TOPICS-3

保険業界、激しいM & A


   11月13日、大手保険会社の一角を占める朝日生命保険が2002年3月に営業部門を分割し、東京海上火災が全額出資する生保子会社(東京海上あんしん生命保険)に譲渡すると発表した。この結果、朝日生命は既存契約の維持・管理に専念、新規契約の獲得活動を行わないこととなる。その後、1年間をかけて朝日生命は相互会社形態から株式会社に転換、2003年3月にあんしん生命と合併する予定である。

 朝日生命と東京海上火災は、日動火災、共栄火災とともにミレア保険グループを形成し、2002年4月からの持ち株会社方式による経営統合を目指していた。ただし、朝日生命は経営統合のための第一ステップとして株式会社化を行わなければならないことから、当初の計画では2004年春に持ち株会社の傘下に入ることになっていた。

 しかし、生保業界をめぐる経営環境が依然好転の兆しを見せないことと、株価の下落によって朝日生命の保有株式に多額の含み損が発生したことなどから統合計画を変更、前倒ししたものと考えられる。同時に、営業部門を譲渡した後の朝日生命は、東京海上から基金(株式会社における資本

金に相当する資金)を受け取り、自己資本の充実を図る。この基金は営業部門を譲渡する見返りであり、「のれん代」でもある。

 朝日生命が採用することにした「営業部門の分離」、「既存会社を契約の維持・管理会社化すること」は東邦生命と第百生命が外資との提携で用いた方法である。その東邦生命と第百生命は営業部門の分離後、1年ばかりで経営破たんした。朝日生命の場合、大手生保としての営業力が評価できること、提携先の東京海上が外資ではなく国内損保業界の雄であること、ミレア保険グループとの統合計画が具体的に示されていることなど、東邦生命などと状況が異なる。

 とはいえ、生保・損保業界とも経営環境が芳しくないなかでの経営統合である。海外格付け機関が東京海上の格付けを「安定的」から「格下げ方向での弱含み」に変更すると同時に、朝日生命の格付けを下げたことに象徴されるように、市場の見方は厳しい。また、朝日生命が来年度に順番が来る生命保険協会長の辞退を申し入れたことにも、同社のせっぱ詰まった状況が象徴されている。