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 基準書第144号「長期性資産の減損又は処分の会計」

 FASBは去る8月に表題の基準書を発行し,本年12月15日後に開始する事業年度から適用する。

 基準書は,FASB基準書第121号「長期性資産の減損および処分する長期性資産の会計処理」の大筋を維持しながらその内容を整備するとともに,意見書第30号が非継続事業として扱った事業部門の処理を基準書第121号の設定した基準に合わせて更新し,また,ARB第51号の規定した一時的支配子会社の連結の除外規定を削除している。改訂および新設した部分の主なものは,次のとおりである。

 〈保有して使用する資産〉

 ・ 減損テストの範囲から暖簾を除いた。暖簾は基準書第142号「暖簾および他の無形資産」により減損テストを行う。

 ・ 長期性資産の帳簿価額の回収に代替策がある場合と将来のキャッシュ・フロー見積額に幅がある場合に,確率により加重した見積りの計算法を導入した。

 ・ 対象とする資産グループの会計単位のキャッシュ・フロー見積期間に「主たる資産」の残存耐用年数を使用するという考えを導入した。

 〈売却以外により処分する長期性資産〉

 ・ 放棄し,類似の生産性資産と交換し,または分割により所有者に分配する長期性資産は,処分するまで保有して使用すると見なすよう要求している。

 ・ 資産の帳簿価額が公正価額を超えている場合には,交換し,または分割により所有者に分配する日に減損損失を認識するよう要求している。

 〈売却により処分する長期性資産〉

 ・ 前から保有して使用しているか,新しく取得したかを問わず,売却のために保有すると分類した長期性資産は,その帳簿価額または公正価額(売却費用控除後)のどちらか低い方により測定し,減価償却は行わない。非継続事業は正味実現可能価額では測定せず,将来の営業損失は発生前には認識しない。

 ・ 非継続事業の表示を拡大し,事業部門ではなく,事業体の構成部分をその対象にする。事業体の構成部分とは,当該事業体の他の部分から,経営上および財務報告目的上,業績およびキャッシュ・フローを明瞭に区別できるものをいう。

 ・ 売却のために保有すると分類し,または処分した事業体の構成部分について,その構成部分の活動およびキャッシュ・フローをその事業体の持続する活動から削除して,その構成部分に以後相当の継続的介入を行わない場合には,その構成部分を非継続事業として表示する。

 ・ 売却のために保有する長期性資産には,会計単位を表現する資産および負債のグループを含め,また,即時売却可能,1年以内に取引完結の可能性が大きいなどの,長期性資産を売却のために保有する時を決定するための規準を設定している。

 

株式報酬会計草案への意見締切延長

 IFRSでは株式報酬会計(Share-Based Payment)に関する公開草案への意見表明を10月31日を期限として募集していたが、さらに多くの意見を求めるために12月15日まで期限を延長することを決定した。

 株式報酬会計についてはまだ会計基準を設定していない国が多数であるが、設定している国でもストック・オプションをめぐる会計処理の方法をめぐって議論が続いているところである。従来の「オプション行使価格と株式時価との差額を費用とする」方法から「オプションの公正価値を費用とする」方法への移行は米国では後者の基準が設定されたものの前者による処理も平行して認められている。IFRSの草案は後者によるものであるが、支持する意見も寄せられる半面実業界を中心に反対の意見も根強いので、検討のための意見収集をさらに継続することとなった。

 後者による会計処理はベンチャー企業を中心に労務費の大幅増を招き業績への影響が少なくないため、今後の議論が注目される。

企業結合

 国際会計基準審議会(IASB)では企業結合に用いられる会計処理を統一する方向で議論が進められていたが、9月の会合で処理方法を原則的にパーチェス法とすることで一時的な合意に達した。

 議論の背景には企業結合のもう一つの処理方法である持分プーリング法が乱用されている実情がある(持分プーリング法によって処理された合併案件が実際には一方による買収であるケースが多い)。企業間比較のためにも会計処理の統一が求められており、持分プーリング法を禁じてパーチェス法に一本化する方向が確認された。

 日本は持株会社を使った銀行の合併を例に持分プーリング法の適用が好ましいケースを挙げている。そのため、共同経営による合併と認められる要件を今後検討していく旨の注釈が加えられている。

 

東証、決算短信等での定性的情報の記載内容の充実を要請

 東証は、9月12日、上場会社に対して、財務諸表等で示される財務数値データだけでは把握し難い経営実態に関する情報(定性的情報)の開示の充実を要請した。

 これは、6月に政府から公表された「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針」の中で個人投資家による市場参加の重要性が示されるとともに、8月に公表された金融庁の「証券市場の構造改革プログラム」において、個人投資家の証券市場への信頼性向上のためのインフラ整備の一環として、公開企業における株主重視の経営姿勢の確立、特に目標とする経営指標の開示やその向上に向けた具体的施策の公表、コーポレート・ガバナンスの充実に関する施策の公表および内容の充実が掲げられたことを踏まえたものである。

 要請内容としては、定性情報の記載内容として従来から例示されている項目のうち、特に「目標とする経営指標」および「会社の経営管理組織の整備等(コーポレート・ガバナンスの充実)に関する施策」について、できる限り会社としての方針や考え方を積極的に分かりやすく開示するというものである。具体的には、「目標とする経営指標」では、会社が目標として選択した経営指標(たとえば、目標ROE 、ROA など)の内容、具体的な目標数値の水準、当該指標を目標として採用した理由、目標の達成に向けた具体的な取組みなどの記載を求めている。また、「会社の経営管理組織の整備等(コーポレート・ガバナンスの充実)に関する施策」では、執行役員制度の導入、社外取締役の選任、監査役会の機能強化などのコーポレート・ガバナンス充実等に向けた施策を実施・計画している場合には、その内容、目的および期待される効果などの記載を求めている。

東証、新規上場申請会社を対象とした会社分割等における「部門財務情報の作成基準」と「レビュー相当業務に係る基準」を制定

 東証は、日本公認会計士協会の協力を得て、新規上場申請会社を対象とした会社分割等における事業譲渡対象部門の「部門財務情報の作成基準」と信用担保措置としての「部門財務情報に対するレビュー相当業務に係る基準」を定め、10月1日付で施行した。

 これは、今年4月に、会社分割法制の創設に伴う上場関係規則の改正により、上場会社が会社分割を利用し速やかな企業再編を実施できるよう、会社設立前から上場審査を行い、新設会社または承継会社の分割期日(設立段階)からの上場を可能とする制度を構築し、上場適格性の判断基準に係る資料および投資判断情報としては、継続開示会社から承継する営業に係る財務計算に関する書類(「部門財務情報」)を新規上場申請会社の財務諸表として位置づけたことによるものである。

 今回の対応は、日本には会社分割における過年度の部門情報開示の実務慣行が存在しないことから、米国における会社分割の事例や会計・監査実務の調査を行った上で、4月に日本公認会計士協会に意見照会を行い、9月4日付で「会社分割等及び営業の譲渡、譲受けに伴う事業譲渡等対象部門に係る部門財務情報等に関する信用担保措置について」という提言を受けたことによるものである。

 なお、会社分割等における部門財務情報と性格が類似する、営業または事業の譲渡、譲受けを行っている場合に新規上場申請会社が提出する財務計算に関する書類についても、同様の基準を定めた。

 

マイカル経営破綻の影響が普通社債市場・証券化商品市場に波及

 9月14日にマイカルが民事再生法を申請、経営破綻した。マイカルは大量の社債によって資金調達していたため、市場に問題を投げかけた。その影響は普通社債市場だけでなく、証券化商品市場にも波及している。

 マイカルの経営破綻にともない、普通社債と転換社債合計約3,500 億円がデフォルトとなった。公募債のデフォルトとしてはヤオハンや日本国土開発の例があったものの、いずれも小規模であり、マイカルのデフォルトは過去最大である。

 マイカルの普通社債のデフォルトではいくつかの問題点が指摘されている。個人投資家向けの社債が含まれていること、社債管理会社不設置債があること、格付の変更のタイミング、メインバンクの役割などである。

 たとえば、昨年、個人向け社債が発行された当時のマイカルの格付は投資適格(AもしくはBBB)であったのに、今夏に投資不適格(BBもしくはB)へと大幅に格下げされ、その直後に経営破綻に陥ってしまった。昨年の格付と、その後の格付モニターが適切だったのかどうかである。最近では社債発行会社の格付を維持するため、アドバイス機関が活動する場合も多い。その活動によって維持された格付が信頼できるのかどうかも同時に問われよう。

 社債管理会社不設置債は商法の特例として発行されるものである。その目的は社債発行会社のコスト削減にある。他方、投資家からすれば、発行会社がデフォルトした場合、権利の保全を社債管理会社に依頼できず、自分自身で行わなければならない。破綻懸念がある会社に対して社債管理会社不設置債の選択が正しかったのかどうか、引受証券会社の姿勢も問われよう。

 その一方、日本では社債管理会社がメインバンクであることが多い。この場合、社債権者の利益のために行動しなければならない社債管理会社と、自らの債権を保全しなければならないメインバンクの立場には利益相反の可能性がある。今後、社債のデフォルトを想定しなければならないとすると、中立的な社債管理会社を設置した社債が投資家にとっての理想となろう。

 もう一つの証券化商品市場の問題は、そのリスク評価をより厳密に行う必要性の再確認でもある。マイカルは経営改善のために積極的に資産の流動化に取り組んでおり、入居保証金や店舗不動産などに基づいて約2,000 億円の債券を証券化商品として発行していたが、そのかなりの部分はマイカルの信用力や経営の継続性に依存していた。このため、マイカルの経営破綻にともなってかなりの証券化商品がデフォルト同様の状態に陥り、格付が投資不適格に低下した。もっとも、投資不適格となったものの多くは、市場の初期段階に発行された、証券化の仕組み性が不十分な債券である。この意味で、証券化商品市場への影響は比較的軽微だろう。

 

株式等譲渡益課税の見直し案決定

 自民党の税制調査会及び与党三党の税制協議会では,証券税制についての審議を進めていたが,去る10月3日,改正案を決定した。概要は次のとおりである。

 一 申告分離課税の見直し(平成15年実施)

 1 申告分離課税への一本化

 源泉分離選択課税は,平成14年12月31日をもって廃止する。

 2 上場株式等に係る譲渡所得等に対する税率の引下げ

 平成15年1月1日以後に上場株式等を譲渡した場合の税率を現行の26%から20%(所得税15%,個人住民税5%)に引き下げる。

 3 上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除制度の創設

 平成15年1月1日以後に上場株式等を譲渡した場合において生じた損失の金額のうち,その年に控除しきれない金額については,翌年以後3年間にわたり,株式等に係る譲渡所得等の金額から繰越控除することができることとする。

 4 その他所要の措置

 ・ 平成13年9月30日以前に取得した上場株式等に係る取得費の特例の創設

 平成15年1月1日から平成22年12月31日までの間に譲渡した上場株式等で平成13年9月30日以前に取得したものの取得費については,選択により,平成13年10月1日における価額の80%相当額とすることができることとする。

 二 長期(1年超)保有上場株式等に係る特例

 1 暫定税率の特例の創設

 平成15年から平成17年までの3年間に1年超保有の上場株式等を譲渡した場合の税率を,上記一2にかかわらず,10%(所得税7%,個人住民税3%)とする。

 (注) 暫定税率の適用がある場合には,新規公開株式に係る課税の特例の適用を停止する。

 2 100 万円特別控除の延長等

 長期(1年超)保有特定上場株式等の譲渡所得に係る100 万円特別控除の特例について,その適用対象に上場不動産投資証券(上場不動産投資法人の投資口)を追加した上で,その適用期限(現行:平成15年3月31日まで)を平成17年12月31日まで延長する。

 三 緊急投資優遇措置

 改正規定の施行の日以後平成14年末までの間に購入した上場株式等のうち購入額の合計額が1,000 万円に達するまでのものを,平成17,18,19年(3暦年)の間に譲渡した場合における譲渡所得等については,一定の要件の下で,非課税とする。

 

日本監査役協会が監査役制度の運用実態調査の結果要約を発表

 日本監査役協会は,去る10月2日より開かれた監査役全国会議において,「2001年における監査役制度の運用実態調査結果(要約)」を発表した。今回の実態調査は,1996年以来の大がかりな調査で,調査回答会社は3,049 社(うち上場会社は1,807 社,未上場会社は1,232 社),回答監査役数は10,502名である。

 最終の調査結果の報告はまだ少し先になるが、上記要約によると,次のコメントが注目される。

 1 上場会社,監査役の多い会社ほど監査役会の開催頻度が高く,その内容も充実している傾向が見られる。開催頻度年5〜11回が43.5%,毎月1回が28.5%。

 2 取締役会で監査役の発言が多いのは,上場・公開会社である。活発に発言するが6.7 %,必要に応じて発言するが70.4%。

 3 法令・定款違反の事実の指摘・報告は,「取締役に指摘」がほとんどであり,取締役会での報告は少ない。違反行為があった会社(195 社)で,取締役にその事実を指摘したが81.5%,取締役会に報告したが20.5%。

 4 商法275 条ノ2の差止請求にあたる事実があった会社が,30社の1.0 %,うち監査役が書面で差止請求したが30.0%,口頭で差止請求したが16.7%。

 5 株主からの取締役に対する提訴請求があった会社が,40社の1.3 %,うち監査役が提訴した会社が1社の2.5 %,株主が代表訴訟を提起した会社が19社の48.7%。

 6 非常勤社外監査役の監査役会出席状況は,ほとんど出席が79.5%,取締役会出席状況は,ほとんど出席が62.6%。

 7 非常勤社外監査役の監査役会での発言状況は,積極的に発言が62.5%,取締役会での発言状況は,積極的に発言が24.0%

 8 非常勤社外監査役が情報提供を受ける方法は,会社から常勤監査役と同レベルの情報報告が22.5%,常勤監査役から情報を補完提供が69.0%。

 9 社長との懇談,各業務担当取締役との懇談ともに、「ない」の割合は低く,会社属性による差が少ない。ただし,その頻度は,上場・公開会社,会社規模の大きい会社,監査役数の多い会社ほど頻度が下る傾向が見られる。社長との懇談会ありが81.9%,うち,2〜3カ月に1回以上が41.5%,年に1〜2回程度が40.4%,社長との懇談会はないが17.4%

  10 監査役選定時の経営トップとの話し合いは,上場・公開会社,会社規模の大きい会社ほど密に行なわれている。また,社内監査役の前職最高位が高い会社も,経営トップとの話し合いが持たれる割合が高い。

  社内監査役候補者選定に関する経営トップとの話し合いについては,口頭で意見を述べたが11.6%,具体的候補者を推薦したが3.4 %,経営トップから話があったが36.7%。

日本監査役協会、新会長就任

 日本監査役協会は、去る10月29日、第28回定時会員総会終了後の理事会において、吉井毅氏(新日本製鐵株式会社常任監査役)が10代目新会長に就任(任期は1期2年間)することを決定したと公表した。なお、同日決定した役員理事については以下のとおりである。

 〈日本監査役協会役付理事〉

(会  長)

 吉井  毅新日本製鐡鰹任監査役

(副会長)

 笹尾 慶蔵旭有機材工業滑ト査役

 神田  茂日本車輛製造鰹勤監査役

 大村  哲東洋紡績鰹勤監査役

 

(常任理事)

 飯田冨美子滑ツ境管理センター常勤監査役

 倉内 英孝住友ベークライト滑ト査役

 塙  章次東京電力鰹任監査役

 友松 康夫サントリー鰹勤監査役

 永井 秀哉鰍ンずほホールディングス常勤監査役

 宮川東一郎潟xネッセコーポレーション常勤監査役

 

*中條 邦宏本田技研工業鰹勤監査役

*大野 龍一鞄結梹O菱銀行常勤監査役

*伊藤進一郎住友電気工業鰹任監査役

*岩崎  隆関西電力鰹任監査役

*松香 茂道鞄立製作所監査役

*宮原 秀彰トヨタ自動車鰹勤監査役

 

*印は新常任理事/理事の名簿等はHPをご覧下さい。

 

秋の臨時国会に商法改正法案提出

 去る10月5日「商法等の一部を改正する法律案」が第153国会に提出された。

 今回の改正法案では、企業の機動的資金需要やIT社会へ対応するため、新株発行規制の緩和、トラッキングストックの全面解禁、ストック・オプション付与の上限・対象者の制限撤廃、会社関係書類の電子化等が盛り込まれている。これらの改正は、従来の法規制を大幅に緩和するものであり、企業の経営に大きな影響を与えるものといえる。

 本改正法案は平成14年4月の施行に向け、今臨時国会での成立を目指す。

 なお、主な内容は以下のとおり。

@  新株発行規制の緩和

 ベンチャー企業の機動的資金調達に応えるため、譲渡制限会社の新株発行を発行済株式総数の4倍までとする等の制限を撤廃する。

A  ストック・オプション制度の制限緩和

 会社が発行する株式を予め決めた価格で取得できる権利を「新株予約権」とし、その付与対象、付与上限などの制限を撤廃する。

B  種類株制度の緩和

 種類株の充実を図るため、議決権行使事項につき内容の異なる数種の株式の発行を認める。

C  会社関係書類の電子化等

 高度情報化社会の進展に対応するため、インターネットを利用した株主総会の召集通知、議決権行使、さらに貸借対照表の公告を可能とする。

 また、119の関係法律を整備する法案も10月12日に国会に提出されている。