学は大丈夫か――岐路に立つ高等教育 小菅正伸

Color Section
三角波
 「生活対策」と21年度税制改正
アウトサイド
 タックスヘイブン規制 前田昌孝
会計時評
 財務分析と経営戦略(1) 佐藤 靖
経理・財務最前線
 京セラの経営に真に役立つための会計について 青木昭一
知っておきたいIFRSの常識 
IFRSの特徴  監査法人トーマツIFRSサービスセンター
「物言う株主」が会社を強くする
 あえて世界金融危機の逆境のなかで 柳 良平
サロン・ド・クリティーク
 保守主義の定量化とその機能(1) 田知実
ASBJ 企業会計基準委員会ニュース
相談室
〔会計実務〕 資産除去債務を巡る会計問題(その2)   木下徳明
〔法人税務〕 新公益法人制度の概要   斉藤伊知郎
〔会社法務〕 風評被害とは   早川 学

編集室より
△2009年新年号をお届けします。本号は,金融庁の三井秀範・企業開示課長への新春インタビューをはじめ,特集T・特集Uともに,企業会計の国際化に関するテーマを中心に構成しました。ここ数年,会計の世界では「国際化」が重要なキーワードとなってきましたが,その意味するところは年々変わってきています。1年前はEU同等性評価関連のいわゆる短期項目の検討が急務とされるとともに,東京合意により2011年までのコンバージェンスへの道筋が見えてきた時期でした。現在,短期項目への対応はほぼ終わり,2011年を目指した中長期項目の検討が始まりつつあります。また,IFRS適用に向けた議論も始められています。コンバージェンスは是か非かと議論されていた数年前と比べると,隔世の感さえあります。2009年という年が会計にどのような変化をもたらすか,引き続き注視しながら,適時的確な情報をお届けしていきたいと思います。本年も宜しくお願いします。
△世界的な金融市場の混乱を背景に,IASBは金融商品の保有目的変更による再分類を認める改正IASを公表しました。これを受け,ASBJも同様の措置を時限的に認める方向で議論を進めています。今回の緊急的な対応のその後の取扱いについては,中長期的に検討していくこととしています。IASBとFASBも金融商品の会計基準についてさらに検討を続けることを表明しており,今後,時価会計をめぐる動向からしばらく目が離せなさそうです。
△2011年のコンバージェンス完了に向け,ASBJでは中長期項目の検討プロジェクトが本格化しつつあります。これらの項目については,単に国際基準に合わせるのではなく,日本からも積極的に意見を発信し,基準開発に関与していくことが謳われています。次号特集では,検討にあたっての主要な論点について,会計学的観点から考察します。
◇企業会計2009年2月号のご案内
特集=会計の国際的統合と会計学上の概念

概念フレームワークに関して 桜井久勝/連結主体観について 山地範明/資産・負債のオフバランス化について 伊藤 眞/収益の認識と負債の認識 松本敏史/負債と資本の区分 徳賀芳弘/公正価値評価について 上野清貴