▽三角波△

 

自己株式の取得・保有・処分時の会計処理について

 

jじこ

 

  2001年6月の商法改正で、目的の制限なく自己株式を買い受け、無期限にそれを保有するとともに、新株発行手続を経ることによってそれを処分することができることとされた。これに伴う会計処理については、同年7月に設立されたわが国の民間主導の会計基準設定主体である企業会計基準委員会(ASBJ)が自己株式等専門委員会を設置し、検討を進めている。
従来の会計処理
 従来、商法においては、自己株式の資産性を認め、通常の流動資産の取引と同様、損益取引として処理するというのが通説であり、計算書類規則では、流動資産(ストック・オプション目的のものは投資等の部)として他の有価証券と区別して表示することとされていた。
 企業会計上は、資本取引として処理すべきであるとの考え方が強かったものの、商法上の処理を踏まえ、取得の際には、他の有価証券とは区別して取得原価で流動資産の部に自己株式として計上し、消却した場合には、損益計算書の未処分損益計算区分における前期繰越利益の次に、自己株式消却額を記載することとされていた(日本公認会計士協会会計制度委員会報告第2号「自己株式の会計処理及び表示」)。
 また、売却した場合には、@自己株式の帳簿価額と売却価額との差額は譲渡時に、原則として損益計算書の営業外損益の部に表示し、A譲渡差額金の算定にあたっては、取得事由ごとに譲渡時の帳簿価額を算定することとされていた。
新たな会計処理
 今回の商法改正では、自己株式の資産の部への計上を前提とした規定を削除し(旧商法290@五、293ノ5B四を削除)、また、自己株式の処分については新株発行の規定を準用することとした。すなわち、自己株式の取引を資本取引として取り扱うことに考え方を転換したといえる。その結果、保有する自己株式は、資本の部における控除項目となった(計算書類規則34C)。これに伴い、財務諸表等規則も改正され、平成13年10月1日以降に終了する決算期(中間決算期を含む)から、自己株式は資本に対する控除項目として資本の部の末尾に記載することとされた(財務諸表等規則68の2の3)。
 この他の処理については、ASB における検討の進展が待たれるが、特に自己株式を処分した際、処分価額が取得原価を上回れば処分益が生じ、逆の場合には処分損が生じることから、この損益の会計処理と表示が問題となっている。
 先の商法改正により、自己株式の処分は新株発行と同様の性格を有することとされたことから、取得時の処理と同様、資本取引として資本の部の項目を直接増減すべきだと考えられる。
 次に、具体的にどの項目に表示するかという問題が生じてくるが、新株発行との類似性から、資本準備金へ計上することがまず考えられる。しかし、商法288条ノ2で資本準備金積立の事由が限定されており、処分益を計上することは困難である。しかも処分損を資本準備金に反映させるためには,資本準備金の減少手続を経る必要がある。一方、その他の剰余金を増減することになると、特に処分益の場合、それが配当可能利益になるという問題がある。いずれの方法も困難だとすれば、何らかの新たな勘定科目を設置する方向で検討する必要があるものと考えられる。
〈Y.O 〉